フィットネス業界、成長続く 

  • 2018年(平成30年)は市場規模が前年比4%伸び、およそ4,800億円と大きく成長した。また会員数は前年比11%増の514万人となり、参加率が史上初めて4%台となった。フィットネス市場は2012(平成24年)より少しづつ成長してきたが、2018年(平成30年)は台風等自然災害などの影響が多少あったものの、過去7年間で最大の伸びを示した。この10数年余りの間に新規参入した、カーブスジャパンやエニタイムフィットネスなどに代表される小規模のFCチェーンが成長したことに加えそうした動きに刺激を受けた既存の大手事業者が、既存施設をリノベーションしたり、新しい業態・サービスに取り組み、業績を伸ばしていることなどが要因だ。ただし、その分、都市部を中心に競合状態が厳しくなってきている。特に総合業態の成人のフィットネス会員の集客力が弱化してきていることが懸念される。
  • 利用率も好調だった2016年(平成28年)、2017年(平成29年)とほぼ同水準で推移している。併せて、各社の顧客満足度が他産業と比べ安定的に高く、あまり差がみられないことからなどから、会員からは相応の支持を得られているものと考えられる。 

 

2018年、小規模・目的志向業態の出店続く 

2017年に引き続き、2018年もフィットネス業界には、以下の3点の特徴的な動きがみられた。

  • 既存店のリノベーションとサービス拡充 潜在需要の高いエリアに立地する既存の老朽クラブを移転新設、またはリノベーションしたり、サービスを見直し・拡充することで、会員定着を図りつつ、会員増を実現した。とりわけ、スタジオのホットヨガ対応、ジムの24時間営業化、コンディショニング系のプログラムの拡充を図るクラブが多かった。集客のためのプロモーション面では、紙~ウェブへの移行が進んだ。
  • スイミングスクール事業や受託部門の成長 フィットネス部門以外では、スイミングスクールの入会者の増加、自治体や法人等からの運営受託(※指定管理を含む)などの増加も、増収増益に貢献した。ただし、スイミングコーチの求人には、各社苦労している。
  • 小規模・目的志向業態の出店増 既存の業態とは異なる24時間セルフサービス型ジムやサーキットトレーニング系スタジオ、ホットヨガスタジオ、ストレッチサービス店等に加え、新規参入者によるタイプの異なるコンセプチュアルなブティックスタジオの出店が注目を集めた。

 

求められる、新たなビジネスモデルの開発

2019年以降、フィットネス業界のプレイヤーに求められる姿勢として、下記の3点を挙げておきたい。

  • 新たなビジネスモデルの開発 既存の総合業態の改善・改革も重要であるが、それとともに重要となるのは、顧客が満足してサービスを喜んで享受するだろう革新的な価値を備えたサービスや逸脱的なビジネスモデルの開発だろう。アプローチとしては、既存事業の周辺に新たな事業機会を探る方法と実現したい未来をイメージしバックキャスティングしてそこにたどり着こうとする方法があろう。今後は、HV/LP(High Volume/LowPrice)型か、付加価値型かどちらかに特化した業態を展開する戦略や、特定の商圏内において多業態でドミナント化を狙う戦略をとるプレイヤーが現れるだろう。ブティックスタジオなどに代表される高付加価値型業態を成功に導くポイントはCX(顧客体験)の向上にあり、その実現にはコンセプト、コンテンツ、コミュニティの3つのCがカギになるだろう。
  • 生産性の向上 生産性を向上させるためには、 CX (顧客体験)の実現を見据えて、どのようにサービスデザインするかが最重要になろう。そのためには対象顧客 が求める価値を明らかにしなければならない。顧客インサイトを捉え、顧客価値を実現するサービスデザインをしたい。 さらに、基本的なオペレーションについては、「標準」の仕組み化に取り組み、将来に向かって品質が漸進的に良くなっていくように努めていくことが 求められる。そこでは、デジタルテクノロジーの活用も重要になってこよう。
  • 人材の確保と育成 人材不足が深刻化していくことは明らかだが、そうした流れのなかで、いかに優秀な人材を確保し、とりわけ最前線でサービスを提供していくスタ ッフがいきいきと働けるようにするかが大切になってくる。とりわけ大切な人材は企画開発人材(イノベータ ――)、支配人、トレーナー・インストラクター だ。経営者は、優良顧客や無消費者の声に加えて、彼ら彼女らのアイデアや提案も活かしてサービスを「共創」していくことが求められる。特に、上 司には思いやり(母性)のリーダーシップが求められるようになってきている。