住友不動産エスフォルタ株式会社が運営する総合フィットネスクラブ「エスフォルタ」(以下、エスフォルタ)は基幹システムを刷新し、ウェルネス/運動施設向けオールインワン・マネジメントシステム「hacomono」を導入した。通常とは異なり、会計連携の構築を先行させる形で導入を進めた珍しいDX事例である。会計管理の課題解決から始まり、結果として接客品質の向上にもつながっている。エスフォルタで導入を担当した企画管理部 事業推進課課長 土田士司氏と、ベンダーとして導入を支援した株式会社hacomono(以下、hacomono) VP of Enterprise大澤桃子氏に、導入の苦労やその効果を訊いた。
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住友不動産エスフォルタ株式会社 企画管理部 事業推進課 課長 土田士司氏
株式会社hacomono VP of Enterprise 大澤桃子氏
会計課題をきっかけに基幹刷新へ
「大人の総合フィットネスクラブ」を掲げるエスフォルタが力を入れるのは、成人向けに特化させた、落ち着いてトレーニングできる空間づくりと担当者制による質の高いサービス提供だ。店舗には専門講師によるホスピタリティ研修を受けたスタッフをそろえるだけでなく、会員が快適に利用できるよう、会員数が一定レベルを超えないように調整している。
こうした方針のもと、人によるサービス提供と空間づくりに注力する一方で、システムの見直しは長らく後回しとなっていた。店舗では約20年前に導入したシステムで会員管理・決済を行い、紙で入会手続きを実施。様々な業界でオンラインサービスが導入される中、「お客さまやスタッフからも特に改善要望はなく、皆が現状を当たり前だと考えていた」と土田氏は当時の状況を語る。
そのような中で、システムを見直すきっかけとなったのが、会計管理に懸念が生じたことだった。当時のシステムは売上の期間管理が十分ではなく、未払金が充当されても「いつの分なのか」を把握しづらい。そのことは月次決算の精度にも影響しており、将来的に監査などで問題視される可能性があった。さらに、休会・復会時の会費充当処理は、スタッフが電卓で計算していたことで金額ミスが発生。店舗の負担にもなっていたという。
こうした会計課題を解決する新しい基幹システムとして2022年に採用したのが、フィットネスクラブ運営に必要な機能が網羅されたパッケージシステム「hacomono」だった。
真摯な提案姿勢に好印象経営改善効果も決め手に
最終的に導入を決めた理由について土田氏は次のように述べる。
「まず、相談した際に営業担当者から『エスフォルタの運用を知ろう』『良くしていこう』という真摯な姿勢が伺えたことが好印象でした。会計の課題を解決できることはもちろん、他システムと柔軟に連携できる点や充実したサポート体制、加えてデータ集計機能により導入後は迅速に経営判断ができるようになることも魅力でした」
土田氏の声を受け、大澤氏はかつてITコンサルタントとして様々な業界のシステムを見てきた経験をもとに、フィットネス業界の課題をこう指摘する。
「外部連携が難しいシステムが多く、新しい機能が必要になった場合は既存のベンダーに依頼するしかない。そのことが開発コストや時間的負担が増える要因となっています。当社では、できるだけ開かれたシステムであるためにAPI(※)を開放しています」
hacomonoが目指すのは、システムの力でフィットネス業界全体を活性化することだ。そのために、導入企業の利便性向上とコスト抑制に貢献するサービス提供を目指している。
導入で直面した2 つの課題
無事、システム選定は「hacomono」に決定するも、導入にあたり土田氏は大きな課題に直面することとなる。
・社内の意識改革
それまで、必要な機能はすべてカスタマイズで実現してきた同社では、「求める機能がすべて搭載されている」または「不足していれば開発してくれる」という意識が強くあった。
「自社の運用に100%マッチしたパッケージシステムなど存在しません。導入を機に業務を整理し、重要性が低かったり効率が悪い作業は止める、あるいはシステムに合わせてやり方を変えるなど、変化する必要性を理解してもらうことに苦労しました。どうしても必要で、ほかのフィットネス企業にとっても有益と思われるものは相談し、実際に実現してもらった機能もあります」
hacomono側としても、数多くの要望が挙げられるなか、すべてに対応することは難しい。大澤氏は、機能の汎用性や開発の優先度を精査する際に、土田氏の協力が非常に有効だったと語る。
「様々な店舗の運用を見せてくれたうえ、スタッフさまが開店から閉店までどのような業務を行っているのか、詳細に教えていただきました。店舗運営への理解が深まり、フィットネス施設の運用にあると良い『開発すべき機能』と、エスフォルタさま独自として『運用でカバーしていただく機能』を整理することができました」
・データ移行の壁
会計連携を先行したエスフォルタでは、会計システムとの整合を図るためデータの整理や精査にも多くの時間を要した。
「必要なデータをそろえることが大変でした。でも、ここは『良い情報整理の機会』『ペーパーレス実現への一歩』と考えました。hacomonoさまが必要なデータを明確に指示してくれ、送ったデータにも『ここはまとめてよいのでは?』など提案をくれて本当に助かりました。データさえそろえば、一括インポートにより移行は短時間で完了しました」(土田氏)
hacomonoでは11,000件という豊富な導入実績をもとに、会員数や運用形態ごとに複数のデータ移行パターンを整理している。移行の際はそれに則り、企業側が安心して取り組めるよう、サポート体制を整えている。
