1975年に台湾で設立し、現在、最大級のマシンサプライヤーとして世界のフィットネス業界を牽引するジョンソンヘルステック(以下、同社)。台湾本社、アメリカの開発・マーケティング本部を中心に、世界に40以上の子会社を保有し、グループ従業員数は9,000人を超えるグローバルカンパニー。2004年に日本法人が設立され、日本国内でも幅広く製品・サービスの提供を行っている。2025年10月、創立50周年を迎えるにあたり、ジョンソンヘルステックジャパン株式会社の代表取締役社長 髙橋達夫氏に、グループ創設者の想いや他社にはない強み、そして、日本市場において大切にしていることや、今後の展望などを訊いた。

ジョンソンヘルステックジャパン株式会社
代表取締役社長
髙橋達夫氏
揺るぎないビジョン「世界の人々の健康に貢献するグループになる」
開口一番「ジョンソンヘルステックグループに勤務するすべての社員が、チェアマンかつファウンダーであるピーター・ロー会長を、心からリスペクトしています」と髙橋氏。
同社の創設者であるピーター・ロー氏は、「よりよい暮らしを家族に届けたい」という思いから、ジョンソンヘルステック(当時ジョンソンメタルズ)を設立。アメリカのイエローページに載っているすべての企業に直筆の手紙を送り、それを見たIVANKO社から「フリーウェイトバーベルを製造してほしい」という依頼が舞い込むが、当時のピーター・ロー氏は、フリーウェイトバーベルがどんなものかを知らなかったという。それでも「できます!」と即答し、工夫を重ね、何とか要求通りのバーベルを作り上げた。それがすべての始まりで、3年後には世界最大級のサプライヤーと呼ばれるまでに急成長を遂げ、次々に新たな製品を上梓し、多くの信頼を獲得してきた。
「ロー会長がよく口にするのが“lifetime learning”、そして“continue to growing, nothing is impossible”です。何かと言うと、“学び続け、成長し続ける限り、不可能はない”ということです。この信念と、優れた統率力とリーダーシップ、そして『世界の人々の健康に貢献するグループになる』という揺るぎないビジョンが、成長を支えてきたのです」と髙橋氏。さらに、「展開している各国のフィットネス市場のベストカンパニーとして、サービス、売上、ブランド力などでナンバー1になるという強い思いがグルー
プ全体で共有されています。ロー会長は、常に“ジョンソンヘルステックグループで働く社員はすべてファミリーであり、本社は現地法人をサポートし、現地法人もファミリーの一員としてグループを支えてほしい”と全グループに働きかけており、グループ間に強い絆が築かれています」と語る。

ジョンソンヘルステックを設立したピーター・ロー氏

誇るブランド力、その強さの理由
揺るぎないビジョン、ナンバー1になるという強い思い、グループ間の強い絆。同社が、フィットネス業界のトップであり続けることができる理由は、これだけではない。他の追随を許さない理由は、「常に挑戦し続けていること」だと髙橋氏は言う。それは、同社が展開するブランドが、決して立ち止まることなく、常に最高水準の品質を追い求め、革新に挑み続けていることからも明らかだ。
例えば、同社のプレミアムブランド「MATRIX」は、卓越した性能と快適性、耐久性を兼ね備え、世界で高く評価されているが、2001年に初登場してから今日に至るまで、常に変化と成長を続けている。昨年、最上位機種「ONYX」をローンチし、さらに今年、Magnum Plate-Loaded(プレートロード式:以下、PL)マシン9機種を発表。来年度もこれを上回るようなインパクトあるプランを計画している。「Magnum PLの製品開発責任者であるChris Adsitはストレングスのスーパーエキスパートで、プロダクトマーケティングにも関わっており、非常に熱いパッションを持っています。そういう人財が豊富にいるということも、グループの強みです」と同氏。
もう1つのブランド「VISION」は、1996年以にアメリカ・トレック社のフィットネス部門を買収した際にローンチしたシリーズで、シンプルで耐久性に優れたマシンだ。MATRIXよりも手ごろな価格で、アジア圏のマシンメーカーが台頭してくる中で、それに対抗できるブランドとして、バリュー志向の顧客を中心にシェアを拡大している。最近、破竹の勢いでヨーロッパ市場を席巻している「EGYM」は、ドイツのフィットネスマシンメーカーが手掛けており、日本においては2022年10月、ジョンソンヘルステックジャパンがEGYMと販売代理店契約を締結。髙橋氏は「“すべての人にジムを身近なものにし、それに応じてすべての人が健康を維持できるようにする”というEGYMのコンセプトは私たちのビジョンとも一致します。EGYMはもともと、“ジムに行っても、何をしてよいかわからず、とても辛かった”という創業者の経験から、開発されたマシンです。AIやアプリなど最新のテクノロジーを駆使し、ユーザーのモチベーションを高め、フィットネス参加率の向上や退会率の減少を実現する製品です。オープンプラットフォームでMATRIXともシームレスな連携が可能です。同じビジョンを掲げる者同士の連携を強化していくことで、さらなるお客さまの課題を解決できると信じています」と語る。
進化が急速なAI。プログラムの自動作成だけでなく、トレーニングの進捗管理もEGYMのアプリを活用して行え、トレーナーを必要としなくなるのではないかという点について髙橋氏に訊くと、「AIが提供するプログラムを採用するかどうかを決めるのはトレーナーとユーザーです。AIがどれほど進化しても、日頃のコミュニケーションを通してユーザーに寄り添い、的確なアドバイスができるのは人間のトレーナー。EGYMを活用した無人オペレーションは薦めませんし、逆に高いスキルを持つトレーナーの存在がより重要になってくると考えています」と話す。

