2025年も終盤に差し掛かり、フィットネス市場のこの一年を振り返る時期となった。派手な話題は少なかったものの、利用者の行動や業態の選ばれ方には、小さく積み重なるような変化が確かに広がっていた。
こうした動きは、前年までに芽生えていた兆しが日常の中で形を整えた結果であり、生活の動線に近い領域から少しずつ市場の輪郭を変えていくものだったといえる。若年層・ミドル層・シニア層がそれぞれ異なる利用ペースを選び、業態を使い分ける姿は、利用目的の多様化と生活様式の細やかな変化を映し出している。
本連載では、こうした静かな変化を丁寧に追いながら、2025年の市場の現在地を描き、2026年へ続く視点を整理していく。初回となる今回は、利用者構造の変化という視点から、現状を読み解いていく。
第1章 利用者構造の変化
利用者構造の移り変わりは、業態の盛衰やサービスの受け止められ方よりも静かに、しかし確実に市場全体へ影響を及ぼしている。若年層・ミドル層・シニア層がそれぞれ異なる動線で施設を選び、利用目的に応じた"選び分け"が自然な行動として定着し始めた。
ここでは、その変化を三つの軸から整理し、背景にある生活文脈の変化と市場との接点を掘り下げていく。
1. 年代別に進む“利用先の分岐”
若年層、ミドル層、シニア層の動きは、これまで以上に明確に分かれ始めた。特にこの一年は、以下のような傾向が表れている。
● 若年層は 24時間ジム・専門型スタジオへ集中
● ミドル層は 総合型クラブへの安定的な回帰
● シニア層