会員数の伸び悩みや継続率の低下は、多くのフィットネス事業者が直面する共通課題だ。その解決策の1つとして改めて注目されているのが、体験価値の高いグループフィットネスである。2025年12月6日(土)、東京・ベルサール渋谷ガーデンで開催された「LES MILLS LIVE TOKYO」には、約3,000人もの参加者が集結。音楽、プログラム、インストラクターが一体となる非日常的な空間での「体験型フェス」は、ユーザーを“参加者”から“ファン”へと変える力を強く示した。本稿では、この熱狂の一日を通じて見えた、クラブ経営に活かすべきヒントを探る。
会員在籍・継続を左右する「体験価値」の再定義

フィットネスクラブ運営において、会員獲得以上に難易度が高いのが在籍維持である。設備や価格といった条件面での差別化が難しくなる中、カギを握るのは「そのクラブで運動する理由」をどれだけ明確に提供できるかだ。Les Millsが世界規模で支持されてきた背景には、単なる運動提供に留まらず、音楽とムーブメント、そして人の熱量が掛け合わさった“体験”を設計してきた点がある。
日本で約6年ぶりの開催となった「LES MILLS LIVE TOKYO」は、その思想が凝縮された場となった。2つのスタジオで計15プログラムが実施され、参加者は一日を通して多様な選択肢に触れられる構成。満員のプログラムが続く中でも、事故なく運営された背景には、緻密なオペレーションと「全員で成功させる」というチーム意識があった、という声が多く寄せられた。
「これぞグループフィットネスと実感した一日だった」、「大人数で動くことで、自分一人では出せない集中力や高揚感を得られた」という参加者からの声からもわかる通り、こうした完成度の高い体験は「また参加したい」、「このプログラムを日常でも続けたい」という感情を生み、結果としてクラブへのロイヤルティ向上につながっていく。

新プログラムが生む“期待感”と市場拡張の可能性

今回、複数の新プログラムが披露された点も注目に値する。海外で話題となっている「LES MILLS YOGA」は、YIN、HATHA、VINYASA、BREATHという4つのプログラムで構成され、心身への多面的アプローチを可能にする。「目的別に選べるので、長く続けられそう」という声も届いており、従来のLes Millsファンだけでなく、ヨガ志向層やコンディショニングニーズを持つ層へのリーチ拡大が期待される。
また、「BODYPUMPHEAVY」は、テンポを重視した構成で代謝活性と筋力向上を両立。シンプルな種目で成果を実感しやすく、参加者からは「ペースがゆっくりだから正しい姿勢で動ける」と評価も高い。さらに「LES MILLS CEREMONY STUDIO」は、既存のスタジオやツールが活用できるため導入がしやすく、ファンクショナルサーキットトレーニングのさらなる可能性を提示した。
イベント形式で新プログラムを体験してもらうことで、参加者の期待値を高めると同時に、クラブ側にとっても導入後の集客イメージを描きやすいプロモーションとなっている。多様なカテゴリーを一堂に体験できる場は、ユーザーの「次に挑戦したい」を刺激し、利用頻度向上にも寄与するだろう。

インストラクターの価値を最大化する“舞台”の設計

ユーザー体験の質を最終的に決定づけるのは、現場に立つインストラクターの存在だ。「LES MILLS LIVE TOKYO」では、約60名のプレゼンターが登壇し、海外プレゼンター、ジャパントレーナーチーム、そしてTHE ONEインストラクターが国籍やキャリアを超えて1つのチームを形成した。その姿勢は、会場全体の一体感を生む最大の要因だった、と多くの関係者は振り返る。
MCの役割も重要だった。プログラム特性に合わせた進行や演出により、参加者の没入感が高まり、「Large Studioの“フェス感”」と「Small Studioの“コミュニティ感”」という異なる熱量が同日に成立した。参加者から「両方を1日で体験できたのは贅沢だった」という声も届いている。
2024年に開催したLes Mills No.1インストラクター決定オーディション「THE ONE」のセミファイナリスト・ファイナリストが大舞台に立つ仕組みは、出演者本人だけでなく、観客として参加したインストラクターにとっても明確な目標提示となり、育成とモチベーション向上の好循環を生んでいる。インストラクターが憧れ、成長を実感できる環境づくりは、クラブ全体のサービス品質向上に直結する。

グループフィットネスが示すこれからのクラブ経営
来場者約3,000人、チケット購入者来場率97%超、10~70代という幅広い年齢層と11%の海外来場者比率。これらの数字は、グループフィットネスが持つ集客力と市場ポテンシャルを明確に示している。「LES MILLS LIVE」は、単発イベントに留まらず、クラブ、インストラクター、会員をつなぐハブとして機能し、業界全体の活性化に寄与してきた。
フィットネス事業者にとって重要なのは、この“非日常体験”を日常のオペレーションへどう落とし込むかだ。多様なプログラム構成、演出への投資、インストラクター育成と評価の仕組みづくり。その積み重ねが、会員を「運動する人」から「そのクラブのファン」へと変えていく。「LES MILLS LIVE TOKYO」が示したのは、グループフィットネスが今なお進化し続け、経営課題解決の中核になり得るという確かな可能性である。
