トップアスリートへのトレーナーサービスを、より広く一般生活者に落とし込むべく、2003年にR- bodyを立ち上げて以来、「コンディショニング」の啓発をしてきている鈴木岳.さん。直営店でのパーソナルトレーニングセッションと、トレーナー育成アカデミー事業の中で培ってきた運営ノウハウ、人材育成ノウハウ、指導ノウハウを、再現性の高いシステムにまとめ、「トータルコンディショニングサポート」として医療機関や治療院、フィットネスクラブ、自治体へ展開している。
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株式会社R-body代表取締役鈴木岳さん
トータルコンディショニングサポートとは
トータルコンディショニングサポートの1つとして、医療の整形外科領域とフィットネス・トレーニング領域との連携がある。
この連携のために、4つのサポートサービスが必要となる。「診る→治す→整える→鍛える」であり、現状では、「治す→整える」を連携するシステムがない。そのため、「トータルコンディショニングサポート」としては、特に、この部分を構築する必要があると鈴木さんは説明する。
「『診る→治す』は、医療システムとして出来上がっています。一方、『鍛える』はフィットネスやスポーツの領域で整備されています。今後『治す→整える』を整備することで、『鍛える』がさらに活きていくことになります。この『治す→整える』の領域は、アスレティックトレーナーやパーソナルトレーナーが担うことができるが、人材育成や、運営システムの標準化が難しい側面がありました。R-body projectでは、一貫してこの領域のサービス構築を追求しており、R-bodyでの運営システムや人材育成システムをもとに、2019年に『トータルコンディショニングシステム』としてまとめ、直営店以外での展開をスタートしています」
「SOAP®システム」と「コンディショニング指導」で、ホンモノを身近に
R-bodyでは「ホンモノを身近に」をコンセプトに、トップアスリートに提供しているサポートを一般生活者に提供する仕組みづくりを進めてきた。その鍵を握る一つが、「SOAPシステム」と呼ぶ、オリジナルで開発した身体の機
能評価方法と、その評価に応じたエクササイズ処方である。
「SOAPシステム」とは、10のエクササイズを行うことで、主に身体の主となる関節の機能不全を見つけることができるようになっており、評価結果に応じた、本来の機能を引き出すためのエクササイズが用意されている。この10のエクササイズによる評価と改善のための運動処方システムは、より日常動作改善につながる内容となっており、クライアントも納得感を持ってエクササイズに取り組むことができ、成果に繋がっている。
「人、町、国のライフパフォーマンスを押し上げる」取り組みへ
「トータルコンディショニングサポート」が、まちづくりにも活かされはじめている。
2021年7月より、R-bodyのトレーナー2名が、北海道東川町に常駐。「健康なまち東川町」を目指して、町民8,500名を健康にする取り組みがスタートしている。
この取り組みは、ソルトレイクオリンピックで銀メダルをとったスノーボード選手の竹内智香さんが、東川町の町長に提案したことをきっかけにスタートした。東川町長の松岡市郎さんが、R-body大手町店を訪問、そのコンセプトやシステムに共感し、町全体での導入が即決された。
東川町の町民体育館として利用されている「B&G海洋センター」を拠点にしたコンディショニング指導と、町の企業や工場、学校の授業や部活、レストランやカフェなどにも出向き、さまざまな場所でコンディショニング指導を進めている。
この取り組みにより、約半年で、「B&G海洋センター」の利用者数は3倍となり、北海道で2番目に利用者の多い施設になっている。町長にダイレクトに意見が届けられる「ご意見箱」にも、以前は「ご意見」が多かったものの、「感謝」のことばも増えているという。
R-bodyではその他にも、徳島県美馬市において、健康づくりの取り組みを進めている。
Jリーグチームの徳島ヴォルティスのサッカーコーチが、R-bodyのグループコンディショニングプログラムを習得し、市民の人に指導する。
週1回×8回のグループクラスで、腰痛改善率は75.5%という高い実績が出ている。この改善率は、R-bodyのパーソナルトレーニングによる改善率80%に匹敵する。
フィットネスクラブとしての事業成長の可能性
現在までに、この「トータルコンディショニングサポート」の導入は、医療施設や治療院が中心となっているが、トレーナーの力量など属人的な能力に頼らない、システムとして導入できる体制が整った今、フィットネスクラブ事業者にとっても、体制構築がしやすくなった。
医療分野と連携することで、フィットネス事業を成長させられる可能性が高まっている。
特にフィットネス施設を持っている事業者にとっては、治療台とフリースペースを確保し、運営システムと、指導者育成システムを導入することで、「トータルコンディショニングサポート」の体制を構築することができる。これによ
り、メンバーはもとより、地域の健康づくりにも繋げられる。
鈴木さんは、「世界的にも『トータルコンディショニング』のアプローチはスタンダードになりつつある」として、医療とフィットネスが連携する体制づくりに向けた大きな転換期にあることを伝えている。