「アミューズメントフィットネスクラブ」が、好調に開花

「新たなフィットネス文化の創造で世界を変えていく」をミッションに2018年に初出店し、その後、FC展開を加速しているフィットイージー株式会社が順調にスケールしてきている。「アミューズメントフィットネスクラブ」(商標登録済)という独自のコンセプトでの取り組みが生活者に評価され、成長してきている。1店舗当たりの会員数は前期比108人増の832人(平均的な店舗延床面積は、およそ200坪)と好調に推移。新規と既存の両方ともに順調に推移している。昨年末には、2024年10月期決算の発表とともに、中期経営計画も発表している。経営の現状と好調の理由、今後の計画を、同社取締役副社長中森勇樹氏による決算説明会や投資家向け説明会での内容からまとめてみた。

2024年10月期に5つの新たな
アミューズメントコンテンツを導入

2024年10月期における同社の売上高は66.7億円(全同期比48.9%増)である(図1)。内訳は直営売上(会費収入など)が13.26億円、運営売上(ロイヤリティ収入など)が16.51億円、開発売上(加盟金収入、物販収入など)が36.73億円である。中でも物販収入(前年同期比60.9%増の27億円)とロイヤリティ収入(同59.6%増の6.8億円)の伸びが大きい。営業利益は16.3億円(同46.6%)、経営利益は16億円(同46.2%増)、純利益は10.8億円(同49.8%増)。営業利益率は24.45%と高水準だ。

◆図1 損益計算書

B/Sにおいても、利益剰余金の積み上げと上場による資金獲得で、純資産が全同期比19.0億円増加し、自己資本率が前年同期比24.6%増えて50.7%と上昇している。財務的にも健全な水準にある(図2)。

◆図2 B/Sのトピックス

新規入会を確実に増やし、在籍会員数を積み上げた結果、チェーン全体売上として129.5億円としている。同決算期の店舗数は179店舗、会員数は14.8万人となった。既存店の会員数も順調に伸長している(図3)。

◆図3 店舗数・会員数

こうした好業績の背景には、コンセプトとしての「アミューズメントフィットネスクラブ」を実現する多種多様なアミューズメントコンテンツとAIを駆使したサービスイノベーションがある。同社は創業から7年間で22のサービスを開発・導入しているうえ、AI顔認証やデジタルを活用した入会や予約、会員管理などを整備しているため、会員が「理由」を考えるのではなくスムーズに「行動」できるように、トータルにサービスがデザインされているのだ(図4)。

◆図4 サービス開発の内容

2024年10月期に導入したアミューズメントコンテンツとしては5つがある。骨盤底筋トレーニングマシン「FIT-CHAIR」、ドジャース大谷翔平選手も使用する「Rapsodo」社の投球分析デバイス「FIT-BASEBALL」、トレーニング中に会員が洗濯・乾燥ができる「FIT-LAUNDRY」、ホワイトニング効果だけでなく、歯垢の除去や歯石の沈着を防ぐなど、様々な効果が期待できる「FIT-WHITENING」、ピラティス専用マシンでの指導サービスが受けられる「FIT-PILATES」である。とりわけ、今は「FIT-CHAIR」と「FITWHITENING」が人気となっている。また、多様なアミューズメントコンテンツを導入しつつも、フィットネスを柱にしているところも特徴の1つで、トレーニングマシンの品質にもこだわりをもち、2024年10月期には、新たなマシンブランドとしてOLIMPIA、IFBBPRO公認の「ONHIM(オンヒム)」を日本初導入し、7社11ブランドのマシンを導入している。

同社は、一般社団法人日本フィットネス産業協会(FIA)に加盟し、同協会の定める施設認定基準を満たした施設基準をクリアした開発をするなど会員に対する安心・安全を担保するとともに、FC向けの出店・運営パッケージを常にアップデートしていく仕組みも構築している。中間マージン削減による圧倒的な低コストでハイクオリティな設計・施工システムを実現し、高付加価値提供の仕組みを備えているのである。

さらに、新たなパートナーシップとして、トヨタ自動車株式会社の女子バスケットボールチーム「アンテロープス」とパートナーシップ契約を締結。「スポーツを通して地域活性化」「若年層に夢・挑戦する大切さの訴求」「女性が活躍できるモデルづくり」という3つのテーマの実現を目指していく。

同社は、2025年10月期の予想として、売上高81.5億円(前年同期比22.1%増)、営業利益20.1億円(同23.2%増)、経常利益20億円(24.9%増)、純利益13.2億円(22%増)を発表している。

成長率、営業利益率も高水準

昨年末の決算発表時に、同社は中期経営計画も発表している(図3、4)。

昨年末時点で、新規出店予定物件が約70店あるほど、店舗開発は順調に進んでいて、2025年10月期には57店、2026年10月期80店、2027年10月期100店の出店を計画しており、同期には400店を超えることになる。予測値ではあるが、各期の売上高、売上高営業利益率、会員数は、2025年10月期に81.5億円、24.7%、20.0万人、2026年10月期に102億円、25.4%、26.5万人、2027年10月期に、126億円、26.3%、35.0万人と発表(図5)。既存各社がうらやむほどの成長ぶりといえよう。

◆図5 中期経営計画

中長期の取り組みとして、次の5つを掲げている。

  1. ヘルスケアオートメーションの実装確立
    パーソナライズされた健康の自動化システム。個人が持つ様々な健康データを自動的に収集、統合、分析し、同社独自のメソッドとして提供する。AIテクノロジーを活用し、健康の見える化と生活スタイルの提案を行い、健康状態の包括的な理解と改善を促していく。
  2. 物販サービスの導入
    トレーニングや食事、歩数などの履歴や心拍数や、睡眠等の生体データなど、蓄積された多くのデータを解析して顧客の期待や課題を明らかにし、それに対応した商品・サービス―例えば、プロテインやサプリ、トレーニングギア、ウェアなど―を提案し、顧客の目的の実現をサポートしていく。
  3. パーソナルトレーニングの導入
    同社の提唱する、6つのなりたい自分(①スリムBody、②若返り、③ボディメイク、④ダイエット、⑤バルクアップ、⑥姿勢改善・機能改善)から1つを選択し、AIを活用してアライメント調整をベースにした安心・安全なトレーニングの提案をすることで着実に成果が出せるサポートをしていく。新たな収益源に育てていく。
  4. 新たなコンテンツの導入
    既存店へ新たなアミューズメントサービスを計画的に追加導入(一部アイテムは入れ替え)していくことにより、会員数の増加と売り上げ増を目指す。
  5. 全国への出店強化
    全国への毎期安定的な新規出店のため、現在の本社に加えて、まずは今春、東京支社を設立。関東に旗艦店を出店することにより、関東エリアでさらなる市場の開拓を図るとともに、ブランディングの強化および認知向上を目指す。また、経営・運営にかかわる優秀な人材の確保にもつなげていく。

既存のフィットネスクラブが「運動」だけを提供していると感じられていたところに、さらに「アミューズメント」という楽しみを含めた独自の価値提案をし、裏側でそれを持続的に担保できる仕組みもしっかりと備えたビジネスモデルが、同社の強みだろう。このポジションは、「空白」なだけに、今後、日本だけでなく、世界にも進出していくことができるのではないか。同社の取り組みに、今後も注目していきたい。