会員制健康ビジネス専門のコンサルタント、田村真二氏にフィットネスビジネス・マーケティング戦略を連載でご紹介いただいている本稿。今回は「総合クラブの課題と2つの新戦略」について。総合クラブの成長再建に向けた課題と戦略に焦点を当て、フィットネス業界の新たな展望を探る。
2024年3月期第1四半期決算発表
主要フィットネス11社の2024年3月期第1四半期(2023年4~6月)決算が発表されました(表参照)。売上高は11社合計で、前年同期比で9.3%増収となりましたが、コロナ前(2019年4~6月)と比べると8割強の水準にとどまり、回復途上と言えます。
また、カーブスHDとFast Fitness Japanの2社を除くと、利益水準も低いと言えます。特に総合クラブを事業の柱とする企業の業績回復の遅れが目立ちます。生活者の健康意識やライフスタイルの変化、新たな競合動向などが今後の成長に影響を与えるなか、これらの課題に対処し、持続的な成長を達成するための戦略と行動力が求められます。
◆表 主要フィットネス11社 2024年3月期第1四半期(2023年4月~6月累計)業績一覧(売上高順)
戦略と技術
売上高は戦略の質と、営業利益や純利益は技術の質と、それぞれの質の高さに正比例すると言えます。例えば、売上高が以前と同等あるいは低下している企業は、変化に即応した新たな挑戦がないと言えます。これに対して、chocoZAP(チョコザップ)をはじめとする売上高(と会員数)を急速に増やしている企業は、変化への適応度がより活発かつ的確であったと言えます。
この戦略の責任者は、上場会社ならば取締役、中小零細企業ならば社長や会長です。決して店長(マネジャー)や担当スタッフの責任ではありません。
一方で、営業利益や純利益については異なります。これはオペレーションの質に関連しており、幹部や中堅社員を含む集団の技術水準が左右します。
例えば、DXを活用して店舗運営をほぼ無人化し、大量の広告戦略で新規会員の獲得に成功したchocoZAPが直面する最大の課題は、会員維持と継続的な会員満足