私はフィットネス業界において、30数年にわたり店舗開発の業務に関わり、物件開拓・市場調査・地主交渉・契約実務・施設計画・施工監理・備品購入・会員システム料金設定・開業前集客などの業務に携わってきました。そして、これらにワンストップで携わったことにより、開発に関わるそれぞれの業務の因果関係やそれらの連動の重要性を図らずも知らされる状況になりました。この業務に携われたことは私にとって貴重であったし、幸運であったと振り返っています。

さて、私の空間についてのバックグラウンドですが、インテリアデザイナーでもなく、ましてや1級建築士でもありません。「門前の小僧習わぬ経を読む」の状態で、知らず知らずのうちにそれを学んだ、いや学ばざるを得なかったという状況でした。20数年前の話になりますが、素人ながら「施設アイテム別適正規模と運営動線を考慮したレイアウト図」や「機能面とデザイン性を両立させたプールタイル貼り分け図」など作成、提案をしていました。また当時は無謀にも、家具や調度品、絵画などのインテリアの選択・購入も自らのセンスで行っていました。

今考えると冷や汗ものです。この連載においては、設計・建築の専門家ではない私だからこそ、単刀直入にわかりやすい言葉で、情報をお伝えしていければと考えています。

空間プロデュースの3つのキーワード

さて、現在私はデザイン&コンサルティングの業務をしています。空間プロデュースにおいて空間の基本構想をする際、私が大切にしている3つのキーワードを紹介したいと思います。

1つ目は、クラブの売り・強みを明確にする「Differentiation:差異化」です。

マーケットの要求度が高いアイテムは何なのか? 競合店と比べ、どこに優位性を持たせるのか? 自社のノウハウを最大限に活かす施設アイテムは何か? などが挙げられます。

差異化と類似する言葉で差別化という言葉がありますが、私の考える差異化は以下のようなものです。差別化は競合他社との間で「相対的な優劣を判断する」イメージですが、差異化は「明確に違うものとして区別する」というイメージです。例えば、差異化には「競合他社には簡単に模倣できないソフトやプログラムと連動した施設アイテムの提供」などがあります。

2つ目は、変化する顧客ニーズに対応する「Flexibility:柔軟性」です。多様化するニーズに対して多目的対応空間を考慮し