2022年4月1日、コナミスポーツクラブ本店の運動塾に、スマートスイミングレッスンが導入された。スマートスイミングレッスンは、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社が提供するスイミングスクール向けICTソリューションで、子どもはレッスン中、泳いだ直後に自分の映像を確認することができ、また進級テストの映像は保護者も観ることができる。これにより、これまで以上に子どもが上達を実感でき、モチベーション向上に寄与している。
紙のノートをデジタル化
コナミスポーツクラブは、子ども向けスクールである「運動塾」を全国に展開している。運動塾スイミングスクールでは、DXを推進するねらいで、「運動塾デジタルノート(以下、デジタルノート)」が導入された。デジタルノートは、従来の紙の「すいすいステップノート」で行っていた級の目標管理などをデジタル化したツールで、スマホやタブレットで使用できるシステムだ。
デジタルノートでは、子どもが泳いでいる姿を映像で確認できる。レッスンでは、コーチがタブレットを使用し、まずお手本映像を見せる。その後、子どもは泳ぎ終わると、タブレットで、自分の泳ぎを客観的に確認する。
コーチにとっては、プールサイドで紙が濡れる心配もなく、泳ぎを見せながら口頭で説明することができる。映像は、保護者もアプリから確認できる。
この水中映像の撮影や、泳いだ直後に映像を確認できるICTソリューションが、スマートスイミングレッスンである。
スマートスイミングレッスンを可能にする技術力
スマートスイミングレッスンは、ソニーネットワークコミュニケーションズが開発した。同社は、光回線で知られるNUROやSo-netを主力の事業とし、法人顧客向けIoT事業なども手掛ける。法人向けスポーツソリューションでは、スマートスイミングレッスンの展開をスポーツエンターテイメント事業の主力に位置付け、2022年3月時点で全国約80施設に導入している。
スマートスイミングレッスンのすごさはその技術力にある。
例えば、通常、室内プールでの撮影は、高温多湿で電子機器には厳しい。しかし、スマートスイミングレッスンで使用されるソニー製の4Kカメラは、専用設計されたハウジングでカメラを保護しているため、その過酷な環境に耐えられる設計となっている。
また、波が起きたり、光が反射したりなど水面の画像認識は難易度が高いといわれるなか、スマートスイミングレッスンでは、独自開発のAIアルゴリズムにより、対象の人物を追従し複数のカメラから最適なアングルを組み合わせた動画の自動編集を可能にしている。もし、これをコーチが現場で撮影し手作業で編集しようとするなら、非現実的だ。
また、進級テスト映像は、対象レーン以外にモザイクがかかる仕様になっており、プライバシーに配慮した仕組みだ。
子どももコーチも取り組み意欲向上
子どもにとって、保護者に自分の映像を観てもらえることは、やりがいにもつながる。コミュニケーションが増えるきっかけにもなり、保護者からは、「子どもの取り組み姿勢が向上した」「スイミングへの意欲が変わった」など高評価を得ている。さらに、子どものレッスン中の様子がそのままわかるだけでなく、泳いでいるときの表情も見られるため、観覧人数の制限下でも観覧席さながらのレッスン見学ができる。しかも、映像は保護者の専用ページでいつでも閲覧可能なため、例えば帰省した際に祖父母などにも共有することが可能だ。
コーチからは、「指導に対する意識が変わる」という声がある。事例として、これまでコーチが子どもに指摘しても改善されなかったフォームなどが改善された。その効果として、レッスンの指導効率が向上し、子どもの成長スピードも早くなる。また、保護者に動画が届くという良い緊張感は、レッスン品質にモチベーションがわくという声もある。
もともとスイミングから事業を始めたコナミスポーツクラブでは、段階別指導において「ほめる型指導」を行う。子どもがチャレンジしたことをコーチが「称賛」し、子ども自身ができたと「感激」し、子どもの「意欲」を引き出し挑戦するという3つをサイクルとしてまわし、成長をサポートしている。これまでは、コーチの「称賛」や進級テストの合格が成長の判断軸となっていたが、スマートスイミングレッスンにより「感激」「意欲」がサポートされ、泳ぎの技術も向上する。子どもは、進級テストにも積極的に取り組むことができる。
活用の幅、広がる
スマートスイミングレッスンは、コナミスポーツクラブにおいて、2023年3月末までに約100店舗に順次導入される予定。
コナミスポーツクラブでは、水泳以外のスクールでも水平展開を狙う。また、将来的には自治体や学校と連携し、学校における水泳授業での活用も見据えている。
スマートスイミングレッスンは、コナミスポーツクラブへの導入により、180にまで導入施設が増える見込み。ソニーネットワークコミュニケーションズは、センシング技術を活かしたICTソリューションを他にテニス、ゴルフでも展開している。