「David Lloyd Clubs」は、英国および欧州で149店舗を展開するフィットネスクラブチェーンである。ジム、スタジオ、プール、ラケットスポーツ、スパなどを統合した独自のクラブ体験を提供し、会員数は約80万人を数える。
同社は約8年をかけて、総合クラブを「運動する場所」から「よりよく生きるための拠点」へと転換させ、会員数、定着率、顧客単価のいずれにおいても改善を実現してきた。
そのウェルネスシフトを推進してきた同社ウェルネス・スパコンセプト開発担当ステファニー・ホランド氏に、投資判断の基準から大規模投資を伴わない着手方法まで、日本のクラブが実践できる手法について話を聞いた。
プールサイドスペースの小さな発見から、全社の中核事業へ
同社のウェルネスシフトは、壮大な構想から始まったわけではなく、自社クラブの分析から得た1つの気づきからだ。プールサイドにサウナとリラクゼーションスペースを備えた施設を持つクラブのほうが、それを持たないクラブよりも業績が良いということだ。
この気づきを受け、当時のCEOで現会長のグレン・アーラム氏が検証を指示する。対象はグレーター・ロンドンと言われるM25環状高速道路圏内の2クラブ。あえて購買力の高い市場を選び、テニスコート2面分を、スパやリカバリー等のウェルネス施設へとリニューアルした。
注目したいのは、掲げたKPIが売上ではなく、財務指標に加え、退会率の低減、来館頻度の増加、会員単価の引き上げ等だ。同社には「月6回来館するメンバーは退会しない」という自社データがあり、来館目的の複線化そのものを定着策と位置づけていた。「今日はスパだけ使いに来る」という日があってよい、という発想である。
結果は想定の半分の期間で表れた。ROIは最大101%、会員1人あたりの平均単価は63%増。新しい施設を利用できる会員種別を新設し、既存メンバーは従来どおりの価格に据え置く一方、以降の入会者にこの会員種別を適用したことが単価上昇を牽引した。商圏も車で30分ほど拡大し、遠方からの入会が生まれた。
同社はこの成果を確認したうえで10クラブへの追加投資を決定。続いて英国北部のそれほど富裕ではない市や町でも検証した。結果は同水準のROIを実現。再現性を確認したうえで全社展開へ進んだ。現在は9カ国54拠点に広がり、新規出店には標準装備、既存クラブもスペースがあれば必ず導入する