今後、健康産業は成長していくのだろうか。また成長させるために何をすることが重要になるのだろうか。そして前途有為な学生がそこで活躍できるようにするためには何が必要なのだろうか。本稿では、健康やスポーツの教育者に、健康産業の可能性とそこで学生が活躍するためにフィットネスクラブ運営企業がするべきことを訊いていく。第33回目は、流通経済大学スポーツ健康科学部スポーツ健康科学科大槻毅氏。

民間企業大学との共同研究進める

大槻氏は、健康産業やフィットネスクラブ経営者の動向をどのように捉えているのだろうか。「昔は総合型スポーツクラブが多かった印象ですが、最近は小型の施設でカテゴリに特化したものに変わってきていると感じています」

最近では、大学と民間企業が共同研究を行う流れが強まっているという。学会誌では、カーブスやライザップが大学院などと行った共同研究の成果が公表されている。大槻氏の元にも、サプリメントを取り扱う企業や健康増進の器具を販売する企業から研究の依頼が数件あり、効果検証を求められている。なかには、効果があることはすでに立証済みなので、そのメカニズムを調べてほしいというオファーもあるそうだ。

カーブスに高齢女性が通うことで大腰筋が肥大し、股関節の筋力が増大することは、筑波大学の久野氏らにより立証された。久野氏は自治体・企業等の健康づくり事業を支援するベンチャー企業を経営している。

ライザップは、同社の糖質・エネルギー制限プログラムにかけられた低血糖や内臓機能障害の懸念が杞憂であることを、東京大学との共同研究により示した。

「現在の研究のトレンドの一つに『トランスレーショナル・リサーチ(橋渡し研究)』があります。基礎研究の成果を現場に応用するための研究のことです。例えば、基礎研究では『70%最大心拍数のウォーキング30分を週5回』などの画一的な運動が、楽しさや個人の嗜好よりも優先されます。参加者に研究協力の意思があるので研究は成立しますが、得られた成果がフィットネスクラブの多様なプログラムにあてはまるかは疑問です。そのため、カーブスやライザップなどフィットネス業界をけん引する企業と協力し、より現場の状況に近い運動内容で研究を行うことには意義があるのです」

研究の場、広がる

新型コロナウイルス禍(以下、新コ禍)は学生にどのような影響をもたらしたのだろうか。

「COVID-19だけの影響ではあり