コロナ禍によって急速な外部環境の変化がもたらされた。消費者の価値観やニーズが多様化したのだ。フィットネス・健康産業でも、コロナ前までは成長していくと予測されていたが、大きな打撃を受けた。回復基調にはあるが、なかなか先行きが見通せていない。まだまだ創造性と実行力が求められる。

フィットネス事業者は、ビジネスモデルを再構築しようとする際、「フィットネス」という狭い概念で商品・サービスをデザインしていたのではないだろうか。

健康意識が高まった消費者は、自身の健康課題を解決できるよう、「ウェルネス」や「ウェルビーイング」という新しい概念に目を向け始めている。

そこで、フィットネス事業者がビジネスモデルや商品・サービスをリデザインし、この難局を乗り越えられるよう、「ウェルビーイング」から得られるヒントを示したい。

ウェルビーイングの原点はヒューマンビーイング

約10年前までは、ウェルネスが先行しており、ウェルネスバブルがくると予想されていた。そして、昨年、ウェルビーイング元年が訪れる。国内でも、東急スポーツオアシスが、ミッションを「Well-being First!」に改め、予防医学研究者の石川善樹氏とニッポン放送アナウンサーの吉田尚記氏が『むかしむかしあるところにウェルビーイングがありました』(KADOKAWA刊)を発刊するなどの動きがある。

ウェルビーイングという言葉はよく使われているが、この書籍では、素の自分、あるがままの自分を楽しむとしている。「ヒューマンビーイング」とも言い換えられ、「皆、同じ人間である」という幅の広い許容力、包容力を前提としている。

ウェルビーイングに関する最新の知見をまとめると、「選択肢がある」、「自己決定できる」の2つが満たされた状態だとされる。例として、書籍で次のような話が紹介されている。「メタボリックシンドロームの人たちの生活改善をするためには、否定と肯定、どちらから入ると結果的にうまくいくのか?(選択肢がある)」という実験をした結果、「あなたが大事だと思う行動を2つ選んで試す(自己決定できる)」方が、長期的な効果があり、医療費も下がった。しかも、対象者が選んだ行動は、運動とは関係しない。

他の尺度では、「満足」と「幸福」の2つが揃えば概ねウェルビーイングだとされる。これらを満たすには、自分のウェルビーイングのために何が大事かを知っておくことが肝要だ。書籍