世界のウェルネス市場規模は、1.5兆ドル以上、成長率は5~10%(マッキンゼー調べ)と推定され、フィットネス関連企業にとっても、新たな成長市場として注目されている。

そうした世界動向の中、2017年にフランスからスタートしたウェルネス活動啓発のための世界同時多発イベント「国際スポーツ&ウェルネスウィークエンド」が2022年、日本に上陸。日本でもウェルネス市場拡大の契機となることが期待される。

コロナ禍でウェルネスへの関心高まり市場規模拡大へ

マッキンゼー&カンパニー社の最新の調査によると、世界のウェルネス市場は1.5兆ドル以上、年間成長率は5〜10%と推定されるとして、6ヶ国(アメリカ、イギリス、日本、ドイツ、中国、ブラジル)の約7,500人の消費者を対象にした調査結果を次のように報告している。

消費者はウェルネスに深い関心を寄せている。回答者の79%がウェルネスは重要であると考えており、42%が最優先事項であると考えている。今回調査したすべての市場の消費者は、過去2〜3年の間に、ウェルネスの優先順位が大幅に上昇したと報告している。消費者の関心と購買力の高まりは、企業にとって非常に大きなチャンスとなる。

消費者のウェルネスに対する考え方は常に変化しているため、企業は消費者の視点から市場を理解する必要がある。今回の「ウェルネスの未来」調査では、消費者が最も関心を寄せているカテゴリーが明らかになった。

消費者にとっての「ウェルネス」とは

同調査では、消費者は「ウェルネス」について、次の6つの側面から捉えていることが分かった。

①健康増進(Better health)
薬やサプリメントだけではなく、消費者向けの医療機器や、活動量計なども含まれる。消費者は、自分の健康を自分の手で守るようになってきている。データに基づいたターゲットを絞ったケア、医療機関の予約や必要な処方箋の入手をシームレスに行うためのアプリ、医療機関の予約の合間に自分の健康状態や症状をモニターするための機器などが増えてきている

②フィットネスの継続(Better fitness)
コロナ禍により、消費者にとってもフィットネスの継続は困難を極めた。多くの消費者は、以前のように頻繁にジムに通ったり、スポーツに参加したりすることができなくなり、コロナ禍以前のフィットネスレベルを維持するのに苦労している。例えば、イギリスで行われた調査では、パンデミックによるロックダウンが始まった後、消費者の大半が運動量を減らし、ロックダウンが緩和または解除されても、以前の運動レベルに戻らなかったという結果が出ている。その一方で、家庭での消費者ニーズを満たす新たなサービス(Peloton、Mirror、Tonalなど)は、この1年間でかつてないほどの成長を遂げている。

③よりよい食事(Better nutrition)
食事や栄養は、常にウェルネスの一部として認識されているが、今の消費者は食べ物をおいしく食べるだけでなく、よりウェルネスの状態を高めるものを求めている。世界中の消費者の1/3以上が、来年は栄養アプリやダイエットプログラム、ジュースクレンズ、サブスクリプションフードサービスなどへの支出を「おそらく」または「間違いなく」増やす予定だと回答している。

④外見を良くする(Better appearance)
健康志向のアパレル(アスレジャー)や美容製品(スキンケアやコラーゲンのサプリメントなど)がある。この分野では最近、マイクロニードル、レーザー、酸素ジェットなど、手術を伴わない美容整形のためのサービスも数多く登場している。

⑤睡眠改善(Better Sleep)
睡眠は、比較的新しいカテゴリーとして消費者に人気があるが、パンデミックがもたらしたストレスを考えると、それも不思議ではない。メラトニンのような伝統的な睡眠薬に代わり、アプリを使った睡眠トラッカーや、睡眠を改善する製品(遮光カーテンや重力ブランケットなど)が登場している。世界中の消費者の半数が、質の高い眠りのニーズを満たすために、より多くの製品やサービスを求めていると回答している。

⑥マインドフルネス(Better mindfulness)
瞑想に特化したアプリや、リラクゼーションや瞑想に特化した製品など、マインドフルネスが消費者に受け入れられるようになってきている。コロナ禍により、世界的に精神的苦痛に関する報告が増えている。調査対象の各国では、消費者の半数以上が、マインドフルネスをもっと優先したいと答えている。また、消費者の半数が「より多くのマインドフルネス関連の商品やサービスに期待する」と回答しており、企業にとってのチャンスとなっている。

ウェルネスに関心のある消費者行動特性

同調査では、「ウェルネス関連の消費者が一様に同じ嗜好を持っているわけではないことを理解する必要がある」として、ウェルネスに関心のある消費者の行動特性をまとめている。それによると、ウェルネス愛好家は、ソーシャルメディアでブランドを積極的にフォローし、新製品の発売を追跡し、革新的なものに興奮する高所得者である。社会的責任のある消費者は、環境的に持続可能で、クリーンで自然な原材料を使用しているブランドを好み、そのためにはより多くのお金を払うことをいとわない。価格に敏感な消費者は、ウェルネス製品は重要であると考えているものの、購入する前に機能や利点を綿密に比較し、最もお得な価格で購入しようとするという。

国別にも違いが見られ、「健康増進」は、どの国においても一貫して最も重要なウェルネスの側面(そして最も積極的に支出する側面)として現れている。その一方で、他のカテゴリーでは、国別に違いが見られている。例えば、日本の消費者は「外見をよくする」側面を視しているが、ドイツの消費者は「フィットネスの継続」をより重視している。また、ブラジルと米国の回答者は、「マインドフルネス」に最も関心を示し、中国とイギリスの回答者は、「よりよい食事と栄養」に関心を示している。

どの国の消費者も、「健康増進」のための製品やサービスに最も多くのお金を費やしており、今後は特に、心身の健康を重視したサービス(パーソナルトレーニング、栄養士、カウンセリングなど)へのシフトが進むと考えられる。

ウェルネスの世界的ムーブメントが日本にも

国際スポーツ&ウェルネスウィークエンド(World Wellness Weekend)は、2017年にフランスで発足以来、世界中の人を巻き込みながら拡大する一方で、地元での身近な地域活動として、何百万人もの人々にウェルネス体験を提供してきている。

毎年、「Equinox」(昼と夜の長さが同じになる日、日本では秋分の日)にウェルネスに過ごすことを啓発する世界同時開催イベントで、今年は2022年9月16日〜18日にかけて開催される。

昨年までに世界133 ヶ国が参加しており、第6回となる今回は、世界140 ヶ国のフィットネスクラブやヨガスタジオ、温浴施設や、アウトドアリゾートなどが参加予定で、世界の117名のアンバサダー/パートナーが、各国で、より多くの人々がウェルネスを体験できるよう、体験レッスンやイベントを企画し、地域社会にマーケティングして、ウェルネス市場拡大につなげている。

参加は無料で、同週末に1セッション以上の無料体験クラスを企画し、「世界ウェルネスマップ」に登録し、地域に広く告知するとともに、SNSで情報共有するだけ。企画実施する無料体験クラスに合わせて、自クラブやレッスン、各種ウェルネスサービスの宣伝やクーポン券を配布することで、販促活動にも繋げることができる。

日本では、SPORTEC事務局が実行委員会、株式会社クラブビジネスジャパンがコーディネーターとして、2022年6月1日(予定)に公式サイトをリリース、参加登録を開始する。