2020年2月から続くコロナ禍も、日本では2021年秋ごろから収束に向かってきているが、安倍元首相による軽はずみな発言に端を発した風評被害も加わり、フィットネス業界の事業者がこれまでに負った経営的なダメージは簡単には払拭できないでいる。しかし、個々の関係者の創意工夫と努力に加えて、業界一丸となっての「FIAフィットネス復活!キャンペーン」などの取り組みによって、再興を実現したい。

以下、2021年のフィットネス業界を振り返り、まとめたうえで、2021年以降に同業界の事業者に求められる経営・運営上の視点を示すこととする。

2019年にフィットネス業界の市場規模は、およそ5,000億円となった。ところが、2020年初頭、コロナ禍が日本のフィットネス業界を襲うことになる。

安倍首相(当時)の「スポーツジムはクラスター源」「スポーツジムは不要不急の施設」といった科学的根拠のないイメージ的な発言に端を発し、各都道府県の首長やマスメディアなど多くの関係者がこれに同調するかのようにフィットネスクラブを感染リスクの高い場所と特定したことによって、風評被害を受けることになり、さらに半ば強制的な「自粛要請」によって多くのクラブが休業に追い込まれ、経営上、大きなダメージを被った。

結果、2020年の市場規模は、前年対比およそ35%減の3,196億円、会員数は、同およそ23%減の425万人(*休会者を含む)と4年前の水準に戻ってしまった。客単価も前年対比で15%ほど低下、さらに利用者数も同およそ36%減と、惨憺たるものとなった。

倒産する企業や閉鎖する施設もあったが、当然のことながら、政府や自治体は十分な補償などしない。事業者たちは、ほぼ自力で、再生していくしかなかった。各社は、とりわけ大きく減少したフィットネス部門のマイナスを補うために、オンラインフィットネスや子ども向けスクールの導入、ジムの24時間化による若年層の集客を強化などを図るが、いまだにフィットネス部門は2019年比で2〜3割減の会員数であり、この間に生き残りのために大胆なコスト削減も実施していることから、余力もそれほどあるわけではない。とりわけ中小事業者は、危機感を抱いていることだろう。

コロナ前からエンゲージメントが醸成されていた比較的小規模の業態は、回復も早く、2023年には2019年の水準にまで会員数を回復させることができると予測