『日本のフィットネスクラブ業界のトレンド2022 年版』発刊

フィットネス市場は2012年から継続して伸びており、2019年の市場規模はおよそ4,939億円とほぼ5,000億円にまで達し、業界史上最高値を更新したが、2020年、コロナ禍の影響を受け、市場規模はおよそ前年対比35%減となってしまった。しかし、コロナの収束とともに徐々に回復してきている。

マーケティングの見直し、急がれる

◆グラフ フィットネス市場の推移

Fitness Business編集部は、2023年6月25日、『日本のフィットネスクラブ業界のトレンド2022年版』(以下、トレンド2022年版)を発刊した。2022年のフィットネス市場規模は4,503億円(グラフ)、フィットネス参加率3.68%と公開された

コロナ禍によって、生活者・勤労者の価値観や行動様式が急速に変化したことで、フィットネスクラブ運営企業もSTPをもう一度見直し、それに対応したカテゴリーエントリーポイントごとに最適なマーケティングミックスを構築し機能させていく必要があろう。

そのために着目すべきファクトは何か?それをどう解釈し、どんな対応をすべきなのか?

その術を見つけ、各社、マーケティングとイノベーションに注力することが求められる。トレンド2022年版には、そのためのヒントとなるデータが豊富に掲載されている

コロナ禍で「成功の方程式」が崩壊 求められるポストコロナの経営

コロナ禍によって、従来型の「成功の方程式」が崩壊した。代表的な「崩壊」例をビフォー→アフターで示すと、以下の通りである。

  1. 都心の大型総合店&リアルサービス→地方・住宅街での小型店&ハイブリットサービス
  2. “混雑”が人気の証明→“三密”を避けた安全・安心の環境を用意
  3. 値下げの努力、価格訴求→値上げの工夫、オプション商品販売による単価増
  4. 委託・アルバイトを活用→社員を中心に少数精鋭化を推進、委託・アルバイトで調整
  5. 施設提供→個々人に最適化したサービスへ

フィットネス事業者には、「Change or Die」(アラン・ドイチュマン)の姿勢が求められる。その真因をたどれば、コロナ禍前からその温床はあったはずだ。そこを徹底的に明らかにし、自己内省するとともに、変革していくことが必要になろう。

とりわけ、今後、重要になるのは、自社にとって新しい戦略と戦術を明らかにして、それに取り組み、変化していくことだろう。

まず、戦略である。ザックリ言えば、戦略にはコストリーダーシップと差別化戦略がある。このうち差別化戦略を採る企業も、今は「差別化戦略を採っている」と言いながら、コストリーダーシップ戦略を採る事業者の引力に引っ張られて、かえって戦力を落としてしまい結果として利益を生み出しにくくしてしまっている。これからはLTVの実現を目指して、質を伴った真の差別化策を採らなければならない。

そこで重要になるのが、自社の使命を再確認したうえで、市場・顧客を再定義して、KBF(購買決定要因)を明らかにし、それに対応したマーケティングミックスを築くことである。

続いて、戦術である。フィットネス事業者がサブスク型のビジネスモデルを採る以上、大事にしなければならないのは、運動を核にした健康づくりの習慣化のサポートである。新規入会者に対して、それが確実に提案・提供でき、顧客の期待する成果まで導けるシステムが必要になろう。また、そうした新規入会~数ヶ月のフェーズから、さらに自身の求める顧客体験を高めていけるように、事業者には、そこからアップグレードを促すトリガー商品・サービスとそれを提案するセールスプレゼンテーション力、そしてその後の会員種別の設置や新たなコミュニティの開発などが求められる。

これらをビジネスモデルとして整え、自己強化ループが回るように機能させられないと、2023年以降の安定的な成長は望めないだろう。ぜひ、トレンド2022年版を参考に、新しい戦略と戦術を構築し、自ら変化していってほしい。