6月から全国的にフィットネスクラブが営業を再開した。営業再開にあたっては、日本フィットネス産業協会が制定した「フィットネス関連施設における新型コロナウイルス対策ガイドライン」(以下、FIAガイドラインという)とともにロビー活動が行われた末、早い段階での営業再開が実現した。こうした経緯から、特に社会的なプレゼンスの高い大手チェーンでは特に、このガイドラインの遵守が求められ、その対応により新たな課題が出てきている。本記事では、その現状を共有するとともに、課題解決に向けたヒントを探る。

アフターコロナに向けての、大手フィットネスクラブの主な対応

大手チェーンにおいては、FIAガイドラインを遵守したうえで、6月から営業を再開したところが大多数となっている。営業再開に向けて準備が必要だった項目としては主に下記が挙げられ、各社、営業自粛期間中に準備が進められた。

フロントおよび全館

  • スタッフのマスクおよびマウスカバーの手配と徹底
  • 入館時の体温チェック設備の導入
  • フロントの飛沫感染防止用のアクリル板、または透明シートの設置
  • エントランスおよび各エリアに消毒液の設置

ジム

  • マシンジムの有酸素マシン間などに飛沫感染防止のパーテーション、または透明シートの設置
  • マシン利用前後の消毒用、消毒液や使い捨てペーパー、ごみ箱などの設置
  • ランニングマシンの速度制限

スタジオ

  • ソーシャルディスタンスの確保のための、立位置(または動く範囲)のマーキング
  • 換気量の確保(1時間あたりの空気の入れ替え回数3回以上)のための設備増強、抗菌フィルターの設置など
  • 定員制限と、予約システムや整理券の準備
  • レッスン時間短縮およびレッスン間の間隔を確保するための、スケジュール調整
  • 飛沫感染防止のための、グループ指導ガイドラインの策定(マスク着用、対面指導はしない、かけ声はかけない、ハイタッチしない、など)

アフターコロナの、大手フィットネスクラブにおける課題と対応

営業再開後のクラブ運営では、新たな課題が出てきている。各エリアでの課題と対応について、ルネサンス、オアシス、メガロス3社に取材にご協力いただき、現状を共有いただいた。本記事では、「フロントおよび全館に関する課題と対応」について言及していく。本記事を閲読後は、「大手クラブにおけるアフターコロナのフィットネス② ジムにおける課題」・「大手クラブにおけるアフターコロナのフィットネス③ スタジオにおける課題」も、合わせて参考にしていただきたい。

フロントおよび全館に関する課題と対応

休会対応と復会促進

フロント周りの課題としては、まず特別休会制度の手続き対応が挙げられた。

ルネサンスでは、当初受付を本社でサポートしようと検討を行ったが、プライベートロッカーに置いてある荷物のことをはじめ、休会するにあたって店舗での対応が必要となる問い合わせが多く寄せられると予想し、各店舗での受付とした。休会は日割りでできることとし、通常の休会制度は2ヶ月までだが、特別休会制度として休会延長の希望があれば6ヶ月まで延長を可能とした。休会の申し込みや延長は、電話で受け付けており、フロントスタッフの業務負担が増えている。 

オアシスでは、3月から特別休会制度を導入し、無料で7月末まで休会できることとした。また、休業期間中は特別休会の手続きを来館せずに承れるよう、オンラインでの受付で対応した。営業再開後は、各店のホームページに館内の混雑状況が確認できる機能を付加して、安心して来館できることに配慮したり、メンバー向けのアプリ「OASIS LINK」を使用したメッセージ送信などを定期的に行ったりして、8月からの復会を後押しするように取り組んでいる。

メガロスでは、緊急事態宣言を受けた休業期間中は休会無料(会費無料)として、その期間はウェブと電話(期間限定)で受付を行ったが、データ入力の一部を店舗スタッフが担当しており業務負担が増加、全体の実態把握に時間を要してしまったという。現在、休会会員を対象に早期の復会を促すべく手紙やメール、電話でフォローを継続的に実施。退会者においては休会者と同内容のフォローを実施するとともに、電話や対面での説明の際は館内の感染予防対策の実施内容を説明し、お客様が安心して施設利用が出来ることを伝え続けている。7月に入り、来館数も徐々にではあるが回復してきている中、東京都での感染者がふたたび連日100人を超えていることで、余談を許さない状況が続いている。

『フィットネスビジネス』誌編集部が独自に進めたフィットネスクラブ運営企業へのヒアリングによると、大手クラブの6月末の利用者数は、2月末と比べおよそ7割程度戻ってきている。休会者数は、6月末時点で、2月末の在籍会員数に対しておよそ3~5割が休会中。休会を続ける人は、主にスタジオを利用していた中高齢女性が多く、このうち1~3割が退会するのではないかと予想されている。

小規模24時間ジムでは、休業期間中に5~6割が退会または休会しているが、7月以降は2月末時点の在籍会員数の7~8割に戻ることが予想されている。ジム利用者の多い施設は、戻りが早い傾向が見られるようだ。

同誌編集長の古屋は「休業前、および休業期間中にお客さまとのエンゲージメントを育む取り組みをしていたクラブは、お客さまの戻りが早く、また復会する割合も高い」と指摘する。例えば、休業前からデジタルテクノロジーを活用するなどして効率性を担保しながらお客さま一人ひとりに最適化した価値を届けようとカスタマージャーニーの改善に努めたり、休業期間中にも、お客さまのご自宅を一軒一軒訪問し、近距離での面会は避けるものの、ドアコールでメンバーの様子をうかがい、自宅でできる簡単な運動の方法などを記したパンフレットを届ける取り組みをしていたクラブもある。

オンラインなどで、クラブ外での活動もシームレスにモニタリングし、活動的な生活が継続できるサポートを提供していたクラブでは、休業期間中もスタッフがリモートでお客さまとのコミュニケーションを維持することもでき、休業の影響をあまり受けなかったというクラブもある。

古屋編集長は今後の運営について「業績へのコロナの影響は確かに大きいが、すべてをコロナの影響と考えるのは間違い。これを機会にコロナ前の運営の過不足を調整して健全化しようとすることが大事だ」とも述べている。

感染防止と体験価値の両立

クラブの営業が再開し、現場での課題は増える一方にある。いち早くクラブ利用を復活してくださっているメンバーには、安全に、よりよい体験価値を提供したいものの、感染予防のためのFIAガイドラインに沿いながらの運営は、フィットネスクラブの体験価値の源泉であるコミュニケーションによるモチベーションサポートや、確かな運動効果を提供することを難しくさせている。指導現場では、これをいかに両立させるかの試行錯誤が続いている。

一方で、休会や退会を選んだメンバー、および新入会者へのマーケティングについては、引き続き、フィットネスクラブが安全に配慮していることを訴求し、生活者本人はもとより、家族などにも理解を促せる情報提供が必要となる。そのうえで、オンラインサービスも融合させた新たな体験価値の創造にも迫られている。

今回の外出自粛期間中に、社会的にもデジタルトランスフォーメーションが進み、オンラインでのフィットネスサービスもいっきにレッドオーシャン化しつつある。リアルの現場を持つフィットネスクラブならではのデジタルトランスフォーメーションを進めることも喫緊の課題となっている。