先日、ヴィヴェック・マーシー氏の『孤独の本質 つながりの力(原題 Together)』を紹介した。
「孤独」について考えるなら、もう一冊あわせて読んでおきたい本がある。
ノリーナ・ハーツ著『The Lonely Century なぜ私たちは「孤独」なのか』(ダイヤモンド社)だ。
マーシー氏が公衆衛生の視点から孤独に向き合ったのに対して、ハーツ氏は資本主義のあり方や民主主義の危機まで射程に入れた、より構造的な議論を展開している。読み終えてあらためて感じたのは、本書はフィットネス・ウェルネス事業の存在意義そのものを再定義する示唆に富んでいる、ということだ。
今号では、本書の論旨を整理したうえで、私たちの業界がどう自らを変えていけるかを考えてみたい。
◆そもそも「孤独」とは何か ハーツの定義から
著者は、まず孤独の定義を問い直すところから始めている。
孤独は、『一人ぼっち』と同義ではない。人間は多くの人に囲まれていても、孤独を感じることがある。逆に、一人ぼっちでも、孤独でないことがある。一般に孤独の定義は狭すぎる。
そして、孤独をこう定義する。
孤独とは、愛や仲間や親密な人間関係が欠如した状態に限らない。また、日常的に交流する人に無視されているとか、相手の目に入っていないとか、大切にされていないという感覚だけでもない。一般市民や雇用主、地域社会、政府の支援やケアがないという感覚でもある。また、他人だけではなく自分自身からも切り離されている感覚や、政治的・経済的に排除されている感覚も含まれる。つまり、孤独とは人間の内面的な状態であると同時に、存在に関わる個人的、社会的、経済的、政治的な状態でもあるのだ。
この定義の射程の広さこそが、本書の特徴だ。孤独を個人の感情の問題としてではなく、政治・経済・社会の構造の問題として扱う。だから打ち手も、個人のメンタルケアにとどまらない。そういう構えで本書は書かれている。
◆ ハーツの主張、5つのポイント
(1)21世紀は「孤独の世紀」である
世界中で、人々は孤独で、周囲から切り離されて、孤立していると感じている。私たちは今、グローバルな孤独危機に見舞われている―そう著者は断じる。コンタクトレス化が進む買い物、スマ