管理栄養士
桑原さんの対コロナTips
「ワクチン接種の前後や、身近な人がコロナに感染したときは、マルチビタミン&ミネラルを普段の3倍摂りました。通常ビタミンを多く摂りすぎると尿の色が黄色になりますが、ワクチン接種後はそれがなかったので、身体が必要としていたんだと思います」
管理栄養士として、トップアスリートから一般生活者までの食事指導を行っている桑原裕子さんが、コロナ禍がメンタル機能低下に及ぼす影響として懸念しているのが、行動制限で「個食」の機会が増えたこと。
「食事は、コミュニケーションツールの一つですが、仲間とも家族とも、会話をしながら食事をする機会が減り、気持ちを共有できないストレスや、不安を相談できないことから、ストレスや不安が募り、メンタル面に影響を及ぼしていると考えられます。アスリートからの質問も増えている気がします」
Tip1.朝ごはんのたんぱく質が、幸せホルモン「セロトニン」の分泌をサポート
メンタルを整えるうえで、桑原裕子さんがまず挙げるのが、「朝ごはんにしっかりたんぱく質を摂る」こと。たんぱく質は、幸せホルモンと言われる「セロトニン」を生成し、このホルモンが分泌されることで、ストレス耐性を高め、メンタルを安定させる作用が働くことになる。
さらに「セロトニン」は、夜までに「メラトニン」に代わり、入眠をサポートする。気持ちが安定して、寝つきがよくなることで、
眠の質を高めることができ、そのことが自律神経を整えることにも繋がる。自律神経が整うことで、身体の調子も維持できる。
また、朝ごはんをしっかり食べることで、生活のリズムをつくることができる。時間栄養学によると、人間の身体は本来25時間周期にあり、朝ごはんに糖質とたんぱく質を摂り、朝日を浴びることで、体内時計がリセットされる。これにより、1日24時間の周期に合わせた就寝と起床のリズムがつくれることになる。
Tip2.メインディッシュは昨日と違うものを選ぶ
人間の身体で起きている化学反応は非常に複雑なため、桑原さんは「栄養バランス」が何より重要で、そのバランスをとるには様々な食材から栄養を摂ることを勧めている。
その際にアドバイスしているのが、「メインディッシュ」を日々変えること。メインディッシュ(主菜)は、肉や魚などたんぱく質源が多く、メインディッシュが変わることで、自然に付け合わせの副菜も変わることになり、多様な食材から栄養を摂取できることに繋がる。
「食べない方がいい物にフォーカスするよりも、食べた方がいい物を日々いろいろな種類で楽しみながら摂ることがバランスのいい食生活を続けるコツです」
Tip3.高熱や体調不良時は、通常の10~20倍のビタミン・ミネラルが必要なことも
コロナ禍では、感染しても高熱が出て、感染予防のためのワクチン接種でも副反応として高熱が出ることを多くの人が体験した。この「高熱が出る」という状況は、身体の中で炎症や様々な反応が起きている状態であり、炎症を抑えようとする際に、大量のビタミ・ミネラルが必要となる。そのため、桑原さんはマルチビタミンなどのサプリメントを活用して、ビタミン・ミネラルを普段より多く摂ることを勧めている。
「通常、ビタミン・ミネラルは、摂りすぎるとそのまま体外に排出されますが、身体に不調があるときは、通常より多くのビタミン・ミネラルが必要となるので、バランスよく多めに摂っておくことを勧めています。特に、抗炎症作用があるビタミンCや、ビタミンDの血中濃度が高い人は感染しづらかったり、重症化しないという論文も注目されました。ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、カルシウムが神経系の電気伝達をサポートすることからメンタルの安定に繋がるとも言われています」
■新サービス
遺伝子検査、遅延型アレルギー検査、自律神経測定に基づいた食事指導
食事の医科学的な研究とテクノロジーの進化により、より一人ひとりに合った、メンタルを整える食事指導が可能となっている。メンタルの安定につながるセロトニンの分泌についても、遺伝的に分泌しづらい体質の人がいる。こうした遺伝タイプを持つ人は、鬱傾向のリスクが高いこともわかっているが、遺伝タイプを知っておくことで、食習慣や運動習慣で予防することも可能となる。
例えば、セロトニンの分泌が苦手な人の場合、朝ごはんでのトリプトファン(アミノ酸)の摂取は大切で、食が細い人でも、そばや、バナナとヨーグルトなど、朝食でも食べやすいものを選んで、食べる習慣をもっておくことがメンタルを整えることに繋がる。
桑原さん自身、大学院での専攻は「健康心理学」で、今後様々な検査や、身体の状態をモニタリングできるアプリなども活用して、栄養と食生活の指導に活かしていきたいと話している。