今後、健康産業は成長していくのだろうか。また、成長するために何が重要になるのだろうか。そして、前途有為な学生がそこで活躍するために何が求められるだろうか。本稿では、健康やスポーツ、フィットネスの教育者に、健康産業の可能性と学生が活躍するためにフィットネスクラブ運営企業がするべきことを訊く。第39回は、慶應義塾大学の板垣氏に話を訊いた。
健康寿命の延伸が急務の課題である
大学で生涯スポーツや、ピラティスなどの授業を行う傍ら、港区の中高齢者を対象に健康教室なども行っている板垣氏。フィットネス業界に限らず、日本の健康産業全体の課題を「健康寿命の延伸」とし、次のように切り出した。
「様々なところで叫ばれていることですが、やはり、健康寿命の延伸が急務の課題であると思います。ここを改善することで、医療費の削減につなげることは、多くの意味で大切です」
厚生労働省(出典:厚生労働省令和3年簡易生命表の概要の概況)の報告によると、現在のわが国の平均寿命と健康寿命には、男性で8.79年、女性では12.19年の乖離がある。この期間、高齢者は入院や通院などを余儀なくされるため、医療費を含む社会保障費等が国の財源を圧迫していることは、周知の事実であろう。
この健康寿命の乖離を埋めるための改善方法として、健康意識を持たない人に、いかに健康意識を持たせ、行動を変えるかが重要であると言う。
「特に、若い世代の健康意識が低いことは課題です。若いうちは健康への不安が少ないので当然ですが、まずは外発的な動機付けでも良いので、意識を植え付けることが大切になります。海外の取り組みで、地下鉄乗り場にトレッドミルを置いて、規定時間運動をすると、乗車チケットをもらえるという取り組み事例があります。日本にもこういった取り組みがあっても良いのではないでしょうか」
内発的動機付けを高めるには自分の身体に目を向けること
多くのフィットネスクラブでも実践していることではあるが、健康行動や運動を開始させるためには、外発的な動機付けは常套手段である。しかし、「継続」を促す場合は、内発的な動機付けにシフトしていく必要があると板垣氏は説明する。
「私が、学生への授業でも、中高齢者へ