2023年2月10日、東急不動産株式会社の子会社、株式会社東急スポーツオアシス(東京・渋谷区)は、株式会社ルネサンスから出資を得て、同社の持ち分法適用会社になることを発表した。
東急スポーツオアシスは、まず同年3月31日付で、フィットネス運営事業などを会社分割で承継する新会社を設立。
ルネサンスが同日付でこの新会社の株式の40%を取得する。コロナ禍の影響で、各社が従来にないほどの苦境の中で極めて厳しいハンドリングを求められるなか、生き残り成長を目指す象徴的な動きと言えよう。
運営の方向性、近い
2月10日、両社から資本提携について発表があった。
2月11日付の日本経済新聞では、「ルネサンスは現在、国内に直営で約100店舗のフィットネスジムや、テニススクールなどのスポーツクラブを運営。また、東急スポーツオアシスは首都圏などを中心に約30店舗のフィットネスジムを展開している。ルネサンスと東急スポーツオアシスはオンラインやデジタルを活用した新サービスなどに取り組んでいる。ルネサンスは『運営面の方向性が近い』と組む理由を説明した」と報道していた。
同記事にも既述されていたが、総合業態を中心に展開する既存の大手企業、とりわけ首都圏に立地する事業者の多くは、新型コロナウイルス禍で顧客が離れ、その戻りもなかなか思い通りにならないなか、値上げやそれに対する価値整合の遅れなどから、入会減、在籍減という状況が続いている。各種の補助金などが入る予定もなくなり、この間に膨張した債務の返済も始まっていて、財務的にも厳しい状況となっている。
コロナの収束とともに業績は戻りつつあるが、まだフィットネス部門に関しては、コロナ前までの業績を上回るところまでには至っていない。運営サービス面でも、水道光熱費などのコスト上昇で利益が圧迫され、またその一方で優秀な従業員が離れたこともあり、なかなか顧客一人ひとりから見たサービスのクオリティを向上することが難しい状況となってしまっている。
経営が安定するには、もうしばらくかかりそうだ。
そうした状況から鑑みるに、今回の件は、コロナ禍の影響で各社が従来にないほどの苦境の中で極めて厳しいハンドリングを求められるなか、生き残り、成長を目指す象徴的な動きと言えるのかもしれない。
リソースを掛け合わせる
今回の連携は、両社のリソースを上手く結びつけることで、顧客へのサービスのクオリティ向上と運営の効率化を実現し、見込み客を含めた顧客を増やしていけるのではないか。両社ともに、それぞれ独自のリソースを豊富に持ち、優れた経験や独自の価値観を備えた有為な人材もたくさんいるので、
今回の資本提携を前向きに捉えて価値創造を実現し、フィットネス業界でプレゼンスを発揮していくことを期待したい。
今後も、こうした動きは、起こるだろう。
一方で、単独でこれから業績の回復を目指し、成長へとつなげたいと考えているフィットネス事業者もいよう。
そうした事業者には、既存店に関しても新規事業に関しても業界のこれまでの常識を外して、対象顧客の購買決定要因(KBF)を虚心坦懐考えて、それに対応する価値あるサービスを構築し、提案していくことを、第一に期待したい。そして、そうした価値あるサービスを持続的に提供していけるケイパビリティを備えることを目指してほしい。
そうした取り組みをしていくなかで、業界内外の事業者同士が緩やかに連携し、ともに学び合い、助け合うという動きも広がっていくことだろう。
いずれにしても、これから大事になるのは、マーケティングやイノベーション、ファイナンス面で成果を出せる「人」であり、それには学びと実行とリフレクションが欠かせない。これまで以上に、ぐんと幅広の知の活用と実験ドリブンでの科学的経営が、求められるようになってきた。
フィットネス業界も、新しいフェーズに入ったと言えるのかもしれない。
株式会社東急スポーツオアシスの発表
https://www.sportsoasis.co.jp/2023/02/10/pr_fitness/
株式会社ルネサンスの発表
https://www.s-renaissance.co.jp/file.jsp?id=10027