株式会社Melon(以下、Melon)は、オンラインでマインドフルネスプログラムを提供しているほか、2021年12月に実店舗を渋谷区にオープンしたのは記憶に新しいだろう。(FitnessBusiness通巻118号参照)そのなか、同社はオンラインのマインドフルネスプログラムを小学生向けにアニメーション化して提供。背景は、児童のメンタルヘルスが悪化傾向にあるという社会問題の解決を目指すこと。この取り組みは実証実験として行われ、見事に効果を立証することに成功。詳細をMelon代表取締役の橋本大佑氏に訊いた。

小学生のメンタルヘルス問題はコロナをきっかけに深刻さが増した

児童のメンタルヘルスの問題は、従来から顕在化していたなかで、コロナを契機にさらに悪化の一途を辿っている。文部科学省によると、2020年に自殺をした児童数は499人で、前年対比100人(約25%)増加したという。コロナのせいで登校することができず、親が働いている間は家で1人過ごさなければならない状況も原因のひとつだろう。「このデータを見たときに、すぐになんとかしなければならないと感じました。よりスピード感をもって取り組むためには、まずは民間で行う必要があると考えていたなかで、あるご縁をきっかけに、プロジェクトが本格的に進み始めました」

小学生向けに無料でプログラムを提供した理由

まず必要だったのが、小学生向けのプログラム。今回、作成するなかでこだわったポイントは大きくわけて2つ。1つ目は「オンライン」。スピーディーに広げていくためには、担任の先生へマインドフルネスプログラムの研修をして、リアルで子どもたちにプログラムを提供することは難しいという結論に至った。

もう1つは「動画コンテンツ」。子どもたちが親しみやすいように、長くても10分以内のアニメーションにすることになった。

「ただ、ひとつ問題だったのは、動画アニメーションのマインドフルネスプログラムを提供して、本当に効果があるのかわからないということでした。そのため、このプログラムを広める前に、まずは実証実験で効果を確かめる必要があったのです」と橋本氏は説明する。そこで、無償で小学生に提供するかたちで、希望する学校を募ったところ、十数校での実施が決まった。

生徒だけではなく担任の先生も効果を実感

実証実験は専門家の監修のもと、「マインドフルネスの効果測定尺度」を用いて、「リラクゼーション感」、「ストレス反応」、「共感性」、「自己統制」、「自己肯定感」の5つの尺度ごとに介入前後のデータを収集し検証。小学生には、それぞれの尺度に対して4択の質問を用意して、効果の有無の実感をアンケート形式で答えてもらった。

その結果、71.1%の児童が「効果あり」と実感していることがわかった。不安やストレスの軽減に、アニメーションプログラムでも寄与することが、日本で初めて証明された瞬間である。

それだけではない。子どもたちと一緒に同プログラムを実施した担任の先生も、2つの意味で効果を実感しているのだ。1つは、客観的に見た子どもたちの効果、もう1つは自分自身のメンタルヘルスの改善である。

前者については、「落ち着きのなかった生徒が落ち着くようになった」、「集中力が増した」などのフィードバックが寄せられた。後者は、子どもたちと同様の効果であるが、橋本氏は「教職員のメンタルヘルスの問題も解決しなければなりません。とあるNPO法人による実態調査の結果、一般的な企業よりも教職員の疲労感や不安感は4倍以上になっているとわかったのです」と警鐘を鳴らしている。

各方面とのパートナーシップによりマインドフルネスを日本へ広める

マインドフルネスの効果が実証されたものの、橋本氏は教育現場のマインドフルネスをビジネスにする野心をもっているわけではない。純粋に社会課題の解決を志す、ソーシャルアントレプレナーなのだ。一方で、一般企業、フィットネスクラブ、医療機関など、様々な団体と連携していくことで、必要な場所へマインドフルネスそのものを広めていくことに情熱を燃やしている。フィットネスクラブのスタジオに、マインドフルネスプログラムを追加することを、検討してみてはいかがだろうか。