苦戦するクラブの事業継承を進め、GOLD’S GYMで新たな目的を提供フィットネス人口倍増を目指して、話題になるプロジェクトを創出へ
2022年、ウィズコロナの環境変化により、フィットネス業界の市場環境も大きく変化した。フィットネスクラブ各社も、徐々に回復の兆しが見えてきている。2023年は、さらなる回復に向けて、どのように今後の動向を予測し、キャリアを築いていけばよいのだろうか?業界を牽引するリーダーたちに訊いた。今回は、GOLD’GYMを運営する株式会社THINK FITNESS 代表取締役社長の手塚栄司氏。筋トレ好きの聖地とも呼ばれるGOLD’GYMは、2023年のフィットネス業界にどのように対応していくのだろうか。
2022年はどんな年でしたか?
「フィットネスクラブに戻ってくる人が、期待していたより少なかった。 人々にとって、フィットネスが必要なものになっていないことに、もどかしさを感じました」
2021年末にコロナ感染者数の第5波が収束し、2022年は、いよいよ人々が再びフィットネスに戻ってくることが期待されていた。ところが年明けから新種のオミクロン株の感染力がメディアで報じられはじめ、2月には過去最大の感染者数を記録する第6波。
その後、7~8月には、第7波でさらに感染者数を更新したことが報じられた。重症化率が低く、行動制限もなかったことから、フィットネスの必要性を感じているコアユーザーは戻ってきたものの、期待を下回る動きに留まった。
ゴールドジムでは、メンバーの来館数を経営指標の一つに置いているが、2022年は営業が継続できたものの、計画の85%に留まり、その要因として、2つのことが挙げられた。
一つは、感染者数の波が来るたびに、家族 や会社から、外出を控える制限がかけられる人も多かったこと。もう一つが、リモートワークが進み、小規模新業態のジムが増え、家の近くで便利に安価に利用できる環境ができた
ために、混んでいるイメージがある総合フィットネスクラブの利用が敬遠された。
コロナ禍で、人々の健康意識が高まったとはいえ、フィットネスの必要性や、生活における優先度は低い状況にあることが示唆される1年となった。
2023年に向けて始めたことは?
「フィットネスの環境を守るべく、7店舗のクラブを事業継承しました。また、ボディコンテストのカテゴリを増やすなど、多くの方が目的意識をもってトレーニングが継続できる取り組みを進めました」
THINKフィットネスは、企業理念を「正しいフィットネス、トレーニングの普及」として、それを実現する商品、場所、情報の提供を行ってきている。2021年~2022年にかけて、コロナ禍の影響でクラブの経営環境が悪化する中でも、人々のフィットネスの場所を守るべく、苦境に立つクラブの事業継承を進めた。7店舗の出店により、ゴールドジムは全国110店舗となった。
2022年の後半から光熱費高騰も課題として加わり、クラブの経営状態は厳しいものの、会員数に対する利用率が60%に上るクラブもあり、土地オーナーや地域の人々に喜ばれている。
また、ゴールドジムの体験価値の一つである、「目標志向」の強化を企図して、ボディコンテストイベント「マッスルゲート」を全国展開。
「ウーマンズレギンス」や「メンズタンクトップ」など、ジムでのトレーニング姿で出場できるカテゴリが人気で、全国17ヶ所21の地方大会も開催。
2022年の「マッスルゲート」の延べ参加者は5,000人を超えた。レベルが上がった人にはJBBF大会へのステップもあり、ボディコンテスト出場をモチベーションに、フィットネスに参加する人が増えている。
2023年はどんな年になりそうですか?
「以前のメンバーに戻ってきてもらうというより、フィットネス人口を倍増させることを目指して、フィットネスが話題になるプロジェクトを立ち上げていきたいですね」
ゴールドジムでは、フィットネスを「自分にとってちょうどいい、健康的な生活習慣」として再定義。「明日の元気、未来の健康」をキャッチフレーズにマーケティングしていくことを計画している。
フィットネスをすることで、「明日を元気に迎えられる」ことを短期的な成果として、それを繰り返すことで、長期的な「未来の健康」という成果に繋がる。「健康的な生活習慣をつくることこそが、フィットネス」として、情報を発信し、広く啓発活動を進めていくことを計画している。
具体的には、ゴールドジム館内での情報提供を強化。コロナ禍で、人々の健康意識が高まる中、人々の健康やリスクに関する知識ニーズに応えつつ、メンバーから家族や友人に、トレーニング効果を伝えてもらったり、話題にしてもらうことを企図。
「基礎代謝」「免疫力」「骨密度」をはじめ、健康維持へのフィットネス効果がまとめられた記事などを館内に掲示し、注目を喚起している。
また、フィットネスやトレーニングが話題になるようなプロジェクトやイベントも計画。60歳の「還暦」の次のお祝いとして、65歳の「健康を考える式」を開催したり、「還暦スター誕生」という60歳以上の方向けのコンテストイベントを企画するなど、フィットネスに参加したくなるプロジェクトやイベントの創出を計画している。