株式会社コンセントでサービスデザインチームを立ち上げ、顧客視点での新規サービス事業開発や体験デザイン、またそれを生み出す組織やプロセスをつくるデザイン活動に従事する赤羽氏による新連載。第2回は、デザインスプリントにおけるデザインについて掘り下げる。

 

 

 

 

なぜデザイン?

デザインスプリントの前に、そもそも、なぜ近年「デザイン思考」などが注目されているかを整理しましょう。

それには、1999年に「Experience Economy」(図1)という本で予見されたように、現代において「体験」というものがビジネスで重要なファクターになっている、ということがあるんじゃないかと思います。良い体験をつくるためには機能や効率はもちろん、感性的にも喜ばれる工夫が必要。そのためデザイン思考による「共感」という要素が必要になっている、という話です。

デザインには正解がない

デザインには別の側面として「誰もが納得する正解がない」ということがあります。人によってそのモノやサービスに求めるものは機能でも違いますし、感性となるとより難しくなります。

論理的な唯一の正解がないなかで、デザイナーはどうするか。彼ら/彼女らは、つくりながら考えます。つくっているうちに見えてくるものもあり、つくればユーザーのリアルなフィードバックを得ることができ、つくれば早い段階で失敗も成功もわかり、結果的に時間の節約になります。

そして今日「デザイン思考」がかなり一般に普及し、前者の「共感」に比べると後者の「つくる」は、まだまだ一般化していないと思います。

しかし、これは仕方がないことかもしれません。多くのビジネスパーソンにとって自分でゼロから「つくる」ことは不慣れなことですし、自分自身で関わらないにしても、プロセスへの関わり方がわかりません。

一方で「共感」に関しては、友人の気持ちがわかる、家族の気持ちがわかる、ペットの気持ちがわかる、という体験は基本的にはすべての人にあるので、日常の体験の延長線上で、まだ想像ができます。

過去の正解の通用しない時代

話は変わって、現在はVUCAの時代などと言われていますが、先行き不透明で正解も変化する状況では、論理的思考だけでなく、創造性が重要になってきます。

世界経済フォーラムの「Future of