積水ハウス株式会社は、スポーツの秋に向けて、自宅で気軽に運動ができる空間の提案を目的に、全国の20~60代の男女計500人を対象に「自宅での運動に関する調査※」を実施した。
※引用元「積水ハウス住生活研究所」による「
積水ハウスの研究機関の住生活研究所では、暮らしにおける「幸せ」のさらなる追求をするため「住めば住むほど幸せ住まい」研究として様々な調査を実施している。今回の調査では、コロナ禍前後における運動習慣の変化や、自宅での運動を継続するためのポイントなどを探った。
調査では、半数以上の人がコロナ禍で以前より運動不足を感じており、自宅で運動をしたい人が多いことがわかった。その反面、自宅で運動を始めたくても始められていない人が多く、自宅で運動をしていない理由に「忙しい・時間がない」「スペースがない」などが挙げられた。
一方、コロナ禍で運動を始めた人もおり、また、現在自宅で運動している人のほとんどが新型コロナウイルス感染症収束後も長期的に自宅での運動を続けたいと考えていることがわかった。
自宅で運動したい人のうち、約4割が始めたくても始められていない
今回の調査では、半数以上の人がコロナ禍で以前より運動不足になったと感じていることがわかった。外出自粛や在宅勤務の普及により、お出かけや通勤など日常的に歩く機会が減ったことが原因であろう。とくにコロナ禍で在宅勤務をしている人は運動不足を感じている人が多く、70.3%もの人が「とてもそう感じる」または「ややそう感じる」と回答した。
そんな中、運動をしたいと思うかを聞いたところ、自宅で運動したいと考えている人が55.0%と、屋外やジムなどの施設で運動したい人よりも多かった。とくに運動不足を感じている人の割合が高かった在宅勤務者では、64.3%もの人が自宅で運動したいと回答した。
しかし、自宅で運動したい人の中で、実際に現在自宅で行っている人は約半数の49.5%で、約4割の人は「したいと思っているが、始められていない」と回答している。気軽に行えそうなイメージがある自宅での運動だが、始めるにあたりハードルがあるようだ。
自宅での運動をしていない人にとっては、何がハードルになっているのだろうか。自宅で運動したいと回答した人のうち、現在自宅で運動していない人にその理由を聞いたところ、「忙しい・時間がない」が4割近くで最多となった。また「スペースがない」が20.1%で3位となっており、まとまった時間や十分なスペースが取れないために運動の優先順位が下がってしまっている人が多いことが読み取れる。
コロナ禍で変化する運動習慣
コロナ禍では人との接触を避けるため、運動場所が変わってきた。コロナ禍前に比べて自宅で運動する人が増加し、ジムへ通ったりスタジオでのレッスンに参加したりする人が減少している。自宅での運動の中ではとくに、女性で「ヨガやストレッチ」と回答した人が10.0ポイント、「YouTube動画を参考にしながらの運動」が9.9ポイントと大幅に増加しており、リラックスや疲労回復を目的とした運動が増えたと考えられる。
一方、とくに減少幅が大きかったのは「ジムでの筋力トレーニング」で、男性が11.6ポイント、女性が13.7ポイント減となった。これに対して自宅では「器具を使用しない筋力トレーニング」は男性が3.2ポイント、女性が3.9ポイント増加、「器具を使用した筋力トレーニング」は微増という結果になった。筋トレ器具の利用を目的としてジムに通っていた人などが、コロナ禍では自宅トレーニング方法を工夫している。
また、自宅で運動したことがある人のうち半数を超える56.9%の人は、自宅で運動するために器具やウェアなどを購入していた。とくに多かったのは、ヨガマットや筋トレ器具の購入で、それぞれ2割以上の人が回答しており、男性の筋トレ増加、女性のヨガやストレッチの増加が反映された結果となった。ダンベルなどの小型の筋トレ器具やヨガマット、ウェアなど、収納可能なものを購入した人が多いようだが、大型の運動器具や設置型の筋トレ器具など空間の一部を占めるものを購入した人も一定数みられた。
