今後、健康産業は成長していくのだろうか。また、成長させるためには何が必要なのだろうか。そして、前途有為な学生にとって、健康産業の現場が魅力的であるためには、健康産業はどのようにあるべきなのだろうか。本稿では、健康やスポーツの教育者に、健康産業の可能性とそこで健康産業がすべきことを訊く。第34回目は、川崎市立看護短期大学 西端泉氏。
運動の重要性を義務教育で伝える
西端氏は、フィットネスクラブなど民間の施設が生活者に1から運動方法などを教えるのではなく、そもそも、生活者が自分自身で健康を築いていけるような社会になることが望ましいと語る。そのうえで、あくまで「サポート」をするのが事業者だ。まず確認事項として、身体活動の増加は、免疫機能を高め、感染症予防に役立つことや、感染した際に重症化しやすい基礎疾患(高血圧、糖尿病、心臓病)を予防したり、改善したりする効果も期待できるというエビデンスを挙げる。
これらは事業者であれば既知であろう。しかし、生活者は充分に理解しているだろうか。その背景として、西端氏は「国がそのようなことをほぼ言及していない」としている。
さらに、運動の重要性の認知について、厚生労働省が、テレビニュースや新聞に情報を出すこともひとつだと提案している。
もちろん、国側は運動の重要性を認識していないとは限らない。なぜなら、「健康づくりのための身体活動基準(厚生労働省)」や「健康日本21(第二次)(厚生労働省)」なども出されているからだ。しかし、生活者には深く響いていないことに目を向ける必要があるのではないだろうか。
加えて、西端氏は運動の位置づけを掘り下げ、「一般人の間では、『病気にかかった際は安静にする』という概念が強く、『悪化を予防したり改善したりするために運動する』認識がないのではないか」と言及する。「義務教育でも、健康づくり運動の価値や実際の運動方法・知識をあまり教わっていないことがその原因として考えられるのではないでしょうか。例えば、小中高の体育の授業では野球やバスケットボール、サッカーなどのスポーツが教材となっています。健康のための運動が中心ではありません。身体を動かすことが得意な学生は積極的に授業に参加していきますが、苦手な学生はどんどん離れていき、むしろ嫌いになっていきます」
つまり、生活者があまり運動の重要性を認識していない理由として、義務教育の内容からき