時代にマッチした製品やサービスを開発し、提供し続けることが使命
日本のフィットネス参加率は、外国に大きな遅れを取っていることは周知の事実だが、その現状に対して髙橋氏は、「日本では医療費の増加も大きな問題になっていますし、健康寿命延伸に向けて官民が連携して、フィットネスに参加することが当たり前の社会にしていく必要がある。例えば、小・中学校と地域のフィットネスクラブが協力して、体育の授業などでフィットネスの基本やトレーニングマシンに触れる機会を作るなど、日本人全体のフィットネスやウェルネスに対するリテラシーを高めていく必要がある。そういう時期に来ていると思います」と語る。
そんな日本の市場を見つめて21年。ジョンソンヘルステックジャパンがここまで成長するうえで大切にしてきたものは何か、髙橋氏に聞いてみた。
「3つあります。1つはグループ全体でも言われていることですが、“Trusted advisor(信頼できるアドバイザー)”になることです。そのためには、他社のブランドについての知識はもちろん、ジムのオペレーションやメンバーに関することなどすべてを理解したうえで最善の提案をしなければいけません。これはとても難しいことですが、ジョンソンヘルステックの社員として目指すべきことです。2つ目は、“Customer success(顧客の成功)”。当社の仕事は製品を提供して終わりではありません。当社の製品を使うことでお客さまが成功を手にすることができなければ意味がないのです。
最後は“Brand”。社員がこのオフィスを出て、お客さまをはじめ、様々な企業や関係者の方とお会いするとき、誰もがその社員を通して会社を見ます。社員一人ひとりがこの会社の代表という気持ちで振舞うことが、とても大切です。それが、ブランドを守り、高めることにつながります」
常に世界一であり続けること
最後に、次の50年で目指すものは何かを問うと、髙橋氏はひとこと、「一番であり続けること」と答えた。50年という1つの節目を超え、さらに50年、100年続く企業であるためには、常に“something different”、“something new”を探し続け、マシンやアプリ、様々なサービスも含めて、その時々に合ったものをいち早く開発して、市場に提供しなければならない。それが、常に世界一であり続ける、ジョンソンヘルステックグループの使命である。
「クラブ・ジム側の成功のみならず、メンバーさまのゴール達成、ユーザーが健康を維持するという点で満足してもらえるという成功体験までを含めて考えています。市場には多様な需要がありますが、クラブ・ジム側もそれに向き合い、一人ひとりに適切なトレーニング方法のアドバイス、正しいマシンの選択とそれに見合った投資をぜひ継続努力してもらいたいです。間違いなく日本よりも進んでいる欧米のクラブ・ジムのOperationや、メンバーと向き合う姿勢や方針なども是非見ていただき、日本のこの業界をGlobalStandardのレベルになるようにサポート、貢献したいと思っています」あえて厳しい環境に立ち向かう意気込みと、業界を牽引していくんだという自信。これこそがジョンソンヘルステックの成長を支える力であり、次の50年でどれほどの成長を遂げていくのか、その動向から目が離せない。