ピラティスブームに乗じて、ピラティススタジオや団体が増えている。ピラティスの人気が高まる喜びの一方で、危険な事故が見え隠れしている。今回は、ピラティスインストラクターが安全に指導を行っていくための協会Pilates Safety Association(以下、PSA)を設立し、付帯サービスとして、ピラティスインストラクターが加入する『ピラティス保険』をスタートしたPHI Pilates Japan代表の桑原匠司さんとマスタートレーナーの佐藤由香さんに話を訊いた。
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桑原匠司さん株式会社CODE7 代表取締役
PHI Pilates アジア局長・日本代表
EWP株式会社 代表取締役
トライリングス株式会社 取締役 -
佐藤由香さんPHI Pilates マスタートレーナー
PHI Pilates JAPAN本部スタジオにて
レッスン指導、養成コースを開催中
ピラティスレッスンによる事故は年々増加している
「1年に1回でも起きてはいけない事故が、何件も発生しています」と、桑原さんはピラティス界の現状に頭を抱える。PHIでは、お客さまとインストラクターを守りたい、フィットネスインストラクターの社会的地位を上げたい、という想いから保険の提供を始めたが、最近では今までにない報告が増えた。桑原さんや佐藤さんの元には、『ピラティス保険』加入者からのみならず、未加入者の事故に関する報告も届くという。
Case01
キャデラックで、脊柱を圧迫骨折させてしまった。
Case02
怪我をさせてしまったが、インストラクターはおろか、施設賠償保険にも入っていなかった。
なぜこのような事態が起きるのか
桑原さんはその理由について次のように語る。
「まず1つ目は、機能解剖を知らない人が、リフォーマーやキャデラックのような可動域が広く、バネの負荷をかけるエクササイズを指導するケースが増えていることです。ピラティス市場が拡がることは非常に嬉しいですが、学ぶ団体や所属するスタジオ研修の内容に『機能解剖に関するカリキュラムがあるか』は非常に重要なポイントです。次に、ライセンスを持っていないインストラクターがレッスンを担当しているケースです。Instagramを見てピラティスを始めるお客様は、SNS映えするキャデラックのニーズが高いので、マットのライセンスのみ取得しているインストラクターが社内研修を受けて、レッスンを担当するところもあると聞きます」
トレーナーやインストラクターは、必ずしも有資格者である必要はない。しかしながら、本質的なピラティスを安全に指導するために、機能解剖の知識は必須である。ブームに終わらず、本来の価値を感じて長く継続していただくためにも、団体を超えてピラティス界全体で認識を合わせる必要がありそうだ。
本質的なピラティスの提供と安心安全な環境づくり
PHIでは、機能解剖に基づき『早く効果が出せるピラティスの指導』が学べる。佐藤さんは、ほかの団体で資格を取得し、クライアントに指導していたが、パーソナル指導の知識を深めるためPHIを受講したという。「PHI Pilatesでは、すべてのエクササイズに理由があるので、理論的にレッスンが組み立てられるようになり、自信がつきました」と、佐藤さんは語る。「自信を持って教えられる」と、インストラクターの口コミで受講者が増えている。
桑原さんは、ピラティス指導と保険はセットだと語る。「プロとして、ピラティス指導をするのであれば入ったほうが絶対に良いです。活動の幅を広げようとすると、施設の行き来やスポーツの現場での指導も増えるので、お客さまを守るためにも、自身を守るためにも、一人ひとりが自覚を持つことが大切だと思います」
現在PSAでは、ピラティスに関わる方が、よりよい選択ができるよう一定の加入要件を定めている。自分が持っている資格で加入できることも、確かなピラティス指導ができることの証になる。
ピラティスは、まさに「今」が勝負で、ブームが去るのか、人々の生活に根付くかの分かれ道だ。このままでは「ピラティスは危険」といわれる未来が近いのではなかろうか。これからのフィットネス業界のため、そして日本の健康のために、ともに「安心安全」なご判断を。