問われる、経営の責任

主要な報道機関が伝えているので、既知のフィットネス関係者がほとんどだろうが、この間に複数のスイミングクラブで指導員が3歳女児や小学生女児にわいせつ行為をしたり、監視態勢の緩みから5歳男児を溺死させたりといった事件が重なって起きた。いずれも経営者の責任は、免れない。当該クラブの経営者は、関係者に速やかに、そして深くお詫びするとともに、改めて同様の犯罪や事故が起こらないように、対策を急ぐとともに、自ら社会に対して情報を開示していくことを求めたい。

安全・安心は最優先事項、経営者はそこに責任をもて

「4月13日、警視庁に逮捕されたのは、当該クラブで水泳指導員を務めていた、大学生のX容疑者(20)だ。同容疑者はクラブ内の女子トイレの個室に女児のAちゃんを連れ込んで、わいせつ行為をはたらいたとみられている」。

ニュースは、こう報じた。

刑法上、13歳未満の児童とのわいせつ行為には同意の有無に関係なく「強制わいせつ罪」が成立する。だが、当該報道機関がこのクラブに取材を申し込んだが、経営者が、顔を出すことなく、同社の広報担当はまるで他人事のように、次のように答えたという。

「Xが逮捕されたことは知りません。詳細を把握していないので、何も申し上げることはありません。ただ、警察の捜査には協力します。Xが当クラブで働いていたかは、個人情報なので教えられません」

同社は、本件について、本記事の執筆時点では、ホームページにも何のコメントも掲載していない。経営者や先の広報担当は、わいせつ行為を受けた3歳女児とご両親の思いをそれぞれの立場で想像しただろうか?

また、別のスイミングクラブでも、男性指導員が小学女児の教え子に水中でわいせつな行為をした疑いで逮捕されたことが、報じられた。

同スイミングクラブを運営する会社は、逮捕されたと報じられたことを受け、2023年4月19日に公式サイト上に「弊社従業員不祥事のお詫び」と題した文書を掲載。「皆様に大変なご迷惑と心配をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます」と謝罪した。さらに、同社は「この度のことは、皆様の信頼を著しく失墜させる極めて許し難い行為であります」と受け止め、「確認された事実に基づいて、厳正に対処、処分して参りますとともに、服務規程の確保および、コンプライアンス意識を徹底し、皆様の期待に応えられるよう誠心誠意努めて参ります」と今後の対応を伝えた。

さらに、また別のフィットネスクラブでは、スイミングスクールに参加していた5歳の男の子がプールの底に沈んでいる状態で見つかり、病院に運ばれた。しかし、死亡が確認された。4月23日に施設側が取材に応じ「溺れるとは思っていなかった」と監視態勢が不十分だったことを明らかにした。亡くなったのは、5歳男児。この男児は施設が運営するスイミングスクールに1年ほど前から週1回のペースで通っていて、この日は同男児のほかに18人の小中学生が参加していた。生徒らは午後4時から45分間ほど指導を受けたあと、残り15分間がプール内を自由に泳げる「遊び時間」となっていて、同男児はプールに飛び込んだ際におぼれたとみられている。飛び込もうとした場所には、身長が低い児童のための縦1メートル、横2メートル、高さ60センチの台が設置されていたが、その台にはすでに2人ほどの生徒が乗って遊んでいたため、その台にこの男児が乗ろうとプールに飛び込んだときに足を滑らせて沈んでしまったと推察されている。

この日の監視態勢について施設側は、19人の生徒に対し3人の大人のコーチをあてて、プール内やプールサイドから監視していたが、同男児が沈んだことに誰も気づかなかったという。同男児は、まだ泳ぎが得意ではなかったため、プールに入るときには、ヘルパーと呼ばれる直径20センチほどの浮き具を2つ身に着けるように施設側が管理していた。しかし、引き上げられた際にヘルパーは腰から外れた状態になっていた。施設側は、飛び込んだ際に外れてしまったのではないかとみている。

運営会社の経営者は、取材に対し「(この男児が)まだ泳ぎが得意ではない」として特に注意して監視を行っていたものの「溺れることはない」との認識から、監視態勢が十分でなかったとの反省を明らかにしている。

この間に重なって起きたスイミングクラブでの犯罪と死亡事故であるが、これだけあったということは、これら以外にも複数の犯罪や事件、あるいはそれに近いヒヤリハットがあったのではないかとも考えられる。安全性は何を置いても最優先させなければならない。コロナ禍でコストを抑えなければいけない事情からこうした犯罪や事故を起こさないようにするための対応ができなかったなどという理由は通らない。こうした対応は、経営者の責任である。逃げてはいけない。当該クラブの経営者は、もちろんのこと、既存のフィットネスクラブ、スイミングクラブを運営する会社の経営者も含めて、改めて運営体制を見直し、同様な犯罪や事故が起きないように整えるべきだろう。並んで、犯罪や事故を起こした会社の経営者は、お子さまやご両親、そのほかの関係者の方々も含めて、継続して誠実で真摯な対応をしていくことが求められよう。