ウェルビーイングを実現する製品・技術の展示会【WELL-BEING TECHNOLOGY 2026】が1月28日(水)~30日(金)、東京ビッグサイト西ホールにて開催される。

素材からセンシング技術、ロボティクスに至るまで、既存の業界の枠を超え「ウェルビーイング」という一つの視点のもとに製品・サービス開発者が集結。各社のコラボレーションの場となることこで、ウェルビーイング社会の実現を目指している展示会だ。
開催に先立ち、実行委員会委員長を務める渡邊淳司氏にインタビューした。
「ウェルビーイング」の構造を捉え、その価値を織り込むことで、誰でもサービスに実装できる
「ウェルビーイング」という言葉は、いまや企業活動のあらゆる場面で使われている。働き方改革、人的資本経営、サービス開発、さらには企業価値の向上まで。一方で、「ウェルビーイング」は大切であるが、具体的に何をすればよいか分からないと感じる人も多い。NTTコミュニケーション科学基礎研究所の渡邊淳司氏は、ウェルビーイングのビジネスを特別な取り組みとして捉える必要はないと語る。「まずは、これまで企業で行われてきたものづくりやサービスづくりを、ウェルビーイングの視点から捉え直し、価値づけることが大事」という。触覚研究を起点に、人と人のつながり、ウェルビーイングへと研究の関心を広げてきた渡邊氏の言葉には、ウェルビーイングのビジネスを捉え直すヒントがある。
触覚研究から見えた、つながりの本質
渡邊氏の研究の原点は、触覚という触れあう感覚を通じた人と人のコミュニケーションにある。NTTで取り組んできたのは、心拍を手の上の触感として感じる技術や、ハイタッチで手を合わせる触覚が遠隔地に送られる技術など、身体的なコミュニケーションに関するものが多い。渡邊氏の関心は、単なる触覚伝送技術の研究ではなく、その背景にある人と人のつながりにあった。
「自分の心臓の鼓動を相手に感じてもらう。それは命という大事なものを感じ合うことであり、さらには、価値観や考え方を伝え合うことにもつながると思います」
生命としての身体的なつながりと、社会的存在としての価値観や考え方の共有。この視点の統合が、渡邊氏をウェルビーイング研究へと導いた。触覚を伝えるというより、相手のことを感じる、相手の存在を受け入れる、そんなコミュニケーションをどう実現していけるのか。そこで出会った言葉が「ウェルビーイング」だったと話す。
「ウェルビーイング」のサービスは、エッセンスを“ふりかける”
渡邊氏は現在、品川区で「ウェルビーイング・コンピテンシー(多様な人々と共に、ウェルビーイングに生きるための実践的資質/能力)」を高めることを企図した教育導入の講師をしている。子どもたちのウェルビーイングの“状態を向上させる”だけでなく、子どもたち自身が、自分のウェルビーイングを周囲の人たちと共にケアできる“力を身につける”のである。そこでの取り組みは、ビジネスシーンでの示唆にも富んでいるという。
渡邊氏はまず学校の先生方に、普段やっている学びを「ウェルビーイング」という視点で捉え直すことを伝えている。そして、実践にあたり提案したのが「ターゲット型」と「アレンジ型」という2つのアプローチだ。
「ターゲット型」とは、ウェルビーイング・コンピテンシーの獲得・向上を主たる目的とする教育活動。一方、「アレンジ型」は授業や学校生活の中で、副次的にウェルビーイング・コンピテンシーの獲得・向上が期待される教育活動である。ターゲット型とアレンジ型をバランスよく取り入れることで、先生方にスムーズに取り組んでいただけているとのこと。
この考え方は、ビジネスにおけるサービス開発にも応用できる。
「ターゲット型」は、ウェルビーイングをサービス価値の中核に据えるもの。メンタルヘルスアプリや、瞑想アプリなど、ウェルビーイングそのものを目的としたサービスがこれに当たる。ウェルビーイングの要因である、「熱中」「達成」「心の平穏」「親しい関係」などからコアとなる価値を選び、それを実現する方法を心理学の知見などを活用して設計していく方法だ。
