長年、海外のフィットネス・ビジネスに携わり、大学でも教鞭をとっている小倉乙春氏に、欧州フィットネス事情について語っていただく連載60回目。今回は、英国などのAIを利用したフィットネスクラブ運営ソリューションを提供するKeepme社に関して報告する。

1.Keepmeとは

英国のKeepme社はフィットネスクラブ業界向けのソリューションソフトウェアを提供しており、AIを利用し、会員数の増加、減少の削減、副次的な収益支出の増加を支援する最新技術を提供している。

Keepmeの顧客エンゲージメントとCRMプラットフォームは、フィットネス業界向けに特別に設計され、AIで、可能な限り分析と洞察を提供している。より良い意思決定を迅速に行うことができる。

創業者であるイアン・マレーン氏は、投資銀行でのキャリアと財務モデリングの経験を経て、2019年にフィットネス業界に参入した。現在、8カ国で大手フィットネスクラブ運営企業の複数施設やブティッククラブなどサービスを展開している。

Keepmeの価格は運営施設数に応じて異なり、1施設年間9,000米ドルから始まり、施設数により値引きされる。

2.フィットネスクラブとAI

マレーン氏著「未来のフィットネスクラブ:エンゲージメント」(2021)ではフィットネスクラブ産業とAIに関する考察を記しているが、著者なりに解釈すると以下の4つに要約される。

(1)健康行動プロセス提供の限界

消費者は、健康には多くの変数が関係し、最終的に自分の望む健康状態に近づけるのは、様々なことの組み合わせであり、ジムに通うことは全体の中の1つの行動に過ぎないということを知っている。フィットネスクラブ運営者は、顧客ジャーニーのすべてを提供する必要はないと認識すべきである。

(2)独自性:点と点を結ぶ

健康に関する顧客行動プロセスのどこかに注力することで、そのフィットネスクラブの独自性が生まれる。

例えば、NFLやNBAのアスリートたちは、洞察心拍変動(HRV)、安静時心拍数(RHR)、睡