Technogymのmywellnessがメディカルデータ連携を支える

今、いかに未顧客を取り込むかが課題となっている。

しかし、未顧客がフィットネスの重要性に気付くのは、一度健康を損ねてからというケースが多い。既往歴がある人をフィットネスクラブで受け入れる際、リスク管理体制が整っていなければ、思わぬ事故を招くことになる。

2022年11月1日にオープンしたメディフィットクラブ(延床面積4,500坪)では、フィットネス初参入ながらもメディカルデータと運動内容の管理を行い、早くも現会員数は450名となった。

競合他社が約20店舗出店している同地域で、一体、何がそれを可能にしたのか? その背景に迫る。

  • 松村大祐氏
    ウェルネスセンター中央 メディフィットクラブ 事業所長

医療・福祉連携とモチベーションに課題

メディフィットクラブは、山口県山口市にあるウェルネスセンター中央内にオープンした。同施設は、湯田温泉で有名な宿泊施設の外観を残し、リノベーションした。地域住民が慣れ親しんだ施設が2年かけて生まれ変わる姿は、注目を浴びていた。

メディフィットクラブは、1階の天然温泉と同じフロアにある。2・3階には高齢者住宅、外庭には3×3のバスケットボールコートがあり、夕方は子どもたちで賑わう。仕事帰りの大人は子どもを見守りながらメディフィットクラブで運動し、皆で温泉に入って帰る。これから着手する土地を含む4,500坪の広大な敷地は、近隣の保育園から来る子どもたちのお散歩の通り道でもあり、地域の拠り所として、老若男女に愛されている。

メディフィットクラブの母体となる青藍会グループは医療法人だ。隣接するデイトレセンター(通所介護施設)は、最大200名を受け入れ、中国・四国エリアで最大規模となっている。これまでクリニックや介護施設を営み、医療・福祉や介護・子ども・障がいサービスなどを通してこの地域に密着し続けてきた。

なぜ、フィットネスクラブ運営事業に踏み切ったのだろうか。

「今まで、医療と介護を結びつけるものがありませんでした。例えば、病院にいらしても、介護施設における運動内容がわからない。それに加えて従来のフィットネスクラブでは、モチベーションを保つことが難しく、継続のしづらさを課題に感じていました」(松村氏)

その頃かねてより山口市が推進するスマートシティ構想の活動を受けDXを推進していた青藍会は、独自の総合健康管理システムというプラットフォームを構築。ハートIDで、青藍会内の利用者情報を連携した。

メディフィットクラブはバックグラウンドを活かし、理学療法士・健康運動指導士などの専門家を擁した。しかし、周辺ではあらゆる業態のフィットネスクラブが約20店舗も出店していた。激戦区だった。

総合健康管理システムにより医療・福祉連携の手がかりはあったものの、フィットネスクラブでの運動と患者の既往歴をつなげるシステムを模索していた。

フィットネスの見える化が顧客にとって魅力

メディフィットクラブは、地域の高齢者や主婦層を主な対象顧客にしている。基礎疾患などを抱える人でも安心して運動を継続してもらうにはどうしたらよいのか。

この課題にフィットしたのが、Technogymのmywellness cloudだ。mywellness cloudは、メディカルデータと運動内容を連携させることができるCRMだ。様々な機能があるうち、「Prescribe」機能では、トレーナーが会員の目的にあった運動を処方する際、体組成データはもちろん、既往歴や運動制限、処方薬など、メディカルデータを詳細に管理して、個々の会員に運動処方をデジタルベースで提供する。

メディフィットクラブでは、会員には1ヶ月に1回アセスメントを行い、運動の進捗に応じて新しい処方をPrescribeで継続的に提供というかたちで活用している。

エンドユーザーは、Technogymキーでマシンにログインし、処方された運動プログラムにアクセス、そして結果を記録する。

運動の結果や進捗データはスマートフォン等の専用アプリから視覚的に捉えやすい。この、フィットネスの見える化が顧客にとって魅力になるとともに競合優位性ともなっている。

「どの運動によって効果が出ているかがわかりやすく、PDCAが回しやすいです。運動処方の質が均一化され、リスク管理がしやすくなりました。従来のジムは、マシンでの運動による機能的価値がメインでしたが、Prescribeのお陰で、私たち専門家から会員さまに最適なプログラムが提案でき、会員さまは変化が追えるのでモチベーションが維持しやすくなっています」

利用者は、50~60代が多いという。疾患のある人でも、安心して楽しそうに運動している。

産後の身体の引き締めを目的とする会員も、不安定な週1回の利用でも「一生懸命動いたのに消費カロリーがあまり増えていないなど思わぬ気付きがあり、運動の目安になる。今後は、体重は3kgくらい体重を落としたい。健康のために運動を継続したい。次のアセスメントが楽しみ」と話す。

このメディカルデータ連携により、現在、入会者数は450名。退会率は1%未満で継続率は99%。近隣住民の入会を起爆剤に、口コミで増加してきた。

レノファ山口との地域交流で距離が縮まる

メディフィットクラブは、レノファ山口(サッカーJ2)の主にアカデミーとレディースの選手も使用している。つまり、地域住民が憧れのサッカー選手と同じ空間で運動しているのだ。しかも、レディースの選手が職員におり、選手から運動処方をしてもらえる。

選手への運動処方にもPrescribeが使われ、自宅での運動にも対応している。

そして、選手にとってメディフィットクラブは、ファンと身近に接することができる場所になっている。

現在、レノファ山口のトップチームに所属する山瀬功治選手はこう語る。

「身近な場所に、レベルが高いトレーニング環境があり、ファンと会える場所があるのはとても良い。良い施設があっても、遠いと足が遠のいてしまう。ファンとの交流を通して地域を盛り上げたい」

メディフィットクラブは、様々な会員と応援されている選手、サポートする職員が触れ合える身近な聖地なのだ。

日本一、Technogymを使いこなす

松村氏は、今後について語る。

「職員はコミュニケーションを大切にしてきた。やりがいを感じており、楽しい。これからは交通的弱者の方も運動できるよう、車による送迎も開始予定。医療介護に長けた私たちを近くに感じていただけているため、心も身体も元気になれる施設になるべく、日本一、Technogymを使い倒してTechnogymマスターを目指す」

Technogymをフル活用することで、レノファ山口や、バスケをしている子どもたち、健康寿命の延伸を実感する会員に明るい未来が近づき、地域住民と距離を縮め、フィットネスを日常的に行っていない97%の人々を惹きつけるのではないか。