新型コロナ禍(以下、コロナ禍)において、世界中のジムが「non-essential business」として営業停止を余儀なくされた。突然の閉鎖に採算が取れず、経営破綻してしまった運営企業も数多い。特に、米ゴールドジムの運営企業であるGGIホールディングスによる破産申請は、記憶に新しいだろう。
そこで本記事では、経営破綻を防ぐために事業者が行うべきことや、その事例について解説する。
ジムの経営破綻とはどういう状況か
まず、ジムに限らず「経営破綻」という言葉の定義から整理してみる。
帝国データバンクによると、経営破綻(倒産)の定義は、「企業経営が行き詰まり、弁済しなければならない債務が弁済できなくなった状態」を指す(補足すると、この状態が6ヶ月以内に2回発生すると、金融機関から取引を停止され、事実上の経営破綻となる)。
一般的に、事業をスタート/スケールする場合、銀行などの金融機関から資金を借り入れる必要がある。そして、その資金を元手にサービスを設計し売上をつくっていき、諸々のコストを引いた利益から、規模にもよるが大体10年近くかけて返済していく。
ジムでいえば、まず開業費用を金融機関から借り入れ、会費や付帯収入での売上から、家賃や人件費、水道光熱費、広告費などのランニングコストを差し引いたものから返済するイメージだろうか。
そして、この返済が追いつかなくなった状態が6ヶ月以内に2回発生してしまうと、経営破綻となる。
コロナ禍での営業停止により、家賃はかかり続けるにも関わらず売上がつくれず、営業停止が明けたあとも「クラスター発生のリスクが高い」として新規入会者は減り休会者/退会者は増える一方だ。
そして、2020年5月、ついに米ゴールドジムの運営企業であるGGIホールディングスまでもが経営破綻してしまった。
米ゴールドジムの経営破綻を解説
ここでは、米ゴールドジムの経営破綻について解説する。
まず前提として、アメリカの破産法に基づいて「破産」を宣言するということは、必ずしも事業の「終了」を意味するわけではない。
実際に、アメリカの破産法のもとでは、いくつかの異なるタイプの破産が存在し、「第11条」は、アメリカの大企業が業務、債務、資産を再編成しながら活動を続けるために最もよく使用する、いわば戦略のひとつだ。
例えばジムチェーンの場合、破産を宣言すると、多くの場合、賃貸リースから一度解放され、高額の賃料について再交渉できるため、費用を大幅に削減できることになる。
つまり、破産を宣言した企業は、長期的にはより強力な立場で事業を継続し、再出発できる可能性があり、必ずしもその会社の終焉を意味するわけではないということだ。
IHRSAの発表によると、アメリカのジムの約17%がコロナの影響で経営が立ち行かなくなったため、大手を含む多くのジム経営者が破産法の第11条を申請。米ゴールドジムも同様の申請をしており、企業を倒産させる代わりに債務を再編成することを選択したというわけだ。
ジムの経営破綻を防ぐためには
それでは、ジムの経営破綻を防ぐためにはどうすればよいのだろうか。 単純に考えれば、売上をアップしコストをカットできればその分利益は多くなるため、返済も滞ることなく運営を進めることができる。
売り上げを上げる
売り上げを上げるために考えられることは、大きく分けて2つ。単価の向上か集客の強化だ。もちろん両者を追い求めるのがベストだが、まずは一方に集中してもよいのではないだろうか。いずれを選ぶにしても、既存事業の見直しや新規事業の開拓が必須になってくる。
手を出しやすいのは、既存事業の見直しだろう。特にコロナ禍で顕著だが、今多くのクラブ(とりわけ総合型)が月会費の値上げを行っている。しかし、ただ値上げするのではなく、いくつか展開していたサービスをパッケージ化したうえで単価を向上させる取組が必要になろう。
コストをカットする
また、ジムの経営破綻で欠かせないのは、コストカットだ。これには、店舗自体を閉鎖するマクロな考え方(複数展開している場合)と、人件費や広告費などの不要な経費を削減するミクロな考え方がある。もちろん、可能であればミクロなコストカットで経営を維持するのが理想だが、コロナ禍により人々の動線から生活習慣まですべてが変わったため、ほとんどのクラブがマクロなコストカット(店舗の閉鎖・撤退)を決断せざるを得なくなっている。
悲観的に考えてしまうのも無理はないが、採算の取れない店舗を継続して経営するよりも、なるべく早い段階で撤退し、コロナ禍でも売上の落ちていない店舗への人員補充であったり、ニューノーマルに適した新たなクラブやサービスの展開にコストを割くほうがよっぽど重要であろう。
経営破綻を防ぐために閉鎖・撤退したジム一覧
ここでは、経営破綻を防ぐために閉鎖・撤退した/するジムを企業別に紹介する。
ティップネス
- ティップ.クロス TOKYO新宿
- ティップネス梅田
- ティップネス日本橋スタイル
- libery日本橋高島屋S.C.
コナミスポーツクラブク
- コナミスポーツクラブ 大谷地
- コナミスポーツクラブ 高崎
- コナミスポーツクラブ 西葛西
- コナミスポーツクラブ 東松原
- コナミスポーツクラブ 新潟
- コナミスポーツクラブ 一宮
- コナミスポーツクラブ 草津
- コナミスポーツクラブ 今里
- コナミスポーツクラブ 和泉府中
- コナミスポーツクラブ 香里園
- エグザス 西九条
- コナミスポーツクラブ 姫路中央
- コナミスポーツクラブ 松山
- コナミスポーツクラブ 福岡マリナタウン
- コナミスポーツクラブ 筑紫野
- コナミスポーツクラブ 大分明野
- コナミスポーツクラブ 白石
- コナミスポーツクラブ ユーカリが丘
- コナミスポーツクラブ 立川
- コナミスポーツクラブ 青葉台
- コナミスポーツクラブ 勝川
- コナミスポーツクラブ 古川橋
- コナミスポーツクラブ 江坂
- コナミスポーツクラブ 梅田
- コナミスポーツクラブ 奈良
ルネサンス
- スポーツクラブルネサンス 尼崎
- スポーツクラブルネサンス 練馬高野台
まとめ
新型コロナ禍により、ほとんどのフィットネス企業/クラブが深刻なダメージを受けている。なかには、経営を維持するために複数の店舗を閉鎖した企業もある。 これまでは、コストカットといえば、広告費や人件費などを小さく削っていくことが求められたが、人々の生活が一変している今、より大幅な事業転換が必要になってくるであろう。