ジムの経営をして儲かるのだろうか。
ジム経営で儲かるにはどうしたらいいのだろう。
実際に儲かっているジムの経営の具体例を知りたい。

新型コロナウイルスによってやや勢いは落ち着いているが、ジムの店舗数は10年以上右肩上がりが続いている。

大手フィットネスクラブが経営している場合もあれば、トレーナーやインストラクターが独立して経営していたり、異業種の企業が経営しだしたりと、その在り方は様々だ。

それだけ店舗数が増えているということは、ジム経営は儲かるのか?

10年間様々なフィットネスクラブを見てきていえることは、店舗によるということだ。では、その違いはどこにあるのか。

本記事は、フィットネス業界のビジネス状況をNN年以上追い続けてきた、フィットネスビジネス編集部がジム経営の収益について理想と現実についてまとめた。

 

ジム経営は儲かるのか?3つの視点で考察

一般的に「ジム」といわれるものは「フィットネスクラブ」「スポーツクラブ」と同義で、マシントレーニングをする「ジム」や大人数で一度にレッスンを行う「スタジオ」を含めたものとなる。

これらすべてについて、市場、ビジネスモデル、利益率の3つの視点で考察してみる。

1.市場の視点

2013年約4,200軒あったフィットネスクラブは、2018年には約5,800軒まで増えている。

特に顕著なのが、「エニタイムフィットネス」をはじめとした24時間営業のジムの増加だ。

ほかにも「カーブス」のような小型クラブや「b-monster」「サーフフィット」「フィールサイクル」など少し前に話題になった暗闇でエキサイティングに楽しむクラブも増えている。

また「RIZAP」のCMで話題になったパーソナルトレーニングジムも年々増加し、以前はごく一部の富裕層やアスリートが通う場所だったのが、一般のビジネスパーソンや主婦にも浸透している。

一方で、日本の人口に対する参加率は約4%、市場規模は約4,500億円と、国内産業のなかでは小さく、まだまだ成長の余地があるともいえるだろう。

東京オリンピックを控えていた2020年、ますます拡大傾向にあったはずの市場は新型コロナウイルスによりやや失速。

予定通りオープンしているジムも400軒近くある一方、閉鎖するジムも少なくない。ただ、健康志向は一層高まり、チャンスはかなり大きいだろう。

2.ビジネスモデルの視点

フィットネスクラブのビジネスモデルは、大きく分けると、ジム・スタジオ・プール(温浴施設)がそろった総合型クラブ、ジム・スタジオ型クラブ、小型ジム、スタジオの4つに分けられる。

いずれの業態も、月会費制を採用していることが多く、会費は3,000~30,000円程度と立地や施設、提供サービスによって幅広い。

パーソナルトレーニングジムや一部スタジオには都度払い制や回数券制を採用しているところもある。

提供サービスも様々で、24時間型ジムのようにマシンを置いてフリーで利用できるクラブ、ヨガ・ピラティススタジオのように大人数にレッスンを提供するクラブ、マンツーマンで行うパーソナルトレーニングジムなどがある。

それぞれターゲットも目的も異なるため、どれだけコンセプトを明確に、ターゲットに適した立地で展開できるかがカギとなる。

3.利益率の視点

ジムをオープンするまでにかかるイニシャルコストは、物件取得費、工事費、機材費、システム費、販促費など。ランニングコストは家賃、人件費、水道光熱費だ。

イニシャルコストにおいては、工事費、機材費などは取得する物件の状態によって大きく異なる。

例えば、ほかのジムが撤退した跡地につくるのであれば、内装や外観にこだわらなければ工事費が不要なこともあるし、マシンを置かない自重トレーニングをメインにしたジムであれば機材費も数万円程度に抑えることが可能だ。

また、システム費も安価で顧客管理から集金までできるシステムもあり、販促費などは知識があればほとんど費用をかけずに済むこともある。

ランニングコストで大きいのは、家賃と人件費だ。立地はジム経営が成功する大きな要因のひとつだが、当然ながら立地がよければよいほど家賃負担は大きい。

ビジネスパーソンをターゲットとしたジムの場合、駅近であることは重要だが、主婦や高齢者、子どもがターゲットであれば住宅地で何ら問題ない。

また、新型コロナウイルス禍によって都心に人が集まらなくなっており、今後もリモートワークが増えればこの流れが続く可能性は高い。

そして立地以上に顧客の継続率を左右するのが人材であり、人件費をどれだけかけるかはサービスの質と相関するといえるだろう。

自身がフリーのトレーナーやインストラクターで、自分1人ですべての運営を担うのであれば、自身が食べていければよいというのもひとつの考え方だ。

他人を雇用する場合、その形態や給与は経営者の求めるクオリティによってまったく異なる。

水道光熱費はプールや温浴施設付きの総合クラブの場合、支出のなかの大きな割合を占めるが、小型クラブのなかにはプールや温浴施設はもちろんシャワーもないジムも多く、一般家庭と同程度で抑えることもできる。

