REAL WORKOUTは、2023年4月に国内100店舗出店を達成し、現在は海外への出店も進めている。今後の国内戦略としては店舗数の増加よりもサービスの質の向上に軸足を置いていく。そのなかで、身体を構成する最も大切な要素の1つである「食事」にフォーカスし、株式会社Nwithが提供する管理栄養士プラットフォームを活用した食事指導サービスを全店に導入。関わるすべての人が満たされる仕組みとなっており、フィットネス業界への浸透に時間は掛からなそうだ。

  • 株式会社WORKOUT
    代表取締役CEO
    土屋耕平氏
     

100 店舗ある既存店のクオリティをどう高めていくか

「パーソナルジム市場が成熟し、競合となるプレイヤーが増えた今、私たちは国内市場において店舗数を増やすという戦略から、今ある店舗の価値をどう高めていくかという戦略へ大きく舵を切りました」と土屋氏は現況をこう話す。

2018年にパーソナルジム事業に参入してから、土屋氏のマーケティングのノウハウを駆使しつつ、FC業態への切り替えをきっかけに出店数を増やし、パーソナルジム市場を牽引してきた。それから5年経った今、潮目が変わってきたと土屋氏は見ている。

「様々なパーソナルジムが乱立しているなかで、立地だけではなく、よりサービスの優れた店舗を設計しないと生き残れない状況になっていると感じます。100店舗のうち、優秀な店舗、普通な店舗、そして芳しくない店舗と3種類に分かれていて、どのようにボトムアップしていくのかが最重要施策となっています」

会員としても、より自分の理想とする結果に近づきやすく、満足度も高まるという観点から、土屋氏も食事指導サービスの提供によるアップセルには目を光らせていた。しかし、それを実行するには大きな壁があった。

食事指導は必要だがトレーナーがやりたがらない背景

経営陣とは立場の異なる現場のトレーナーにとって、食事指導を行うことが自身の時間を使うわりに収入に反映されづらいという点が、1つ目の理由だ。

「そもそもトレーナーは運動の専門家であり、それ以外の業務はやりたがらないですね。業務量が増えてリソースを圧迫してしまうくらいであれば、たとえ店舗の売り上げにつながるとしても、避けてしまう傾向にあります」(土屋氏)。どのようにして彼ら彼女らにモチベーションを与えるか以前に、人的リソースについては上限があるため、なかなか解決が難しかった。

2つ目の理由は、トレーナーによって知識の偏りがあること。特に、栄養学に苦手意識がある場合は、進んで食事指導をやりたがらないだろう。また、たとえ知識や指導に自信があったとしても、注意が必要なケースもある。

「トレーナーは、トレーニー上がりの人材がたくさんいます。特に怖いのが、自身のダイエット成功体験が万人に当てはまると考えてしまい、極端な食事制限を勧めてしまうようなケースです。

しっかりとエビデンスベースで個々人に合わせて指導できる人が果たしてどれくらいいるのか、それを自社だけで完結できるのかと考えたときに、かなり骨が折れるということは容易に想像できました」と土屋氏は言う。

そのなか、食事指導の部分をまるっと引き受け、店舗のアップセルにも貢献するNwithが彗星の如く現れた。

完全リモートで管理栄養士の活躍の場を提供するNwithとは

Nwith アプリのUI 画面

Nwithは、国家資格である管理栄養士を保有する人材を800人以上抱える食事指導のプラットフォーム。元々は個人に向けて生活習慣の改善サポートという目的でサービス展開をしてきたが、フィットネスジムが食事指導をサービスとして提供したくてもハードルが高いという課題に寄り添い、同社のノウハウを提供し始めたのが始まりである。

Nwithの代表取締役を務める福澤龍人氏は、本サービスの立ち上げの背景をこう語る。

「せっかく国家資格である管理栄養士を取得しても、活躍の場所が非常に少ないうえに、待遇も決していいとは言えないという点に課題を感じていました。いわば、管理栄養士が過小評価されているという状態です。さらに、管理栄養士の資格を保有しながら、子育てのために現場に出られないという優秀な人材も多く、宝の持ち腐れのような状態にもなっているのです。このような状況を打破するべく、オンラインで栄養指導ができるプラットフォームを立ち上げました」

