課題×トレンド×リソースからアイデアを抽出

前川彩香氏
株式会社LIFE CREATE 代表取締役

女性専用のホットヨガスタジオ「loIve(ロイブ)」を中心に、サーフィンの動きで体幹を鍛えるサーフエクササイズスタジオ「Surf Fit」やピラティス用のリフォーマーを使ったグループピラティスレッスンスタジオ「pilates K」も含め、全国に70店舗以上の女性専用フィットネススタジオを展開している株式会社LIFE CREATE(以下、LIFECREATE)。同社は、創業10年にして売上高32億円を突破。「自分を愛し、輝く女性を創る」を企業理念としている。従業員約650名のうち約99%が女性であり、「働きやすさ」と「働きがい」を重視していることから、子ども連れで一緒に出張に行ける制度や若手でも実力に秀でた人材のリーダーへの登用など、女性がいきいきと活躍する場をつくることに全社を挙げて取り組んでいる。

フィットネス業界としては初めて「Forbes JAPAN WOMEN AWARD2018」の企業部門300人以上/1,000人未満の部で第5位に入賞するなど、高い評価を受けている。同社は、今後も成長著しいブティックスタジオ市場での店舗拡大を加速するとともに、女性向けフィットネス分野での熱狂的なコミュニティ運営ノウハウとテクノロジーを活用した「フィットネス×テック」分野での事業拡大を目指すため、株式会社アカツキなどから6.3億円の資金も調達している。

イノベーティブな業態・プログラム開発、サービスの品質管理や人材育成などに優れ、サクセスフルに事業展開している同社。その代表取締役前川彩香氏に、起業や新規事業創出をする場合にキーとなるポイントを訊いた。

まず、新業態やそこで提供する新プログラムなどのアイデアはどうやって見つけるのだろうか? 

「日本の生活者が、今まさに何に関心を寄せているのか、また興味をもっていることなどを実際の行動やメディアを見るなどして知り、そこからインサイトを得たりします。SNSをチェックすることもしますが、自分も1人の女性としてInstagramのstoriesを使ってみて、今の女性が感じていることに気づきを得たり、海外の主要都市に出向いて有益な情報を取りに行くこともします。そして、自社や自分のリソースを絡めてどんなサービスがデザインできるのかと考えていきます」

前川氏はこう語り、例えば「今の女性は他者から関心を示されるかどうかを気にするのではなく、自分自身が満足したいと思ったり、さらにその先で自分の人生を豊かにしたいと思っているように感じる。そうであるなら、当社はどんなサービスを提供したらフィットするのだろう」などと考えをめぐらせていくという。

つまり、日本(人)の課題×海外のトレンド×自社のリソースから、新しい事業・サービスのアイデアを得ているというのだ。そのために、普段から人を観察して心理を読み、そこからインサイトを得て、それに対応するサービスをイメージしようとしている。これは、マイケル・ポランニーが指摘する暗黙の認識をするための次の3つの機制に似ている。

  1. 問題を適切に認識する
  2. その解決へ迫りつつあることを感知する自らの感覚に依拠して問題を追求する
  3. 最後に到達される発見について、いまだ定かならぬ暗示=含意(インプリケーション)を妥当に予期する

ただ前川氏自身が、現在、対象としている顧客層とデモグラフィック的にもサイコロジカル的にもかぶるので、憑依してインサイトを得ることもしやすいが、例えば50歳を超えるような男性の経営者が、若年女性を対象顧客にした新しい事業・サービスを創出しようという場合は、インサイトを得ることが難しいかもしれない。

「そういう場合には、(自身の適・不適や能力の限界を知ったうえで)ニーズを引き出すことができる女性の従業員によるチームをつくり、事業場の意思決定も含めて彼女たちに委ねるといったことが必要になるかもしれない」(前川氏)

理念やビジョンを、熱く、語る

既述したように、前川氏は先ごろ、大型の資金調達をしているが、このような関係者から投融資を引き出すにはどのようにプレゼンテーションしていくとよいのか? 何が重要になるのだろう?

前川氏は「これを絶対にやりたいという、志と熱量が大事」と言う。だが、それ以前に、実績に裏打ちされた経営力と自身が提供するサービスを通して得た美しさがあるから、プレゼンテーションを聴いてもらえるのではないか。さらにそのうえで、冷静に自分自身の心を見つめて、真の思いを自分の言葉として適切に表現できるからではないか。

「なぜこの事業を始めたのか? この事業が今の日本に必要とされる理由は? この事業の本質的な価値は? この事業によって日本をどう変えたいのか? こうした理念を私はきちんと話すことにしています」。こう、同氏は語っている。

LIFE CREATEは、ミッション(果たすべき使命)として「自分を愛し、輝く女性を創る」を、ビジョン(実現したい未来)として「女性の新しい生き方を通して世の中に愛と自信があふれ、子どもたちが夢を描く社会へ」を掲げているが、前川氏はこれらを自身のエピソードを添えてストーリーとして、いきいきとステークホルダーに語ることができているのだろう。

「投資家や融資先の方も人であり、人として善きことをする人を支援したいと考えているはずで、私たちも理念やビジョンを語るなかで、どのようにして日本をよい国にしていくか、日本の女性を幸せにしていくのかを伝えます。すると、そこに共感する方々が、投融資や経営的なサポートをしてくださるのです。そういう意味では、私は、小手先の戦略以上に、理念やビジョン、提供する価値のほうが大切だと思っています」(前川氏)

起業であれ企業内での新規事業であれ、新しい事業を起こそうとするなら、儲けたいからとか成功したいからとか、またはこのコンテンツを売りたいからといったことよりも先に、自分自身がこの事業をなぜしたいのかという理由を熱くストーリーとして語れなければならない。