一方、収入となるのは、基本的には会員からの月会費または利用料で、これが全収入の7~8割を占めるクラブが大半だ。

そのほかの売り上げとして、プロテインをはじめとした飲食物やオリジナルウエア、トレーニンググッズなどの物販、エステなどのリラクゼーションサービスなどがある。

 

儲かるジムを経営するための3つのポイント

儲かるジムの経営者にもっとも必要なものは情熱だ。どんな人にどんなサービスを提供して、どんな悩みを解決したいか。

その思いが強く明確であるほど、成功するといえるだろう。だからといって、情熱だけで成功できるわけではない。必要な能力、資格、経験はなんだろうか。

1.能力

自分が直接指導するのであれば、当然ながら指導力が必要となる。

身体やトレーニングの知識はもちろんのこと、顧客の悩みを聞き出すヒアリング能力、心地よく続けてもらうためのコミュニケーション能力は必須だ。

加えて、経営するためにはマネジメント能力も必要だ。収支・施設・人材の管理などができなければ、いくら指導力が優れていても経営は厳しいだろう。

2.資格

実はジムの経営をするために特別な資格は必要ない。自身が「トレーナー」と名乗れば、営業できてしまう。

病院や介護施設などからも信頼のある「健康運動指導士」や、厚生労働省も認める「フィットネスクラブ・マネジメント技能検定」、アメリカでは国家資格となっている「NATA-ACT」のほか、NESTA、JATI、NSCAなどをはじめ、様々な企業や団体がフィットネス関連の資格を発行している。

資格による集客への影響はそれほどないことが大半だが、自身が提供したいサービスに適した資格の内容を学ぶことで知識を体系化できるだろう。

3.経験

なかには体育大学やスポーツ系の専門学校を卒業してすぐにジムの経営をはじめるトレーナーもいるが、社会常識を身に付けるためにもあまりおすすめしない。

大手フィットネスクラブや自身の目指す像に近いジムなど、研修体制が整った企業で、トレーニングや接客の基本、運営、マネジメントについて学び、準備ができてからの独立が望ましい。

 
 

儲かっているジム3つの事例紹介

ここまで、ジム経営が儲かるのか、儲かるようになるためにどういうポイントを抑えるべきなのかを解説した。

ここでは、実際に儲かっているジムのケースを3店舗、紹介していきたい。

1.セミパーソナルジム(東京都)

立地:東京23区内 地下鉄駅徒歩5分の居住地

施設:約65坪 ストレングスマシン、フリーウエイト、カーディオマシン、ファンクショナルトレーニングスペース

料金:月8回19,000円の月会費制

ターゲット:近隣の居住者、30~40代女性

業態:トレーナー1人で顧客5名それぞれ別のトレーニング指導するセミパーソナルジム

初期費用:約1,200万円

損益分岐会員数:約100名

2.スクール制クラブ(神奈川県)

立地:神奈川県 JR駅徒歩1分。後背地に居住地がある

施設:約50坪 ストレッチマシン、ストレングスマシン、トレーニングギア

料金:9,000円の月会費制

ターゲット:近隣の居住者、50~70代女性

業態:トレーナー1人で顧客10名に決まったトレーニングを提供するスクール制クラブ

初期費用:約1,500万円

損益分岐会員数:約150名

3.パーソナルトレーニングジム(大阪府)

立地:大阪市内 JR駅徒歩7分、地下鉄徒歩5分 都心立地

施設:約30坪 VRスタジオ、ファンクショナルトレーニングジム

料金:月4回28,000円、月8回38,000円などの月会費または都度払い制

ターゲット:20~40代、ビジネスパーソン

業態:パーソナルトレーニングまたはVRレッスン

初期費用:約300万円

損益分岐会員数:約30名

それぞれのジムによって状況が違うが、自社にあったものを参考にしてみて欲しい。

まとめ

ジム経営で儲かるためには、まずコンセプトとターゲットを明確にして、ビジネスモデルを決めるところから始まる。

そしてそのコンセプトとターゲットに適した、立地・施設・料金に設定できるかどうかがカギとなる。

ただ、ここで例をあげた成功クラブの経営者は儲けるために開業したのではなく、多くの人を健康にしたい、楽しく運動を続けてほしいという思いで経営している。

その誠実で熱い思いこそがジム経営を成功に導いているのではないだろうか。