2020年6月26日、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)及び経済産業省において、次亜塩素酸水の新型コロナウイルスへの有効性が一定の条件下において認められた。だが、その使用方法には注意が必要だ。

NITEは次亜塩素酸水の空間噴霧の効果を否定、 次亜塩素酸水溶液普及促進会議は反論へ

6月26日に発表された『「次亜塩素酸水」の使い方・販売方法等について(製造・販売事業者の皆さまへ)』の文面では、空間除菌について下記のように記されている。

「次亜塩素酸水」を空間噴霧することで、付着ウイルスや空気中の浮遊ウイルスを除去できるかは、メーカー等が工夫を凝らして試験をしていますが、国際的に評価方法は確立されていません。安全面については、吸入時の影響についての動物実験なども行われているようです。

この時点では、まだ空間噴霧おいては「評価方法がない」だけにとどまり明確な否定はない。しかし、7月12日にYahoo!ニュースにて取り上げられた記事(『次亜塩素酸水と家庭用洗剤の有効性を検証した政府と専門家 「大切なのは使い方」 【#コロナとどう暮らす】』)では、NITE検討委員会の松本氏は下記のようにはっきりと次亜塩素酸水の空間噴霧について否定している。

「噴霧器に次亜塩素酸水を入れて噴霧するよう推奨する情報があり、『これはまずいな』と思っていました」

「消毒液全般として、噴霧での消毒は推奨されていないんです。吸入していい消毒液は、世の中にありません。それをわかっていただきたいと思います」

(YAHOO! JAPAN『次亜塩素酸水と家庭用洗剤の有効性を検証した政府と専門家 「大切なのは使い方」【#コロナとどう暮らす】』より引用 )

これに対して、一般社団法人 次亜塩素酸水溶液普及促進会議は「まったくの誤報だ」とし、NITE委員会の中立・公正性に対しても疑問を呈している。実際に、同会議のHPを確認すると、次亜塩素酸水の有効性・安全性についての検証は約200件ほどなされており、確かなエビデンスが存在している(空間噴霧を含む)。また、次亜塩素酸水における報道・発表への指摘・修正や海外の事例なども掲載されているため、同水溶液に関するリッチな情報を知りたい方には参考になるだろう。

空間噴霧は付着菌にこそ作用 浮遊菌への対策は換気を推奨

三重大学大学院生物資源学研究科の福﨑智司教授も、空間噴霧に関して言及している。

同教授によれば、次亜塩素酸水を超音波式で噴霧した微細粒子が微生物やウイルスに接触することで確実に除菌できているという。しかし、空間噴霧という名前から、空間全体を消毒しているかのようなイメージが想起されることが、認識の乖離を起こしていると指摘する。

政府は「空気中に浮遊するウイルスには換気が有効であり、次亜塩素酸水の空間噴霧は意味がない」としている。福崎教授は、前者に関して賛同しつつも、そもそも空間噴霧の目的は空間除菌ではないと指摘する。

微生物はなにかに付着することで安定するため、浮遊菌よりも吸着菌のほうがはるかに多く存在する。浮遊菌に関しては換気さえすればある程度薄まるが、問題は換気だけでは減らない付着菌への対応だ。そこで空間噴霧が重要となる。噴霧された微細粒子は空中に漂いつづけるわけではなく、徐々に上から下に向かって落ちていき、床や壁に付着している菌に作用するのだ。

さらに、福崎教授は安全性についても「使用上の注意を守ればまったく問題ない」と述べている。同教授によると、塩素ガスに対して労働安全衛生法や日本産業衛生学会が定める作業環境における許容濃度は500ppbであり、居住環境においてはその約1/10〜1/5(50〜100ppb)程度を目安としている。

それに対して、次亜塩素酸水を空間噴霧した場合の濃度は、粒子は下に落ちていくため足元が最も高く、顔周辺の濃度はほぼゼロ(長時間噴霧しつづけて初めて2〜5ppbになる)、最も高濃度である足元においても20ppbを超えることはほとんどないという。

使用方法には注意 基本的な整頓・清掃を最優先に

ここまでで、次亜塩素酸水の有効性・安全性に関しては理解できたが、それでも注意は必要だ。特に、有用だからといって狭い空間に過剰な噴霧を行うことは、福崎教授も推奨していない。噴霧機に書かれている用法・用量を守り、適切に使用するべきだという。

また、空間噴霧のような除菌活動の前に、除菌対象場所の整理整頓や清掃を行い清潔に保つことが重要だとしている。これは、微生物の制御が最も求められる食品産業でも徹底されていることであり、今回のような状況下では、すべての産業・業界が同様の危機感を持って感染リスクの減少に努める必要があるだろう。

フィットネス業界・クラブにおいても、次亜塩素酸水の空間噴霧は非常に有効だと考えられ、特に、ストレッチやヨガなど、座位で行うフィットネスでは、床やマットに付着している菌への対応が必須だろう。

そして、福崎氏が推奨するように、整理されていない状態で除菌に先走るのではなく、まずマシン・ギア・その他ツールの整頓や、最低限目に見えるゴミがなくなるレベルの清掃を行う。そのうえで次亜塩素酸水による拭き掃除および空間除菌を行うことで、お客さまが安心して利用できる状態になるのではないだろうか。

また、次亜塩素酸水に関しては、NITE・経済産業省による発表やメディアの影響もあり、その効果や安全性に疑問を呈している利用者も多い。そのような方々の不安を取り除く意味でも、お客さまへの、正確な情報の周知やクラブが行っている取り組みのアピールを、これまで以上に積極的に行うことが、復会者を増やすためには重要だと考えられる。

【参考】

・一般社団法人 次亜塩素酸水溶液普及促進会議HP https://jia-jp.net/index.html

・KENKO HEADLINE 「微生物制御」の観点から「次亜塩素酸水」を読み解く 三重大・福﨑教授(前篇)【withコロナ】 https://www.tokyoheadline.com/500554/

・KENKO HEADLINE なぜ「次亜塩素酸水」が問題とされているのか? 三重大・福﨑教授に聞く(中篇)【withコロナ】 https://www.tokyoheadline.com/500602/2/

・KENKO HEADLINE 「次亜塩素酸水」空間噴霧の安全性と注意点は? 三重大・福﨑教授に聞く(後篇)【withコロナ】 https://www.tokyoheadline.com/500608/

・YAHOO! JAPAN 次亜塩素酸水と家庭用洗剤の有効性を検証した政府と専門家 「大切なのは使い方」【#コロナとどう暮らす】 https://news.yahoo.co.jp/articles/d8f26b13c030de0df90f4dc1a7331a9e561aeb2b