地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンターおよび株式会社ルネサンスが、がんの医療内容をよく理解し、がん患者のニーズに応じ運動機能を高めることで日常生活のQOL(生活の質)向上に資する指導者を広く社会に輩出するため、運動指導者を対象とした「がん専門運動指導士」を養成し、併せて資格認定事業を行う。
本資格は、がんの病態や治療に関する基礎知識に加えて、患者の苦痛や悩みをよく理解したうえで、がん患者のQOL向上に必要な運動の知識・技術を習得するもので、大阪国際がんセンターが監修したカリキュラムに基づきルネサンスが養成と認定を担い、本年6月27日から事業を開始する。
1.背景・目的
がんの治療成績の向上はめざましく、多くの患者ががんを克服しサバイバーとして活躍している。また、がんを治すことが難しい場合でも治療を受けながら長期に延命できるようになり、社会活動をしている人も多く見られる。このような状況のなかで、がんの医療には病気を治すことだけではなく、QOLの高い元の生活に戻るためのサポートが求められるようになっている。
元気に日常生活を送るためには食べることと身体を動かすことが欠かせない。そのために大阪国際がんセンターでは、口腔ケアから栄養指導、そしてリハビリテーションに力を入れて患者のQOL向上を図ってきた。しかし、がんのリハビリは入院中の患者への指導が中心で、退院後は自身で行っていただいており、患者本人が自身で適切に身体を動かすことには限界があった。
このような背景から、2019年6月にルネサンスは、大阪国際がんセンターの患者交流棟内に、がん患者に特化した『運動支援センター』を開設、大阪国際がんセンターと連携し、運動を通じてがん患者の身体に起こる不調や痛みの改善をはじめ、体力回復、機能回復などの支援を行ってきた。そのなかで運動支援に携わる担当者は、がんの治療過程やがんに伴う患者の苦痛を和らげたり悩みを解決に導く知識を持つ必要性を強く感じるようになった。
そこで、がんについての知識を十分に持ち、それぞれのがん患者のニーズに合わせた適切な運動支援ができる人材を教育し、基準に達した受講者を「大阪国際がんセンター認定がん専門運動指導士」として資格認定することとした。
今後は、この資格を取得した人材を全国に広く輩出することにより、がん患者が退院後も身近な場所で、運動を通じたQOLの維持・向上に取り組める環境をつくり、より豊かな人生を送ることができる社会の実現を目指していく。
2.「大阪国際がんセンター認定がん専門運動指導士」について
がん患者の運動指導に必要な知識と技術を学ぶ養成講座は、大阪国際がんセンターの医療スタッフによるがんの病態・診療に関する講義とがん患者のQOLを維持・向上させるための運動指導に関する専門的な知識と技術を学ぶカリキュラムで構成されている。養成講座受講後に実施される認定試験で合格基準を満たし、申請登録をすると資格が付与される。
3.養成講座カリキュラムについて
専門知識パート
- がんの基礎知識
がんの特徴と病態/ がんの診断と治療など - がん患者の状況
悩みとニーズ/ 治療や支援の体制など - がんリハビリテーション
対象となる障害/ リハビリテーションの事例など
運動指導パート
- カウンセリング
実施方法/サバイバーの心の理解/ロールプレイなど - アセスメント
評価の種類/ 各評価の実施方法/ 評価の実際など - プログラミング
プログラミング理論/ エクササイズ実践など - 運動指導
指導方法論/ ケーススタディなど
※2021年4月時点の予定であり、状況によっては変更する場合がある。
「がん専門運動指導士」ホームページ
<参考>
大阪国際がんセンターについて
特定機能病院の認定を受け、都道府県がん診療連携拠点病院として大阪府がん医療の統括とがん医療の向上に努めている。
「西日本最多のがん患者を診療している病院、臨床に直結する研究を行っている研究所、大阪のがん行政を支える疫学データを研究しているがん対策センターの3部門から構成され、「患者の視点に立脚した高度ながん医療の提供と開発」を実践している。
ルネサンスについて
「生きがい創造企業としてお客様に健康で快適なライフスタイルを提案する」という企業理念のもと、全国でスポーツクラブや介護リハビリ施設など計170か所以上の施設を運営している。また、施設内でのサービスだけでなく、企業や健康保険組合の健康づくり支援や全国の自治体の介護予防事業を受託するなど、健康分野におけるサービスを多岐にわたって展開している。
ルネサンス運動支援センターについて
2019年6月に開設したがん患者の治療前・中・後におけるQOL維持・向上を支援する運動施設。大阪国際がんセンターリハビリテーション科から指導を受けた、がんに関する知識を有した専門の運動指導員による運動指導を受けることができる。
これまでにがん患者60名以上の個別運動指導、500名以上の運動相談を実施している。