一方の「アレンジ型」のサービス開発は、既存のサービスや製品に、ウェルビーイングのエッセンスを“ふりかける”アプローチだ。渡邊氏はスポーツシューズの例を挙げて説明する。その基本機能は、足を保護して歩くことを助ける機能。そこにウェルビーイングの要因である「達成」を足すなら、走った距離を記録するアプリと連動させる。また、「親しい関係」を足すなら、仲間とペアのデザインをできるようにする。「共創」を足すなら、応援するスポーツチームの試合に同じシューズを履いていくことで場に一体感をつくる。さらに、「自然との関わり」なら、自然や世界との繋がりが感じられる走る体験を組み込むという具合だ。
「『既存のサービスが持つ体験や流通のプロセスを見直し、そこにどんな要因を織り込めばウェルビーイングが生まれるのか』と考える。そうした発想に立つことで、無理なくウェルビーイングのビジネスに取り組むことができます。」
渡邊氏の言葉は、ウェルビーイングのビジネス実装のハードルを大きく下げる。
状態(形容詞)ではなく、副詞として捉える
また、ウェルビーイングのサービス設計で渡邊氏が強調するのは、ウェルビーイングというものを、どこかにゴールがある理想の状態と考えるのではなく、「ウェルビーイングに〇〇する」という形で、副詞として捉えるという点だ。〇〇するときに、自分はどんなことを望んでいるか、具体的に考えることができるようになるし、サービスの設計でも、それぞれの人が自分自身のウェルビーイングを見つけ実現できるように設計していくことが重要だという。
例えば「ウェルビーイングに食べる」ことを考えると、ある人にとっては一人でゆっくり食べることかもしれないし、大好きな人とシェアすることかもしれない。フェアトレードの食材を選ぶことかもしれない。副詞として捉えることで、それぞれの人のそれぞれにとってのウェルビーイングが見えてくる。
このようなサービス設計の考え方では、「ウェルビーイングの要因の構造」を理解しておくことも有効だ。渡邊氏が提示するのは、I(個人)、We(身近な人々)、Society(社会)、Universe(地球・自然)という4つのレイヤー構造である。自分一人で完結するウェルビーイングの要因もあれば、身近な人々との関わりの要因、社会との関わりの要因、もっと大きなものとの関わりの要因もある。どのレイヤーに、自分や顧客の、関心や価値があるかを知っていると、ウェルビーイングの価値を付加しやすくなるという。
「価値観出し」から始める、アイデア創出
ビジネスを創るチームをはじめ、集団のコミュニケーションで渡邊氏が重視するのが「ウェルビーイング価値観の可視化」だ。これまで、ブレインストーミングでアイデア出しをすると、「私」のアイデア競争に留まってしまうケースも多かった。そこで、チームが具体的なビジネスに着手する前に、関係する人たちでそのビジネスに対する価値観を共有する。そこからアイデアを出していくと、複数の人たちの価値観が同時に満たされる「わたしたち」のアイデアが生まれやすくなる。
渡邊氏は、「わたしたちのウェルビーイングカード」というウェルビーイングの価値観の可視化ツールを開発している。カードには様々なウェルビーイングの要因が書かれており、自分のウェルビーイングに大切なことを深く考え、周囲の人とお互いの大切なことを共有することで、相手の価値観を踏まえたコミュニケーションが可能になる。個人の自己理解から、チームの関係性向上、組織全体の方向性の明確化まで、すべてがつながっていく仕組みだ。
「ウェルビーイング」を起点としたプロセス標準
ウェルビーイングのビジネスを創る上で、もう一つ渡邊氏が注目するのが、2024年に策定されたISO 25554:2024という、地域や企業がウェルビーイングを推進するための基本的なプロセスを定めた国際規格である。もちろん、ウェルビーイングに資するサービス開発にも使える。コミュニティを定義し、メンバーそれぞれの価値観と全体としての目標を設定、指標化し、それを実現するサービスを設計する。サービスを実装、効果を測定し、定期的にレビューする。渡邊氏は、策定に関わったメンバーとともに、このISOの考え方を実務に落とし込むプロセスを、チェックリスト化。今後、実際に複数の企業で検証を行っていく。
例えば、企業の働き方改革なら、部署ごとのミッションや個人のウェルビーイングの価値観を可視化するとともに、会社全体のパーパスの下で指標化していく。例えば、エンゲージメント指標は、会社視点で会社と個人のウェルビーイングの関わりを評価する指標であるが、各社が独自の指標を設定することもできる。そして、指標の期待値と実際の測定値を比較検証し、改善を継続的に行っていく。
