長年の現場での経験と、ビジネスへの鋭い洞察から、フィットネス業界に対して本質的な切り口で示 唆を与える小宮克巳氏による連載。第2回は、ビジネスモデルキャンバスを用いてサブスクリプション型ビジネスの本質について説く。自身のビジネスと照らし合わせながら読み進めていただきたい。

フィットネスクラブはサブスクか?

ワードとしての新規性は薄らいだものの、ビジネスモデルとしては大きな潮流となった「サブスクリプション」。施設の使用と各種プログラムへの参加権利としての月単位定額料金システムを採用しているフィットネス業界がサブスクリプションか?否か?を考えてみましょう。

従来型のビジネスモデルが顧客に商品を「所有」させることを目的としていたのに対して、サブスクリプションは顧客が求める「経験」を実現させることを最大の目的としています。T・ツォ、G・ワイザード著『サブスクリプション~「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル』(ダイヤモンド社刊)では、サブスクリプションの最大の特徴を「常に変化する顧客のニーズに対応するためにアップグレードやサービスの追加で顧客単価を高め、顧客の利用状況などによっては解約率を下げるためにダウングレードを提案するビジネスモデル」と解説しています。この一文は我々フィットネス業界にとって示唆に富んでいます。要は、顧客の①ニーズの変化②利用状況により、最適なサービスを提案し顧客から戴く生涯利益(ライフタイムバリュー/LTV)を最大化させることが特徴といえます。

これまで業界数社に所属し、またコンサルタントやセミナー講師として様々な企業と接点を持たせていただきましたが、サブスクリプションの最大の特徴を実践している企業、クラブにお目にかかったことはありませんでした。いやいや、当社は客単価の最大化も解約率(業界用語では退会率?)低減も常に実践している…との声が聞こえてきそうですが、それらは「顧客」一人ひとりを把握されての活動でしょうか?

コロナ禍を迎え、各社在籍者数の減少を補うために各種付帯サービスの販売を強化し、客単価の向上を図っています。これ自体は否定するものではありませんが、変化する顧客のニーズに対応した対策とは言い難い。例えば、入会時に数ヶ月間無料でレンタルやドリンクサービスを付与し、顧客からの解約申し出がない場合は有料に移行する販売促進策を進めている企業が存在しま