chocoZAPで97%の未顧客層に訴求して、フィットネス参加率を高める
ヘルスケアサービスとしてのRIZAPの提供価値を高め、健康寿命の延伸を実現へ

2022年、ウィズコロナの環境変化により、フィットネス業界の市場環境も大きく変化した。フィットネスクラブ各社も、徐々に回復の兆しが見えてきている。2023年は、さらなる回復に向けて、どのように今後の動向を予測し、キャリアを築いていけばよいのだろうか?業界を牽引するリーダーたちに訊いた。今回は、RIZAP株式会社。コンビニ感覚で通えるchocoZAPの勢いが衰えるところを知らないが、2023年を、どのように捉えているのだろうか。

幕田 純 氏
RIZAP株式会社
統括トレーナー

 

2022年はどんな年でしたか?

「RIZAPでは会員数がコロナ禍前に戻るとともに、60歳以上の方へのマーケティングを強化して新規事業chocoZAPの開発にも力を入れた1年となりました」

コロナ禍で苦戦するフィットネス事業の中でも、スクール事業は回復が早いことに相応して、RIZAPでも、会員数はコロナ禍前に戻ったという。2022年中も、感染者増の第6波、第7波があったものの、RIZAPでは担当トレーナーとの繋がりがあることで、感染を心配する人でも一時的に利用を休止するにとどまった。

2022年6月からは、テレビCMを、60代以上男性にターゲットしたマーケティングに絞り込んだ。当時88歳の大村崑さんや、当時66歳の松平健さんを起用して、階段を上ったり、反復横跳びなどで、足腰の強さや筋肉がつく効果を訴求し、コロナ禍以前は、全会員に占める60歳以上の方の割合が10%程度だったが、現在は20%を超えている。

こうした施策が奏功し、2022年9月末時点でRIZAPブランドでは店舗数119店舗、会員数18万人となっている。

chocoZAPの開発は、6ヶ月にわたる様々なタイプの実験店で検証を重ね、2022年7月に、30~40坪ほどの標準フォーマットを固めた。フィットネスに馴染みのない96%の人が、生活の中にフィットネスを採り入れられるよう「簡単」「便利」「楽しい」を追求。マーケティングもPDCAを高速で回しながら集客を進め、2022年9月28日に、134店舗、6.4万人の会員とともに、chocoZAPをグランドオープン。高い反響を得て、22年末までに200店舗を計画していたが、11月末時点で204店舗と前倒しで達成し、chocoZAP会員数も既に10万人を超えている。

 

2023年に向けて始めたことは?

「シニア層に向けた『体力年齢』訴求と、エントリー層に向けたchocoZAPのマーケティングにより新たな市場への、新たな体験価値づくりを進めました」

RIZAPで、60歳以上の層にマーケティングするうえで鍵となったのが、『体力年齢』。簡単な体力測定から算出でき、定期的に測定して、コミットする結果の新たな指標として導入した。これは、5年前に筑波大学研究成果活用企業の株式会社THFと共同で開発した指標で、筋力や柔軟性、バランス能力など複数の項目から算出。

これらの数値を改善するコンディショニング系のトレーニングをメニューに加えることで、体力年齢の若返りが実現できる。コロナ禍で、オンライン指導もスタートしたが、オンラインでもオフラインと同様の結果が出ており、コロナ禍で外出することに抵抗を感じるシニア層にも訴求できる。

chocoZAPのサービス開発では、RIZAPでのサービスや顧客インサイトも活かされている。chocoZAPに付帯する「セルフエステ」や「セルフ脱毛」は、ライザップウーマンで満足度の高いサービスであり、「ゴルフ」はライザップゴルフで高いニーズが確認されている。

また、chocoZAPは経済的にも「簡単」「便利」を追求して、無人ジムとしてコストを抑えているが、スターターキットとして体組成計とヘルスウォッチを提供し、入力の手間を省いて利用者のデータが残る環境を提供し、RIZAPで培ってきたデータに基づいた指導をAIで提供していく準備を進めている。

 

2023年はどんな年になりそうですか?

「健康、ヘルスケアサービスを強化しながら、フィットネス参加率の向上と健康寿命の延伸の実現に向けて、店舗とサービスを拡充させていきます」

chocoZAPの店舗展開に加えて、RIZAPと連携した健康・ヘルスケア分野のサービスも拡充して、グループとして未顧客マーケティングを進め、フィットネス参加率の向上と、健康寿命の延伸に取り組んでいく。

これまでもRIZAPとして提供している健康経営での特定保健指導サービスでは、一部をchocoZAP利用にすることで、より安価にサービスが提供できることになる。

また、chocoZAP店舗では、利用者が初心者であることから、RIZAPトレーナーによる指導サービスが利用できる月会費制のサービスも提供していく。店舗展開では、2025年中に2000店舗を目指している。

フルサービスのRIZAPでも、健康・ヘルスケアとしての提供価値を拡充。2022年10月から、自己採血キットによる測定を全会員に導入した。血液データから「メディカルマイレポート」が提示され、RIZAPでこれまでも指標にしてきた「体重」や「体組成」、シニア向けの「体力年齢」に加えて、自身の健康状態や変化への気づきを喚起し、行動変容を促していく。