ウェルビーイング テクノロジーの可能性
2026年1月に開催される「WELL-BEING TECHNOLOGY 2026」展の実行委員長を務める渡邊氏は、この展示会をウェルビーイングとテクノロジーの出会いの場と位置づける。
素材から空間デザイン、センシング技術、ロボティクスまで、幅広い分野が集まる。素材の触り心地を可視化するソリューション、日常の中で寄り添い身体情報をセンシングできる衣服、円滑な音声対話・触覚コミュニケーションを実現するロボット、そしてはたらく人の幸せと企業利益を両立させるサービス--。I(個人)、We(身近な人々)、Society(社会)、Universe(地球・自然)のレイヤーをまたがるウェルビーイングのテクノロジーが展示される。また、期間中にはISO 25554:2024の相互認定会も世界で初めて行われる。
「大切なのは、テクノロジーそのものではなく、人と人、人と環境のあいだにある相互作用を豊かにし、ウェルビーイングが生まれ続ける“プロセス”を支えることです」と渡邊氏。この展示会は、製品やサービスを紹介する場であると同時に、そうした可能性に気づき、参加者一人ひとりが新しい発想を得るきっかけになればと考えている。渡邊氏は、こう締めくくる。
「ウェルビーイングのビジネスは、特別な業界や一部の企業だけのものではありません。ウェルビーイングの構造を捉える視点を持ち、アレンジ型の考え方やプロセスのISO標準を手がかりにしながら、これまでのビジネスにウェルビーイングの付加価値を織り込んでいく。それだけで、既存のビジネスが新しい意味や価値を持ち始め、ウェルビーイングの視点から次のビジネスが生まれていくのだと思います」
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渡邊淳司(わたなべ・じゅんじ)NTTコミュニケーション科学基礎研究所 人間情報研究部 感覚共鳴グループ 上席特別研究員。触覚や身体感覚を通じて自身の在り方や人との関わりを実感し、多様な人のウェルビーイングが実現される方法論について探究。『ウェルビーイングのつくり方』(ビー・エヌ・エヌ、2020年)などの著作を通じて、テクノロジーとウェルビーイングの関係性を探求。展示会「WELL-BEING TECHNOLOGY」の実行委員長や、ウェルビーイング学会 理事を務めるなど、ウェルビーイングの社会実装に向けた活動も展開している。 -

WELL-BEING TECHNOLOGY 2026
1月28日(水)~30日(金)
東京ビッグサイト西ホール
展示会 WELL-BEING TECHNOLOGY 2026 が今月末、東京ビッグサイトにて開催されます。五感や感性等に関わる技術、脳波センシングやコミュニケーション活性化・メンタルヘルスに関するソリューションなど、ウェルビーイングに関係する注目のテクノロジーが多数展示されます。
会期中には、NTTコミュニケーション科学基礎研究所の渡邊淳司氏が登壇するセミナープログラムに加え、1月30日(金)13時からは世界で初めて行われる「ISO 25554:2024 第1回 企業事例に関する相互認定会」の実施も予定しております。ぜひご参加ください!
<セミナープログラム>
https://unifiedsearch.jcdbizmatch.jp/nanotech2026/jp/sem/convertech
【会期】 2026 年1 月28 日(水)~30 日(金)10:00 00~17:00
【会場】 東京ビッグサイト西2ホール ( https://www.bigsight.jp/visitor/access/ )
【主催】 WELL BEING TECHNOLOGY 実行委員会
【入場料】 無料
【参加申込】 展示会HP よりお申込ください。
https://www.wt.cj-exhibition.com/index.html
展示会に関してのご相談は、下記お問い合わせ先までご連絡ください。
【お問い合わせ】 WELL BEING TECHNOLOGY 事務局( JTB コミュニケーションデザイン内)
wt@jtbcom.co.jp