自宅での運動継続のカギは、時間と場所の上手な活用
運動を行っている時間帯は、生活スタイルによって大きな差が見られた。フルタイム勤務の方は男女ともに、「帰宅後~寝るまでの自由時間」が最多で、次いで「休日の自由時間」という結果となった。一方で、専業主婦の女性は7割以上もの人が「家事の合間」、在宅勤務者では3割近くが「在宅勤務の合間」と回答しており、自宅での隙間時間を上手に活用していた。また、子どもあり世帯をみると、コロナ禍で「帰宅後~寝るまでの自由時間」や「休日の自由時間」が減少し、「朝の隙間時間」や「家事の合間」が増えていること、とくに小学生以下の子どもがいる人は「家事をしながら」運動をしている人が多かった。子育てで忙しい中でも、隙間時間や「ながら運動」で時間を上手に使っている人が多いようだ。
また、自宅での運動場所は「リビング」という人が圧倒的に多く、運動するための広いスペースが確保しやすいことがその理由と考えられる。一方で、自宅に在宅勤務スペースがある人のうち4人に1人は「在宅勤務スペース」で、自宅に家事室がある人のうち約5人に1人は「家事室(ユーティリティー)」で運動を行っていると回答した。仕事や家事を行う場所で、そのまま運動も行っている人も一定数いる。
実際に自宅での運動を継続できている人も、時間と空間を上手に活用している人が多い。「家具をどかしたり片づけたりする必要のない運動スペースを確保」している人が42.9%で最多、「家事や仕事の隙間時間に実施」が35.6%、「時間を決めて実施」が32.8%と続く結果となった。
自宅で運動する理由を聞いてみると、「費用がかからないから」が46.3%で最多、「隙間時間を活用できるから」が40.1%、「時間に縛られないから(好きなタイミングに運動ができるから)」が37.3%と続き、感染症対策以外の面でも自宅での運動を魅力に感じている人が多いことがわかった。とくに、現在自宅で運動を続けている人のうち87.6%が、コロナの状況に関わらず長期的に続けたいと回答していることからも、コロナ収束後も自宅での運動ニーズはこのまま続くと考えられる。
<積水ハウスウェブサイトの該当記事>
https://www.sekisuihouse.co.
フィットネスクラブに求められること
このように、自宅での運動は、費用もかからず、隙間の時間を活用することができるため、誰でも気軽に日常に取り入れやすい。かつて、自宅で運動をする際に課題とされていた運動方法(強度・種目・時間など)についても、SNSや動画配信サービスが発展した今、さほど問題ではなくなってきている。コロナ禍で、自宅での運動に関するニーズは高まり、様々なサービスや商品が普及された。オンラインフィットネスの利便性や日常生活への取り入れやすさなどを考慮すると、今後も、ますます自宅での運動のニーズは高まっていくことが考えられる。
では、フィットネスクラブはどのようにして会員をコロナ前に戻し、さらに増やしていくのか。当然、トレーナーの専門的な知識や、設備面などでは、フィットネスクラブは圧倒的なアドバンテージをもっている。しかし、自宅でのトレーニングで十分と感じている人が多いのであれば、単に設備に投資したり、優秀なトレーナーを雇ったりしても、集客には直結しないだろう。自宅ですら、運動できない理由について「時間がない・忙しい」と回答している人が多い現状で、フィットネスクラブに通うということは、相当ハードルが高い行動だと捉えられる。
自宅で運動を行っている未顧客層を、フィットネスクラブの会員にしていくためには、月並みだが「自宅での運動」以上の価値を創出し、アピールしていくことが重要となる。これは、フィットネス人口以外の97%に訴求していくことにもつながるが「誰でも気軽に」、「隙間時間を活用して」、「費用がかからない」ということがキーワードになるのかもしれない。