株式会社Sportip(以下、Sportip)は筑波大学発のベンチャー企業で2018年に設立。同社が提供するのはAI動作解析サービスのSportip Proだ。すでにパーソナルジム、24時間ジム、そして総合型ジムで利用され、運動指導の現場のサポート役を担っている。そのなか、さらなる新機能を追加するアップデートを実施。より多くの解析が利用できるようになり、その結果に応じてクライアントに最適な運動メニューの提供まで行える。そして、今後もアップデートの予定を控えている同サービスの活用事例について、同社の東裕介氏に話を訊いた。

東 裕介氏
株式会社Sportip 営業戦略室

Sportip Pro に追加された新しい3つの機能とは

Sportip Proはスマートフォンやタブレット端末に付属しているカメラで動きを撮影するだけで、様々な解析を可能にするAIを活用した最新のテクノロジーだ。解析はなんと233種類にも及ぶ。そして、一番の強みはその動作解析の精度の高さ。体重計に乗って体重を計るくらいの労力で、例えば可動域や重心位置などを解析できる点が人気を博している。

そのSportipが今回、新機能のリリースを発表した。まず1つ目が姿勢解析機能。従来の機能に加えて、未来姿勢予測という機能を追加した。読んで字のごとく、その人の現在の姿勢を映像で解析するだけで、将来的にどのような姿勢になっているかを推定し、3Dのアバターで結果を表示することができる。これによって期待されるのが危機感の創出だ。例えば、自分の将来の姿とされるアバターの腰が曲がってしまっていたら、「このままではまずい」と気づきやすい。運動の継続や姿勢改善によって効果が現れれば、そのアバターの姿勢も良くなっていく。ゲーム感覚で取り組める、健康意識醸成のアプローチと言えよう。

次がトレーニング解析機能。自重トレーニング、フリーウェイトトレーニング、マシントレーニングに対応できる優れもの。今回のアップデートで、バーベルのシャフト部分の動きの解析に対し、音声でフィードバックを返す機能が追加。これにより、無人店舗でも自分のフォームチェックを客観的に行うことができる。この機能があれば、ビッグ3をはじめとした約60種のさまざまなトレーニングのフォームチェックをAIに委ねられるだろう。

最後が歩行解析機能。詳細に歩行状態を分析可能で、現状の可視化はもちろん、どこを改善すべきなのかを自動で指導できる。クラブにとっては、どれも魅力的な新機能だろう。

フィットネスジムにおけるAI動作解析の活用事例

より使いやすく進化したSportipProだが、どのように利用されているのだろうか。まず、AI姿勢を入会時に利用するケース。施設の見学や体験にきたお客さまに対して姿勢解析を実施することで、これにより、新規入会率を高めることができたというデータも出ている。そもそもの来店のきっかけとしても、ホームページやSNS上に「AI解析」というワードがあるだけで、集客力が上がったと実感しているクラブもあるという。

次に、セルフ解析だ。24時間ジムでも導入されている秘密はここにある。専用のスタンドと端末を設置しておけば、会員さまはそれを自由に利用して、フォームチェックなどを行える。アプリをわざわざダウンロードしたり、ログインしたりしなくとも、QRコードから解析した結果を自分のスマートフォンで見られる。まさに、カスタマーエフォートレスな設計だ。

また、AI解析を活用する新プランを開設したパーソナルジムの事例では、通常よりも上乗せした価格でプランを提供しても、引き合いが強いそうだ。「私たちのサービスはあらゆる形態のフィットネスクラブでご利用いただき、収益性の向上やコスト削減に寄与できます。さらにはプロスポーツチームでも活用いただいており、所属選手のパフォーマンス向上にも成果が出てきています」と東氏は話す。ジムの利用者としても、「何のトレーニングをしたらいいのかわからない」と悩む初心者層から、「もっと効かせるトレーニングを行いたい」と試行錯誤する中上級者まで幅広くサポートが可能だ。

今後のアップデートと参入領域の拡大

Sportipが掲げる大きな目標は「健康寿命の延伸」だ。それを実現するためのテクノロジーとして誕生した。まずは自分を客観的に知ることからスタートし、きっかけを生み出す。自分の姿勢や動作がスコア(点数)で表示され、それを日々の取り組みで改善していきながら、ほかのユーザーとランキング形式で競うこともできるので、続けやすい。

また、直近では数多くの機能のなかからより優先度の高い機能をリコメンドする機能の追加を検討している。Sportipは今後、介護やリハビリの領域でも同サービスの展開を目指している。ロコモティブシンドロームやフレイルといった、運動機能の低下によって引き起こされる健康課題を解決してくれるだろう。