業績回復に役立つデータを豊富に掲載
2023年3月29日、笹川スポーツ財団(SSF)は、『スポーツ白書2023』を刊行した。「スポーツ政策」、「スポーツ財源」、「子どものスポーツ」などのほか、民間フィットネスクラブの動向についても「スポーツ産業の振興」としてまとめられている。コロナからの業績回復へのヒントになりそうだ。
国内外の先進事例、盛り込む
『スポーツ白書』は、3年毎に発刊されている。1996年の初刊以降、国内のスポーツの現状を明らかにし、約 70名の識者・学術関係者が国内外の最新データに基づき分析・執筆している。これまで、行政のスポーツ推進関係者、スポーツ団体関係者、研究者などに基礎資料として広く活用されてきた。
前号(『スポーツ白書2020』)では、社会におけるスポーツの役割の変化に対応するため、健康寿命の延伸や国民医療の縮減などといった社会課題の解決につながるテーマが追加され、「スポーツ界に求められるインティグリティ」などの新しい章が設定された。
最新号では、「スポーツ政策」、「スポーツ財源」、「子どものスポーツ」などが、12章にわたって記されている。スポーツ基本法(2011年)施行から約10年が経過し、2015年のスポーツ庁設置、2021年の新型コロナウイルス感染拡大の中での東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会開催、2022年4月の第3期「スポーツ基本計画」をスタートしていることから、国内外の先進事例を加え、スポーツ界の現状と未来を紐解いている。
2021 年のフィットネス市場は 4,113 億円
同書「第7章スポーツ産業の振興」の「9.民間フィットネスクラブの動向」には、フィットネスクラブ業界のコロナ下の動向が記載されている。その内容を、一部抜粋して紹介したい。
民間フィットネスクラブ市場規模
2020年の市場規模は、前年対比およそ35%減の3,196億円と大幅に減少した。2021年3月期の決算におけるフィットネス業界の上位15社のうち11社までが赤字となり、その赤字総額は600億円にも達した。
これは前年の同じ11社の売上総額の実に23%に相当する。2020年度のフィットネス事業者の倒産件数は過去10年で最多となった。2021年の市場規模は、オミクロン株(新型コロナウイルスの変異株)の影響を多少受けたものの収束とともに回復し4,113億円に達したが、2019年の規模には及ばない。
民間フィットネスクラブ施設数
2021年12月末日時点の民間フィットネスクラブの総施設数は6,757軒である。コロナ禍前までは、年間 400 ~ 500軒の新規出店があったが、 2021年はおよそ258軒と減少した。
総合型業態に入会していた20~30 代の会員を中心にジム型に流れる傾向がみられた。
会員数、利用回数
2020年の約425万人から、2021年に約433万人となり1.7%増だったが、ピーク期だった2019年比では22%減となり回復はみられていない。参加率については、2018年に4.07%、 2019年に4.4%に達し、その後の伸長が期待されたが、2020年はコロナ禍の影響を受け3.38%と大きく下げた。
2021年は微増したが、3.45%にとどまっている。特に、20 ~ 50代女性の退会が進み、とりわけ30 〜 40 代女性のフィットネスクラブ離れが目立つ。ここ数年は20 ~ 30代の男性の入会が比較的多くなってきている。利用回数は年63.8回(2020年)から 76.9回(2021年)へと大きく伸びたのは、こうしたヘビーユーザーがクラブに残ったためと考えられる。
コロナ下における新たなトレンド
以下のトレンドがみられた。これらは、今後も続くだろう。
- 住宅近接化・専門化・狭商圏化
- 初期対応の強化
- ハイブリット化、ホームフィットネスの浸透
- アウトドアスポーツイベントの広がり
- ボディメイク系イベントの広がり
- コラボレーションへの取り組み
- 未顧客マーケティング
最強のマーケターになろう
同書では、フィットネス業界外を含む様々な情報を得ることができるが、重要なのは、自社の競争力を活かして顧客の課題に応える商品・サービスをつくることだろう。
業界内のこれからについては、『日本のフィットネスクラブ業界のトレンド2022』が2023年6月23日発刊予定だ(クラブビジネスジャパン刊)。こちらも業績回復へのヒントとなるデータが溢れている。