土屋氏も、このストーリーに強く共感を覚え、即座に全店舗への導入に踏み切った。それに加え、先述の課題をすべて解決してくれるうえに、リスクなく会費外の収入を得られるので、むしろ導入しない理由がないというほうが正解だろう。

運動のプロと栄養のプロが分業してサービスを届けられる

Nwtihがあることで、トレーナーはトレーニング指導に集中できる。食事指導を求める人がいれば、1ヶ月33,000円(税込)の食事指導サービスを案内すれば、あとはオンライン上で管理栄養士が月1の面談や毎日のフィードバックなどを行ってくれる。

さらに、食事指導のレポートはトレーナーにも共有されるので、それをもとにトレーニングメニューを組み立てるなど連携すれば、より効率よく結果が出やすい。また、そのレポートはトレーナーとしても、栄養学の知識のインプットに寄与しているという。

Nwithはサブスクリプションではなく1ヶ月単位での買い切りプラン。だが、REAL WORKOUTの会員で早くも2ヶ月目を申し込む人がいるほど満足度が高い。

「毎日の食事を通じて健康に対するリテラシーが高まることで、会員さまの運動の継続率にもプラスの効果があることがサービス提供を通じたデータ分析で判明しています。運動と食事は密接にリンクしているようです」と福澤氏は説明する。 

トレーナーは運動指導(写真左)、管理栄養士は食事指導(写真右)に専念するという合理的な分業体制を構築している

現場の意識改革とともにセールスしやすい環境を整備

食事指導サービスを利用してもらえば、継続率の向上にもつながるという示唆を得たが、それ以前に申し込みをしてもらうためには、やはり現場のトレーナーの協力が欠かせない。

「先ほど触れた、優秀な店舗の特徴は、立地がいいことに加えてトレーナーのセールス力が高いことです。全社的にセールスを行っていくことができ、多くの会員さまに食事指導サービスご利用いただくことができれば、それだけで数億円の売り上げアップにつながる可能性も秘めています。特に注力しているのは、この食事指導サービスの魅力を本気で会員さまに伝えていきたいと思えるようにトレーナーのマインドセットを変容させていくことですね」

と土屋氏は力を込めて話す。

ちなみに、トレーナーが食事指導サービスを受注すれば、インセンティブが支給される仕組みを取り入れており、経営陣もトレーナーも同じ方向を向きやすい体制づくりにも余念がない。

いかにお節介になれるかが継続率のカギ

土屋氏は、パーソナルジムの差別化と会員の継続率に最も影響を与える要素は、トレーニング指導のスキルではなく、「いかに世話を焼くことができるか」であると分析している。会員は、自分では管理しきれないことを専門家に管理してもらえることに価値を感じて足を運んでくれる面が大きいとも言い換えられる。だからこそ、限られたリソースでより手厚いサービスの提供には、外部の協力や内部の仕組みづくりが欠かせない。

「REAL WORKOUTにトレーニングをしにくればポイントが貯まり、それを使ってうちの商品やサービスを買える、というような経済圏を作っていきたいと思っています。そうすることで、継続率を高めつつ、トレーナーが目を掛ける機会を増やして信頼関係を高めていけば、会員さまも喜んでジムに来てくださるからです」

REAL WORKOUTの次なる展望は海外出店の加速

REAL WORKOUT 初の海外店舗となる、タイのバンコク支店

国内市場については拡大よりも店舗のクオリティアップに重点を置くが、一方で海外市場に商機を見つけ、早くもバンコクに出店を決めた

「国内の店舗が事業の軸ですし、Nwithなどで収益性を高めていくことが重要ですが、それを原資に次は海外で攻めの仕掛けをしていきたいです。

海外に駐在する日本人をターゲットとしたパーソナルジムはいまだかつてなく、ここがブルーオーシャンだと捉え、アジアを中心に100店舗を目指していきたいと思っています」と土屋氏は胸を躍らせる。

円安が追い風となり、為替差益も見込める海外通貨の獲得が、パーソナルトレーニングの間接的な単価アップにもつながることから、今こそグローバルな視点で事業を展開する好機なのかもしれない。

REAL WORKOUTは国内で守りを固め、海外に主戦場を移していく。