株式会社フィットネスビズが運営する健康習慣クラブALIVE(以下、アライブ)は神奈川県の平塚市と大和市に2店舗構えており、2回目の緊急事態宣言発令後も会員数は上昇している。スモールグループエクササイズを用いた、そのメソッドについて掘り下げていく。

伊藤友紀氏
株式会社フィットネスビズ 代表取締役社長

スモールグループエクササイズをスクール制にして運営

アライブは1コマ45分という枠で、ストレッチ、筋トレ、バランス、ケアを詰め込んだスモールグループエクササイズを提供している。

週2回のコースで9,000円/月、週1回のコースで6,000円/月と料金はリーズナブル。各会員さまに曜日と時間を基本的に固定してもらう「スクール制」を取り入れている。主力は週2コースだが、会員さまの生活スタイルに合わせて週1コースも用意している。

会員さまは9割が女性。年齢は50~ 60代の方々が中心で、会員さま全体の70 ~ 80%を占める。

ひとつのコマの定員を最大で10人までとしている。その人数設定の意味を社会学的観点から、会員さま同士およびトレーナーとの関係性に着目して、伊藤氏は次の通り紐解いている。

「バンドと呼ばれる小規模血縁集団は人数が10人です。要するにみんな親族というようなグループの単位です。ジムに誰も他人がいないという状況をつくり出すには最適の人数です」

毎週、決まった人としか顔を合わせないことが、緊急事態宣言下でも会員さまが安心して足を運び続けてくれる要因でもある。

限られた面積のなかで可能な、優先順位の高いサービスを提供

アライブの店舗は2店舗とも50坪ほどのスペースで運営している。

「アライブにはカーディオマシンを一切置いていません。健康維持に必要なものの優先順位を考えると、有酸素運動については屋外でのランニングやウォーキングでも代替できることから、設置はストレングスマシンに絞っています」

同氏が定義する「QOL(Quality ofLife /生活の質)を高めるための優先順位」は以下だ。

  1. 柔軟性
  2. 筋力(筋量)
  3. 持久力(心肺機能)

まず、身体に柔軟性が欠けてくると、日々の生活のなかで肩や腰、膝などに痛みを抱えた状態になりがちである。それは、人々が最も避けたい運動器の不調である。まずはこのペインを解決することが最優先であることを背景に、スモールグループエクササイズの最初に行う。

次に大事だと考えるのが筋力だ。アライブではストレングスマシンを用いて、12Repsをギリギリ挙げられる重量で行う。

「とにかくオールアウトすることが大事です。余力を残してしまっては、何年経っても成長しません」

ウエイトトレーニングには漸進性の原則、過負荷の原則があるため、ただいつも通りのメニューをこなすだけでは意味が薄れてしまう。

フィットネスジムに通っている人の多くは負荷が足りていないため、ひとりで追い込み切れないところをスモールグループでカバーしている。

追い込んだ後に必要になるのが身体のケアになるため、これを最後にもってくる。以上を週2回で取り組むことが、健康の習慣化への近道だ。

会員さまの3割が利用している3つのオプションメニュー

アライブではオプションとして、加圧トレーニング、機能改善トレーニング、ペアストレッチを用意している。

加圧トレーニングの一番の目的は成長ホルモンの分泌である。伊藤氏も「みんなやるべき」と訴えるほどだ。冷え性の解消をはじめ、そのほか疾患の改善も大いに期待できるという。

機能改善トレーニングは、会員さまの個々の身体によりカスタマイズしたトレーニングプログラムで、最優先である身体の痛みおよび不定愁訴の改善にフォーカスを当てる。

ペアストレッチは、筋力トレーニングで追い込んだ身体のケアとして人気だ。

それぞれのオプションは1回あたり25分で、金額は2,500円。回数券5回分を本来の4回分の料金で、しかも使用期限を設けずに提供することで、会員さま全体の35%がオプションを利用している。

健康へのリテラシーを高めるべく月末は無償のセミナーを開催

アライブの場合、1週間単位でスクールを実施する関係で、28日には毎月完結することになる。そのため、月末の2日~3日間に関しては、会員さまに向けてセミナーを無償で開催している。

1コマあたり定員25名に対し約1時間のセミナーを、それを1日4コマ開催することが多い。扱うテーマは様々であるが、運動面についてはもちろん、健康習慣化に必要となる栄養面のセミナーも多い。これらは会員さまの習慣継続に貢献する。

「例えば、車に詳しい人はカスタマイズのような主体的な行動を取ります。健康習慣も同様に、知れば知るほど会員さまは自ら健康になろうと行動してくださります」

スモールグループエクササイズは目的の設定が最重要

伊藤氏はサッカーを自身が行っているバックグラウンドから、フィットネスジムの業態を分類し、それぞれをサッカーのプレーに当てはめて考えている。

図1からわかるように、スタジオレッスンはセットプレーで、1人対多数の決められたシチュエーションという点で共通する。パーソナルトレーニングは1対1のPKと似ている性質を持つことは誰も疑わないであろう。

スモールグループエクササイズは、上記のハイブリッド的なものである。セットされ、1人対多数の状況だが主導権を握れるというものだ。

ここで最も大切になるのが、ただスタジオレッスンを少人数で行えばよいというものではないとしっかり認識することだ。お客さまの抱える身体の悩みに対して、トレーナーが主導権を握りつつ、コミュニケーションを取り続けることでパーソナルトレーニングのようにきめ細かなフォローをしていくことを目的にしなければ、両者のいい要素を取り込むことができない。

図1 フィットネスクラブのエリア・局面特性

総合型フィットネスジムこそスモールグループエクササイズを

今後の展望について伊藤氏に尋ねると「もちろん、現在は定員付近まで会員さまが在籍されている状況ですので、コロナ後は出店を増やしていきいとは思っています」とのことだ。

アライブが出店する基準はまず、人が育つこと。自社独自で開発したオンライン教材は現場での業務から機能解剖学といった専門分野まで幅広くカバーしており、人材育成に一役買っている。

一方で、同氏が最も課題に感じていることは、フィットネス業界全体の動向である。特に総合型クラブはコロナの影響で大きなダメージを受けている。アライブで得たスモールグループエクササイズ運営のノウハウをベースに、2,000人規模の会員数のクラブに導入してもらい、成功事例を作っていくことが業界の再活性化に寄与すると考えている。

総合型クラブは、図1ではディフェンスに当たると表記しているが、工夫次第ではオフェンスに転じることができる。例えば、週1回はスモールグループエクササイズ、そのほかはセルフ利用という形でジムを運営することが、会員さまのリテンションと満足度を高めるのではないかと同氏は提言している。戦術は、流れとともに変えていく必要があることは、サッカーもクラブ運営でも同じである。