今後、健康産業は成長していくのだろうか。また、成長するために何が重要になるのだろうか。そして、前途有為な学生がそこで活躍するために何が求められるだろうか。本稿では、健康やスポーツ、フィットネスの教育者に、健康産業の可能性と学生が活躍するためにフィットネスクラブ運営企業がするべきことを訊く。第38回は、国際武道大学の笠原氏にお話を訊いた。
これからの成長産業であるフィットネス業界
笠原氏は、アスリートの競技力の向上やコンディショニングを専門分野として研究をする傍ら、自身もトレーナーとしてスポーツ現場に関わり続けている。コロナ以降、徐々に回復の兆しを見せるフィットネス業界について「健康産業であるフィットネス業界は、経済産業省によって成長産業として位置づけられています。コロナ禍で大きな打撃を受けましたが、これからますます成長していくことが考えられます」と説明する。
コロナ禍でフィットネスのニーズがさらに高まったと言う笠原氏だが、成長産業によくある注意点として「懸念されるのは、いわゆる利益追求型の企業が増えてしまうことです。利益の獲得を優先するために、あたかも正しいと思われてしまうようなサイエンスまがいの間違ったサービスが出てきてしまっては、成長は限られてしまいます」と指摘する。
フィットネス業界に限らず、サービス業の特性として、プロモーションに優位性を持つ企業のほうが人目に触れる機会も多く、見せ方が良ければ人気が出てしまう傾向がある。笠原氏は、人々の心と身体の健康に深く関わるフィットネス業界は、そういったビジネスが乱立してはいけない業界であると警鐘を鳴らす。
利益のみを追求するのではなく、社会のために根拠のあるサービスを提供したうえで、いかに収益を生み出していくかが重要だと言う笠原氏は、「これは、日本の資本主義社会の父と呼ばれる渋沢栄一が提唱する『論語と算盤』と同じだと思います。フィットネス業界も論語(倫理)と算盤(利益)を両立させて成長していく必要があります」と念を押す。
研究機関にも変化が求められる時代
科学的あるいは根拠のある正しい運動プログラムなどのサービスを創出するため、笠原氏は大学などの研究機関にも変革が求められているとし、こう言及する。
「これまで大学の研究者は、自分の興味のある分野の研究に没頭するのが役割でした。しかし、これからはより現場が求める研究が増えてくることが望