フィットネス業界において主要な事業者の直近決算期における売上高上位 211社の売上高、税引後利益とその前の期の売上高と税引後利益などの動向について調査した(※決算期の違いに加え、直近の決算期の数字を把握できていない企業もあるが、わかる範囲でリスト化しているため、必ずしも正確な比較となっていないことを前提とする)。直近の税引後利益では、トップ3に株式会社東祥(以下、東祥)、セントラルスポーツ株式会社(以下、セントラル)、株式会社カーブスジャパン(以下、カーブス)がランクイン。一方、ボトム10企業には、関東・関西の中心部に総合業態を中心に展開している企業がずらりと名を連ねた。
「未顧客」「地方」「専門特化」が今後の成長のためのキーワードに
Fitness Business編集部は、フィットネス業界において主要な事業者の直近決算期における売上高上位211社の売上高、税別後利益とその前の期の売上高と税引後利益などについて、動向を調査した。直近の税引後利益の上位10社は、表1の通りとなった。トップ3は、東祥、セントラル、カーブス。カーブスは、11位に直営店を展開するハイ・スタンダードも入る。
こうした収益力の高い上位企業にみられる傾向として、企業規模の大小にかかわらず「未顧客」「地方郊外」「専門特化」に対応していることが挙げられよう。これまでどこかのフィットネスクラブに参加していた顧客層ではなく、初めてフィットネスクラブに入会する、いわば「未顧客」を対象顧客にしていたり、出店立地が都心に偏らず「地方郊外」にも分散していたり、さらには、ビギナー向けのプログラムやスイミングスクール、女性向けのサーキットなど、「専門特化」したプログラム・サービスを提供したりしている。対象顧客の抱えるニーズに対して最適に対応する独自のソリューションがあり、そこに絞ってサービスを提供し、しかもそれらのサービス品質を日に日に整えていくことができるバリューチェーンがきちんと構築できていて、それをシステマティックに機能させることもできている。顧客の目線で見ると、これらのクラブは「何屋」かがわかりやすく、また多店舗展開していることもあり、フィットネスやスイミングなど何かをしようと思ったときに、想起されやすくもあるのではないか。
一方、ボトム10企業には、関東・関西の中心部に総合業態を中心に展開し、従来型のマーケティングを続けている企業が名を連ねている。ここではあえて企業名こそ挙げないが、こうした企業は上位10社とは異なり、「未顧客」「地方」「専門特化」といった傾向が薄く、顧客からすると魅力が感じられにくく、想起もされにくいブランドになってしまっているのではないだろうか。対象顧客の潜在的なニーズを明確にして、それに対応するマーケティングミックスを改めて整えていきながら、新業態・サービスの創出にも取り組んでいくことが欠かせないだろう。健康市場自体は、成長市場であるため、事業者の取り組み方次第で、必ず成長することはできる。
ただ現在、全体としては、211社のなかで、およそ1/4にあたる51社しか、税引後利益が黒字になっていない。今後、業績を回復させていくには、構想力と実践力が必要になろう。
なお、今回、作成した「フィットネスクラブ・トップ211社リスト」(フィットネス業界において、直近決算期とその前の期の売上高等をリスト化した資料)については、近日、 Fitness Business編集部より発売を予定している。経営戦略策定の資料として役立てていただきたい。
第1四半期、セントラルが増収増益
Fitness Business編集部は、フィットネス業界の主要各社の2023年3月期第1四半期の決算も調査した。フィットネス業界の各社にとって第1四半期(4~6月)は、入会者を増やし在籍会員数を積み上げ今期の業績を確かなものにするために極めて大事な四半期と言える。
表2に示す通り、主要7社の業績を見ると、増収増益がセントラルとカーブス、株式会社ルネサンス(以下、ルネサンス)の3社、増収減益が株式会社Fast Fitness Japanとコナミスポーツ株式会社(スポーツ事業、以下、コナミ)、東祥(スポーツクラブ事業)、の3社、減収減益がRIZAPグループ株式会社(ヘルスケア・美容)の1社となった。また、今第1四半期の決算が、赤字となったのがルネサンス、東祥(同)、RIZAPグループ(同)の3社だった。
セントラルは、スイミングスクールの会員数が回復基調だが、コロナの影響が残り、全体の会員数としては前年同期比99.7%となった。同社は、超効率化運営、契約の見直し、オンライン事業の拡充、営業施策としては、フィットネス会員継続促進、休会者・一時退会者の早期復帰促進、子ども向け短期教室や体験会実施強化などに取り組むと同時に、法人向けキャンペーンの実施や小中学校の水泳教室受託の推進を進めた。
カーブスは、テレビCMやLINEを含むWeb広告などのメディアミックス効果から全四半期末から1.8万人の会員数純増となった。また、月次退会率もコロナ前の水準より下げている。だが、オミクロン株の感染拡大により、シニア層の新規入会が低調となり、予定していた会員数を下回った。コロナ禍の影響の大きいエリアの店舗の統廃合も進めていて、統廃合の対象店舗の会員の70%は、他店に移籍し、継続利用している。さらに、プロテインの定期契約者数の増加や高機能新商品による客単価向上などもあり、業績は好調に推移している。
Fast Fitness Japanは、’22年5月より初めてタレントを起用して「市場最大の友だち紹介キャンペーン」を展開するなど、新規会員獲得施策を強化し、とりわけ都心部での新規会員数を増加させるとともに、新規FC加盟店も着実に増加させてきた。
コナミは、オンラインサービスの充実、公共スポーツ施設の業務受託の推進、学校水泳授業の受託、さらにはスイミングスクールでの「スマートスイミングレッスン」の導入、子ども向け運動スクールへの「運動塾デジタルノート」の提供などを推進した。
ルネサンスは、わずかに赤字となったが、前年から大幅に回復してきている。フィットネス会員の新規入会者数が好調に推移し、在籍会員数が前年同期比11.2%増の342,981名(うち、オンライン会員数21,173名)と計画を上回った。前年より導入した少人数制のスクール制フィットネスプログラムも、計画を上回る集客状況で推移。会費単価も6月度において前年同期比プラスで推移している。また、リハビリ特化型デイサービス「元氣ジム」のFC加盟店の拡大に向けた営業および支援体制の強化を行った。さらに、オンラインレッスン「RENAISSANCE Online Livestream」も、プログラムを大幅にリニューアルし、住友生命 Vitality会員をはじめ、導入の企業・健保組合に向けて、場所を問わず健康づくりができる機会の提供に取り組んだ。加えて、自治体や学校に向けた事業も積極的に取り組んだ。
東祥も、わずかな赤字となったが、プログラム予約、ダンス・ストレッチ等店舗独自のオリジナル企画、ホットスタジオの有料化やオンラインプログラム「ホップTV」の配信等を積極的に行った結果、売上高を微増させた。
RIZAPグループは、ボディメイク事業において’22年2月より導入した新会員制度「プライムサービス」が好調に推移し、既存会員からの移行や新規の会員獲得につながるなど、着実に「サブスク」型ビジネスモデルへのシフトが進んでいる。また、シニア層への訴求を強化したことによって、シニア比率が過去最高の18.4%まで伸びた。さらに、月額2,980円の24時間ジムの新業態「chocoZAP」も8月末時点でおよそ100店舗と、ビジネスモデル変革に向けた取り組みを着実に進めている。