図表 導入のトピックス
| 年 | 内容 | トピックス |
|---|---|---|
| 2020年ごろ | コロナ禍の影響で「エスフォルタ」内のDX化検討を意識 | マシン・スタジオ予約 |
| 2021年ごろ | 住友不動産の会計基盤の調整・構築要望を hacomono社へ相談・依頼 |
会計科目整理 収入・支出の科目整理 |
| 2023年6月 | 住友不動産との会計連携開始 | hacomono 社へ、システム運用の 現場指導を実施 |
| 2024年5月 | 総合型小規模クラブにて運用開始 | 会員管理の仕組みを整備 |
| 2024年5月~10月 | 総合型クラブ全店にて運用完了 | 店舗指導を実施 |
| 2024年4月~ | 指定管理施設(定期教室)5カ所で導入 | 予約から売上管理を実行 |
| 2024年8月 | キッズスイミングにて運用開始 | 先行導入システムとの連携も完了 |
| 2026年6月 |
東京・三田に高級クラブMITA GARDEN CLUB開業に伴い、 |
hacomono 社の技術を投入 |
DX がもたらした施設価値の向上
導入は、一番小規模な店舗で2024年5月より先行導入し、順調に運用できることを確認した後、同年10月から全店舗へ展開した。現在は指定管理施設や「KIDS SWIM ésforta prime」などキッズスイミングスクールにも導入を拡大している。また、一部の機能から使い始め段階的に利用範囲を広げることで、現場の混乱を抑えながら展開することにも成功している。
土田氏は導入当時を振り返り、hacomonoへの感謝を口にする。
「導入中は、スケジュール遅延に対して社内から『いつになったら実現するのか』『今からでも止めたほうがいいのでは』と厳しい声が上がることもありましたが、腹をくくり、1つずつ課題を解決していきました。hacomonoさまには一緒に様々な要望や課題に辛抱強く取り組んでいただき、感謝しかありません」
現在はペーパーレス入会となり、入会申込書や会員規約書など多くの書面も不要となった。会員カードもスマートフォンによるデジタル会員証へと変わり、「会員証を持ち歩かなくていい」とお客さまから喜ばれている。
しかし、「hacomono」の導入がもたらしたのは単なる事務作業の効率化や利便性向上だけではない。
「スタッフに時間的余裕が生まれたことで、現場に出てお客さまとの接点を増やすことができました。お客さま情報もスムーズに確認できるため、一人ひとりの方によりパーソナライズした声掛けや対応ができます。サービス品質向上につながる、とても価値ある変化です」
さらに、「導入当初の様子からは信じられない」と土田氏を喜ばせたもう1つの変化が、社員のITリテラシーが向上したことだ。苦手意識から導入に抵抗感を示すスタッフも多かったが、現在では「『hacomono』で〇〇をしたい」「〇〇の手続きはどうすればよいか」との問い合わせが寄せられ、積極的に活用しようという意欲がうかがえるという。
さらなるDX で顧客体験向上へ
エスフォルタではDXの次のステップとして、カーディオマシン予約に使用のホワイトボードをデジタル化したが、改めて「hacomono予約ボード」に切り替える予定だ。スタッフは店舗内の端末からマシンの利用状況を確認できるようになるほか、お客さまはスマートフォンのマイページに表示した二次元コードをかざすだけで予約を完了できるようになる。
土田氏は顧客体験を高める「hacomono」のサービスを「常に想像を、ちょっとおしゃれな感じで飛び越えてくる」と評価する。
住友不動産エスフォルタの施設は、高級クラブへ進化し、高単価施設へとシフトチェンジしたが、2026年6月に港区三田にオープン予定の新店「MITA GARDEN CLUB」では、同社が目指す高級路線をさらに強めた施設となる。同店でも「hacomono」のシステムを採用するが、同社で初の顔認証システムと連携させることで、顔認証によるチェックインも導入する。実現すれば、お客さまはスマートフォンを取り出す必要もなくなり、手軽さは施設利用の促進にもつながっていくだろう。同時に電子予約ボードも採用し、利便性を深める。
エスフォルタでは今後もDXを活用し、スタッフ・お客さまの省力化を進めると同時に、新たな施設価値の創造を目指していく。
「hacomono」について

リアル店舗における予約・決済や入会手続きがお客さま自身のPCやスマートフォンからオンラインで完結し、店舗での事務手続きや支払い手続きの煩わしさを大きく削減できるクラウドサービスです。店舗側では、月謝の引き落としや未払い徴収に関するオペレーションも自動化され、スタッフ業務の大幅な省力化を図ることができます。
2019年3月にサービスをリリースし、これまでに12,000店舗以上が導入しています。
https://www.hacomono.jp/
会社概要
社名:株式会社hacomono
所在地:東京都渋谷区神宮前2-34-17 住友不動産原宿ビル5F
代表者:代表取締役CEO 蓮田 健一
創業:2013年7月
資本金:100百万円
事業概要:ウェルネス/運動施設向けオールインワン・マネジメントシステム「hacomono」の開発・提供
https://www.hacomono.co.jp/
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取材等のお問い合わせ
株式会社hacomono 広報担当:友行 insidesales@hacomono.co.jp