会員管理システムのデータ分析で見えてきた示唆に富む仮説とは
日本のフィットネス参加率は、ここ数十年に渡り3~4%台を推移し続けている。この状況を打破し、より一層多くの人にフィットネスを身近なものとして捉えてもらうにはどうしたらよいのだろうか? フィットネスクラブの会員管理・予約・決済システムをSaaSとして提供している株式会社 hacomono(以下、hacomono)の代表取締役を務める蓮田氏は、システムで収集してきたデータから読み取れる会員のインサイトを基に、さらなる顧客体験の向上を積み重ね、他業種と手を取り合えば、フィットネス参加率 10%も決して難しくないと断言する。
蓮田さん、まずはフィットネス参加率が3%に留まっている状況を変革する意義について伺えますか?
人生100年時代と言われて久しいですが、私は根本的に「長生き」はいいことだと考えています。例えば、両親が長生きしてくれれば、子どもの活躍を長く見られるわけですし、自分が親の立場になってもそれは同じことです。しかも、ただ長生きするだけではなく、幸せかつ健康に人生を送ることが、永遠の人類のテーマでもあると思っています。巷では「ウェルビーイング」や「ウェルネス」という言葉も浸透してきましたが、我々フィットネス業界がその領域で担える役割は非常に大きく、それに比例するように社会的意義も大きいため、既成概念を壊してでもフィットネス参加率を高める必要があると思います。
従来であれば、「体調が優れなくなったら病院へ行けばいい」という社会の風潮がありました。しかし、今となっては、健康なときからセルフケアを行う必要があると多くの人が理解しています。ここで、運動習慣は一部のフィットネス愛好家だけが取り組むものではなく、万人に必要であることを強く発信していきたいですね。いわゆる、未病のときからの運動習慣次第で、100 年の人生の彩りが変わってきますから。
フィットネス業界全体で、ますます努力をしていく必要がありますね。
おっしゃる通りです。まだまだ業界内で改善の余地は大いに残されていて、 DX化をはじめとした顧客体験の向上で、第1のハードルは越えられると考えています。
ただ、私はこのメッセージを他業種の方にこそ届けたいと思っています。フィットネスをもっと身近なものにしようとフィットネス業界単体で努力しても難しいということは、過去を振り返ればわかるはずです。逆にその慣習に囚われずに、打ち手をどんどん出していくことで、第2、第3のハードルも越えていけるのではないでしょうか。
それでは『hacomono』に蓄積されたデータから読み解くと、フィットネス業界はどのような打ち手を出すとよいのでしょうか?
まず大前提として、我々はデータ分析から得られた質の高い仮説を、『hacomono』をご導入いただいているフィットネスクラブさまに共有することで、一緒に検証しながら伴走していくパートナーでありたいと思っています。その施策を実行するのは運営事業者さまです。それが本当に目の前の会員さまが求めていることなのか、共に正解を見つけていきたいですね。
例えば、会員管理システムと入会時アンケートを紐づけると、実は「やる気がある人ほど、2~3回来たら退会している」という事実や、「スタジオレッスンに参加している人は継続率が高い」という事実が数字で浮き彫りになってきます。普段のオペレーションの効率化だけでなく、そういったデータを活用することで、ポジティブかつ未来志向でアクションできるよう我々もサポートして、顧客体験の向上につなげていきたいと思います。
最後に、蓮田さんが思い描くフィットネスクラブの未来像について伺えますか?
地域や社会に密接に溶け込むような姿が理想だと思います。これは一概に、何が正解なのかはわかりませんが、少なくとも「大人が運動をするための場所」という枠を超えていく必要があるのではないでしょうか。
例えば、hacomonoとお付き合いのあるジムに、新しく託児スペースが設けられたとき、最初はあまり活用されていなかったのですが、しばらくすると赤ちゃんを連れている女性が徐々に増えてきたそうです。
そのほか、地域の学校の部活動を、運動経験豊富なトレーナーが指導することで、全国屈指の強豪校へと成長させたという事例も出てきています。
このように、親子3世代に渡ってどの層にも寄り添えるような場所として生まれ変わることが、フィットネス参加率10%を実現するためのキーポイントだと思っています。そして、介護や宿泊業などの他業種と連携を強めながら、日本全体を健康長寿大国として押し上げていきたいと思います。