株式会社クララボ(以下、クララボ)は、2021年7月、オタク向け女性専門パーソナルトレーニングジム「Clara」(以下、Clara)を池袋に開業。オタク女性という極めてニッチなターゲットながら体験予約が殺到し、2ヶ月も経たないうちに急遽2店舗目をオープンした。一時期は120名以上の方が予約待ちで、新規の受付をストップしていたことも。その人気の秘訣やClaraに込められた想いを、同社代表取締役社長 作田耀子氏(以下、活動名のSAKU氏とする)、同社トレーナーTame.氏に訊いた。

  • 作田耀子氏(SAKU氏)
    株式会社クララボ 代表取締役社長
  • Tame.氏
    同社代表トレーナー

推しに恥じない身体づくり

自身も根っからのオタク女性であるSAKU氏。Clara開業のきっかけは、自身もパーソナルジムに通い、トレーニングと食事指導でダイエットに成功した経験があったため。

「アラサーになり、『20代のときに制作したコスプレ衣装をカッコよく着こなしたい』『コラボカフェも楽しみつつ、痩せたい』『年をとっても健康的にオタ活を楽しめる身体を作りたい』と思い、ダイエットを決意しました。最初は自分なりに食事に気をつけたり走ってみたりしていたのですが、自分だけで継続することができず、知人の紹介でパーソナルジムへ入会しました。1年間で約12キロの減量に成功し、結果自体は非常に満足だったのですが、オタクであることをなかなか言い出しづらく、トレーナーにダイエットの目的を訊かれても正直に答えることができず、徐々にストレスを感じていました。そのときに、『推しに恥じない身体づくりをしたい』と言える環境があればいいなと思ったのがきっかけです」

また、周りのオタク仲間の健康状態にも、懸念を感じていたという。

「オタク女性のなかには、推し活のために運動不足や徹夜が続き、体調を壊してしまう人がとても多いです。しかし、普通のジムに通うことにも抵抗を感じ、そのような生活を改善できないため、結果的に自分たちの大好きな推し活に支障が出てしまうという悪循環があります。そんなオタク女性を救いたいという想いで、オタク向け女性専門パーソナルジムであるClaraを開業しました」

その想いに沿うように、トレーナーであるTame.氏を含め、所属しているパーソナルトレーナー全員がオタク女性であるため、お客さまはダイエットの目的や悩みなども気軽に相談できる。

「私自身もオタクなので、お客さまの希望や悩み、妥協できないことなど、共感できる部分がとても多いです。健康のために推し活をやめさせるのではなく、健康に推し活をするための指導を心がけています」と、Tame.氏は話す。

また、スタジオ内にはたくさんのフィギュアやポスター、缶バッジが置いてあり、モチベーションも向上。なかには、自分の推しのフィギュアを持ち込む方もおり、まさに「推しに恥じない身体」を目指してトレーニングに励んでいるという。

自分のバックグラウンドから、ピンポイントでターゲットとそのジョブを見つけ出し、「これしかない」ソリューションを提供しているClaraは、コンセプチュアルジムの完成形の1つと言えるのではないだろうか。

オタク女性向けのジムとして唯一無二のポジショニングを確立

現在、広告は一切出しておらず、SNSやメディア露出だけでプロモーションは完結しているという。

「情報発信は、主に自社のTwitterアカウントで行っています。オタク女性は基本的にTwitterを使うので、リツイートなどで自然に拡散され、認知は広まっていきました。また、ありがたいことに数多くのメディア様から取材もしていただいているので、広告費は一切かかっていないです」

プロモーションの面でも、オタク女性向けであることの強みが伺える。ある意味、ペルソナが自分たち自身であるため、オタク女性に刺さる表現やキャッチコピー、チャネルなどもイメージしやすいのだろう。

また、コンセプチュアルジム全般に言えることだが、基本的には強烈でニッチなコンセプトであればあるほど、メディアからの注目度は高まる。つまり、開業初期の集客率や盛り上がりに関しては、最初のコンセプト設計で勝負が決まると言っても過言ではない。

さらに、出店地域である池袋はオタク女性にとっての聖地らしく、「乙女ロード」と呼ばれる通りには多くのグッズショップやコラボカフェが立ち並んでおり、トレーニング前後に推し活をするお客さまもいるという。

ターゲットの属性によって立地を決めることは戦略として珍しくないが、ここまでユーザーの動線まで意識しているジムはほかにないだろう。

コンセプトからジムの内装、立地、トレーナー、プロモーションまで、すべてがターゲットを意識しており、オタク女性向けのジムとして、唯一無二のポジショニングを確立している。

世界中のオタクの健康を支えたい

最後に、今後の展望を訊いてみた。

「最終的には、世界中のオタクの健康を支えたいと思っているので、関西をはじめとした各都市への出店や男性に向けた指導も展開として視野に入れています。また、今後はオフラインだけでなくオンラインでも何かできればと考えていますね。現在、トレーナーの採用も積極的に行っているため、我こそは!というオタクトレーナーさんとご縁があれば嬉しいです」

2030年にはオタク人口の比率が30~40%になるというデータ(矢野経済研究所)もあるため、彼らの健康を担保することの意義は大きい。クララボの今後に期待したい。

オタク向け女性専門パーソナルトレーニングジム「Clara」のHPはこちら