企画段階から本件にプロジェクトマネジャーとして関わる株式会社エイム常務取締役開発本部長坂本啓太氏に、開発の経緯や事業スキームなどについて話を訊いた。

  • 株式会社エイム
    常務取締役 開発本部長
    坂本啓太氏
     

全国初の「仮指定管理者」として企画から関与

石川県金沢市の北側に位置する同市のベッドタウン津幡町。とはいえ、人口は3.8万人と少ない。今から20年前、市長の代で言えば、現在の市長を含め3代前の町長の時代から、町民がずっとプールの設置を要望していたという。長年、民間のフィットネス事業者に出店依頼もしていたが、叶わなかった。だが、ようやく2023年4月末、「アザレア」と名付けられた待望のプールが、同町の住吉公園内に完成することになった(写真)。

◆写真

敷地面積3,942.25㎡、延床面積3,373.84㎡で、25m×5コースのメインプールと25m×3コースの多目的プールに、幼児プール、ジャグジー、温浴スパ(サウナ完備)、トレーニングルーム、スタジオ(兼HOTスタジオ)、ロッカールームといったアイテム構成。

総工費は約14億円(備品の購入費や開業費は別途。また、トレーニングマシンをエイムが同町に寄贈)。隣接する公園工事および運動場やソフトボール場の整備に関わる費用も含めると約17億円である。当初は、民間の資金等を活用するPFIのスキームでも検討されていたが、町が国と補助金等の交渉をするなかで、指定管理のスキームでも実現できることになった。

それも、単なる指定管理ではなく、こうしたフィットネス施設の開発・運営に関わるリソースを十分に備えた民間フィットネス事業者である株式会社エイム(以下、エイム)が、基本設計の段階から「仮指定管理者」として、同プールの開発・運営をディレクションできる立場となり全国初の「仮指定管理者」となった。エイムの担当スタッフは、現場での定例の建設工程会議に参加して、津幡町、設計、建築、電気設備企業と協力しプロジェクトマネジメントに当たっている。

企画や設計の段階から、エイムがプロジェクトをマネジメントできることにより、こうした公的施設の建築でよくみられるムダな費用がどこかに流れることや、完成後に利用者や運営者が使いにくいといった問題からの再投資、さらにはランニングコスト・オペレーションの問題が解消される。

また、津幡町の設置目的を十分に満たしたうえで、効率的な開発・運営ができることにもつながる。また、このスキームであれば、エイムとしても、初期投資などの持ち出しが全くかからないことになる。

利害関係者の誰もが満足できる理想的なスキームといえる。

すでに好集客を実現 周辺の小・中学校の授業も受託

町からの公募に応じるかたちでのエイムによるプレゼンテーションは、2回あった。エイムが設計事務所を選定し、両社で企画と基本設計をプレゼンテーションし、その後、運営に当たる指定管理者を選定するためのプレゼンテーションをエイム単独で行った。

プールを含む同公園の役割としては、すべての町民が健康づくりをしようと思ったときに、あらゆることがワンストップでできる「ウェルネス・スポーツパーク」という位置づけにすることにした。施設では、初めてフィットネスをする方や介護予防を目的とした方、ひざ痛、腰痛、肩こりなどの身体機能的な障害を抱えた方などを利用者として想定したプログラムを週40本程度、スタジオやプールで提供する計画を持つ。

同施設は、一般ビジターでも利用できることにはなっているが、表に記した会員種別・料金システムで、フィットネス会員とジュニアスイミング会員(週1回・週2回)を2022年11月より会員募集を開始した。

目標として、開業時にフィットネス会員800名、ジュニアスイミング会員200名を集客する計画としていたが、2月1日現在で、目標比150%の集客となりすでに計画を大きく上回る好集客を実現している。

指定管理の期間は5年間。当初は10年間で検討していたが、実際に運営し収入、支出、指定管理料などが適切か判断するため5年間として、そこで改めて見直すことになっている。

◆図

また、エイムは同町にある11校の公立の小・中学校のスイミングの授業の受託をする予定となっている。

地域で実績があるフィットネス事業者―エイムは、直営8店舗に加え、同施設を含めた公的施設8軒の指定管理者となっている―が「仮指定管理者」となることで、利害関係者の誰もが満足できる理想的なスキーム(図)ができあがる。

このスキームが、今後も全国各地に拡がれば、各地の生活者の税金が無駄に使われることがなく、またフィットネス事業者も大いに、その地域の生活者の健康づくり、さらには地域社会や地域経済の活性化に寄与できることになろう。

料金表