新規入会の促進だけでなく、既存会員の継続率向上が求められるフィットネスクラブ経営において、「楽しさ」や「意味づけ」は重要なカギとなる。そうした中、テクノロジーと社会貢献を融合したTechnogymのグローバルキャンペーン「Let’s Move & Donate Food」が注目を集めた。株式会社フージャースウェルネス&スポーツの実践を通じ、その可能性を探る。
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株式会社フージャース ウェルネス&スポーツ 事業本部フィットネス事業統括室
ディレクター 佐藤 亜希子氏(右)
トムスポーツアカデミーGYM24 店長 宮﨑真幸氏(中)
マネージャー 小林汰雅氏(左)
運動を寄付に変える世界的挑戦

2026年3月10日から27日にかけて実施された「Let’s Move & Donate Food」は、Technogymが展開するグローバルキャンペーンである。
2014年より継続してきた「Let’s Move for a Better World」を基盤に、今回は国連世界食糧計画(WFP)とのパートナーシップのもと、運動量を寄付に変える新たな仕組みを打ち出した。Technogymの運動管理システム「Mywellness」を通じて記録される日々の運動は、「MOVE」という独自指標に換算され、2,000MOVEごとに学校給食1食分として寄付される。
ユーザーは日常のトレーニングや生活活動を通じて自然に社会貢献へ参加できる設計となっており、運動の意義を拡張する試みとして高く評価できる。今回のキャンペーンには、世界141カ国・地域から2,318施設、151,191人が参加。総MOVE数は過去を大きく上回り、日本国内でも186施設が参画し、48,665,343MOVEを収集、24,332食分の寄付につながった。
単なる短期的なイベントではなく、「運動の習慣化」「デジタル活用」「社会的価値創出」という3つの要素を同時に成立させた点において、フィットネス業界に新たな示唆をもたらしている。
社会貢献と顧客体験の両立
こうした取り組みに対し、日本国内で積極的に参画し成果を上げたのが株式会社フージャースウェルネス&スポーツである。
同社は「いい汗、健やか。こころ躍る。」をスローガンに掲げ、フィットネスのみならずスイミング、テニス、ゴルフ、バドミントン、体育スクールなど幅広い事業を展開し、子どもから高齢者まで多様な顧客層に心と身体の健康を提供している。
今回のキャンペーン参加について、同社の事業本部フィットネス事業統括室でディレクターを務める佐藤亜希子氏は、「アプリ利用率の向上と顧客のモチベーション喚起、そして社会貢献という新たな価値提供の実現」を主目的に挙げる。
実施にあたっては、Technogym App導入施設への個別フォローを行い、ポスターやホームページといった販促物の制作、SNSでの配信依頼など、全社的なプロモーション体制を構築。さらに2日に1回の頻度で、アプリ利用率やイベント参加人数、ランキング状況を施設へ共有するなど、継続的な情
報提供を徹底した。こうした細やかな運営により、現場のスタッフと会員双方の参加意識を高めることに成功している。その結果、同社全体のTechnogym Appの利用率は5%向上し、無料体験施策を通じた新規入会の獲得にも寄与した。
「社会貢献」という明確なテーマがスタッフ・会員双方の共感を呼び、イベントTシャツなど視覚的な仕掛けが認知拡大に貢献した点も見逃せない。佐藤氏は今後、今回の成果を一過性のものとせず、Technogym Appの利用率を現状からプラス8%、という目標を掲げ、アプリ内チャレンジ機能の活用などを通じて継続的な顧客体験の向上を図っていく考えを示した。

現場主導で生まれた高い熱量
今回の取り組みの中でも象徴的な成功事例となったのが、同社が運営するトムスポーツアカデミーGYM24である。同施設は、日本国内で最多となる2,050,897MOVEを収集し、1,025食分の寄付(株式会社フージャースウェルネス&スポーツが運営する7施設合計:4,119,490MOVE、2,059食分の寄付)を達成する。トムスポーツアカデミーの参加者数は215名にのぼり、施設全体での高いエンゲージメントが際立った。
店長の宮﨑真幸氏は、成功の要因として「館内における徹底した周知と、スタッフの主体的な関与」を挙げる。ポスターなどの掲示物強化に加え、カーディオマシンのディスプレイにイベント告知を表示するなど、あらゆる接点で情報を届ける工夫を実施した。また、スタジオインストラクターがレッスン前後にイベント参加を呼びかけることで、自然な導線で会員を巻き込んだと言えよう。
さらに、マネージャーの小林汰雅氏は、「SNSを週2回更新し、Instagramのストーリーで全国順位をリアルタイムに共有するなど、デジタルとリアルを融合した情報発信を展開しました」と話す。イベント期間中はスタッフが黄色のTシャツを着用し、ジムエリアのトレーニングやレッスンに参加することで、視覚的・心理的な一体感を醸成した。特に、スタッフ自らがランキング上位を目指して積極的に取り組んだ姿勢が、会員の競争心を刺激し、「スタッフには負けたくない」という感情を引き出した点は興味深い。
結果として、スタジオ中心だった会員がマシントレーニングにも取り組むようになるなど、利用行動の変化も生まれた。
TechnogymのMywellnessによる運動データの可視化は、個別最適なトレーニング提案を可能にし、イベント終了後も継続的な運動支援へとつながっている。
共感が生む行動変容と一体感

こうした現場の取り組みは、会員の声からもその価値が裏付けられる。
体力・体調維持のため利用している男性会員は「インストラクターの勧めとTシャツがきっかけで参加しましたが、個人ランキングがあることで想像以上にモチベーションが高まりました。普段以上に通うようになり、来館頻度が自然と増えた」と語る。明確な目標設定と可視化された成果が、行動変容を促した好例と言える。
日々スタジオレッスンに励む女性会員は「子どもたちに給食を届けられるという点に魅力を感じて参加しました。運動しながら社会貢献ができるだけでなく、『今日は何食分貢献できた』と会員同士で会話が生まれ、楽しさが倍増しました」と振り返る。
さらに、「イベントをきっかけにコミュニケーションが増えた」「また参加したい」といった声も多く聞かれ、施設内のコミュニティ形成にも寄与していることが分かる。単なるトレーニング機会の提供にとどまらず、共通の目的を通じて人と人をつなぐ価値が創出されている点は、今後のクラブ運営において重要な手がかりとなる。

運動の意味づけが経営を変える
今回の「Let’s Move & Donate Food」は、フィットネスクラブ経営における課題解決のヒントを多く内包した取り組みであった。
運動の継続を促すためには、単に設備やプログラムを充実させるだけでなく、「なぜ運動するのか」という意味づけが必要不可欠である。本キャンペーンは、デジタル技術による運動データの可視化と、社会貢献という明確な目的を組み合わせることで、会員の内発的動機を引き出し、結果として施設の活性化とビジネス成果の向上を同時に実現したのだ。
Technogymのソリューションは、単なるマシンサプライにとどまらず、こうした体験価値を設計・提供するプラットフォームとして機能している。会員一人ひとりの行動をデータで捉え、可視化し、共有することで、運動は「個人の行為」から「社会とつながる活動」へと進化する。
フィットネス事業者に求められるのは、この「価値転換」をいかに自施設の中で実装するかである。楽しさ、競争、共感、そして社会的意義を掛け合わせた本事例は、これからのクラブ運営の方向性を示す、実践的なモデルと言えるだろう。
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