2026年3月19日、笹川スポーツ財団が、「スポーツ白書2026」を刊行した。「スポーツ白書」は、わが国におけるスポーツの現状を調査・データに基づき客観的に分析し、未来への指針を提示することを目的としている。スポーツ庁の設置から10年が経過し、スポーツ基本法が初めて大幅に改正された2025年。今号では、政策的転換点における日本スポーツ界の現在地を俯瞰することに主眼を置き、スポーツ政策、スポーツ財源、子どものスポーツなど11章で構成されている。

スポーツが社会に対して担うべき責任その実効性をいかに確保するのか

2026年版では、巻頭企画で、河合純一スポーツ庁長官、朝日健太郎参議院議員を招き、「改正スポーツ基本法が導く新たなスポーツの姿」をテーマに、座談会を行い、本書に載録している。

競技力向上を中心としてきたスポーツ政策は、地域活性化や健康増進、共生社会の実現へとその対象領域を広げているが、直ちに社会的価値の創出に結びつくわけではない。現場での取り組みが積み重ねられる一方で、少子高齢化や地域格差といった構造的課題は依然として残る。

本座談会では、改正スポーツ基本法を手がかりに、スポーツが社会に対して担うべき責任と、その実効性をいかに確保するのかが議論された。

河合純一氏(スポーツ庁長官)※中央
朝日 健太郎氏(参議院議員/笹川スポー ツ財団 理事)※右
司会・進行:渡邉一利(笹川スポーツ財団 理事長)※左

スポーツ庁創設がスポーツ予算の増額を加速

わが国のスポーツ振興を所管してきた文部科学省スポーツ・青少年局およびスポーツ庁の予算の推移が、図表である。2002年度に122億3,881万3,000円であったスポーツ予算は、2009年度には225億2,934万4,000円と200億円を超える額となった。

◆図表 文部科学省およびスポーツ庁におけるスポーツ予算の推移

その後は再び微増で推移していたが、2013年9月に決定した東京2020大会の開催を背景に、2015年度には289億7,625万4,000円に増加した。2016年度は初めて300億円を突破し、スポーツ庁の創設がスポーツ予算の増額を加速させたといえる。2017年度からは第2期「スポーツ基本計画」における政策目標の達成を目指し、国際大会に向けた競技力向上に関連する事業への継続的な増額のほか、スポーツを通じた社会課題の解決に資する施策を展開したため、2019年度以降は350億円を超える予算となっている。

フィットネス事業者が、これから目指すべき戦略的な方向性を示唆

副題に「スポーツの新たな価値創造への挑戦」とある通り、新たな価値を創造すべく、その可能性を、全11章で探っている。各章は、スポーツ政策、スポーツ財源、スポーツ参加、スポーツと健康増進、子どものスポーツ、障害者スポーツ、スポーツ産業振興、スポーツと地方創生、スポーツ人材、ハイパフォーマンススポーツ、スポーツ・インテグリティで構成されている。

民間フィットネスクラブの動向については、第7章スポーツ産業振興において、詳述されている。

本誌編集部が発行する「日本のクラブ業界のトレンド2024」のデータをもとに、コロナ後、再生~成長してきたフィットネス業界の推移と現状を示したうえで、「フィットネスビジネスの新たな動向」として、(1)フィットネスからウェルネスへのシフト、(2)新業態・新サービスの開発と展開、(3)未顧客、ビギナー・ライトユーザー層の課題に対応したマーケティング、(4)直営店以外の付属的な事業への参入、(5)AIなどデジタルテクノロジーによる生産性の向上の5つについて解説するなかで、事業者らが今後、自社が対象とする顧客を明らかにして、そうした顧客が抱える「快」や「不」に対応したマーケティングやイノベーションにいかに取り組んでいくとよいか、ヒントが得られやすいようにしている。

確実に事業を成長させたい民間フィットネス事業者にとって、有益な白書となろう。