大阪ガス株式会社(代表取締役社長:藤原正隆、以下「大阪ガス」)と、センコーグル-プホールディングス株式会社(代表取締役社長:福田泰久、以下「センコー」)は、大阪ガスの100%子会社である株式会社オージースポーツ(代表取締役社長:加藤浩嗣、以下「OGスポーツ」)の全株式を、センコーに2022年7月1日付で譲渡することで合意した。日立製作所傘下の日立リアルエステートパートナーズが、フィットネス・フットサル事業を山新に売却、ブリヂストンも、ブリヂストンスポーツアリーナをナガセに売却などの動きもあり、今後、フィットネス業界で、さらに大きなM&Aや資本提携へとつながり、集約が進む可能性もある。
センコー、物流事業に加えライフサポート事業を拡大へ
大阪ガスと、センコーは、大阪ガスの100%子会社であるOGスポーツの全株式を、センコーに2022年7月1日付で譲渡することで合意した。
OGスポーツは、1981年の設立以降、「コ・ス・パ」「FITBASE24」「30peak」といったブランド名での直営フィットネスクラブ・スイミングスクール・テニスクラブ、行政等から受託している運動施設等、2022年4月現在で関西圏を中心に62施設を運営するとともに、ヘルスケア関連事業を展開し、フィットネスやスポーツ、ヘルスケアに関わるサービスの提供を通じて、多くのユーザーの豊かなライフスタイルづくりに貢献してきた。
センコーは、大阪を発祥とする国内物流最大手グループの一つで、物流事業に加えて「健康」「生活」「食」をテーマとしたライフサポート事業の拡大を図ってきている。具体的には、介護や老人ホーム、保育、家事代行、外食など生活関連サービスを提供しており、100%子会社である株式会社ブルーアースジャパンは、フィットネス事業を運営し、現在、山梨や東京で20施設を展開している。
大阪ガスは「Daigasグループ中期経営計画2023」に基づいた事業ポートフォリオの見直しを進めるなか、OGスポーツの新たな成長を実現させるためには、ライフサポート事業に意欲的に取り組み、フィットネス分野でも実績のあるセンコーの全面的な支援の下で運営することが最適と判断した。
センコーは、OGスポーツのグループ入りによって、フィットネス事業のエリア拡大や、介護事業と連携した新サービスの開発など、健康を領域とする事業を拡充することができ、人々の生活を支援するライフサポート事業の成長をさらに促進していく予定だ。
OGスポーツは、センコーのライフサポート事業の中核の一つとして、センコーの経営資源やノウハウを活用することで、さらなる成長を目指す。
ベンチャー企業がフィットネス事業者を今後もM&Aしていく可能性は大きい
これまで当業界の大型M&Aと言えば、ピープルのコナミによる買収、ティップネスの日本テレビによる買収などが挙げられるが、コロナ禍やデジタル化などの外部環境の変化やそれに伴う生活者の価値観の変化、さらにはニーズの多様化といった変化に対応すべく親会社が、本業を中心に事業ポートフォリオをスピーディーに見直す傾向が強まっている。日本でもかつてと比べてM&Aや資本提携が普及してきていることからも、これまで以上に大手資本を親会社にもつ既存フィットネス事業者は、フィットネスやヘルスケア関連の事業に関心をもつ企業から、仲介会社を通して声を掛けられる機会が多くなっていくのではないか。
今回のセンコーのように、コロナ禍やデジタル化を背景に本業が好調な起業家精神を備えた企業が、フィットネスやヘルスケアのような今後、エッセンシャルでインフラの一つになるだろう事業に関心をもち、M&Aや資本提携をしたいと考えることは、今後も起こりえることだろう。
今から27年前のことになるが、フィットネス業界の総合業態モデルを構築し、フィットネス業界に多大な貢献をした株式会社フィットネスマネジメント代表取締役中嶋良一氏(故人)は、こう語っていた。
「中長期的には必ず起業家精神に溢れる強力なリーダーに率いられたベンチャー企業が登場してくるだろう。なぜならハイタッチや独創性を要求される運営能力や若手に生きがいを与え、その能力をフルに発揮させる労働環境をつくるのは大企業が最も苦手な分野だからである」
ローカルなサービス産業が成長していくために必要なのは、(1)起業家精神をもった経営者と共感を呼ぶパーパス(2)確かな事業ポートフォリオと各事業のビジネスモデル構築力(3)高いオペレーション力と組織力だろう。これらを備えたフィットネスやヘルスケア領域に関心をもつベンチャー企業が、今後、既存のフィットネス事業者をM&Aをする可能性は大きい。より大きな視点でみても、集約化が進むことは、よいことだろう。
M&A自体は、まだ欧米に比べ日本ではなじみが薄いのかもしれないが、ベンチャー企業にとっては有効な成長策となりえる。日本でも、M&Aを促進する環境が整いつつあるので、今後フィットネス、ヘルスケア業界においても浸透する可能性は高いと言えよう。